軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

開眼 ③

分かんないなら訊くしかないんだけど、普通に考えて、そんなことする?

本当に私と話すのが目的なら、侵入に悪意は無かったということかな?

悪意なく寝静まった夜中に侵入してくる理由って何だろう?

本当に私と話がしたかっただけなら夜中に来る必要なんて無いじゃん。

そりゃあ、みんなが護衛してくれてるけど、私の周りは誰も近付けないほどガチガチに固められているわけでもないし、私は普段から毎日ウロウロと外出してるんだし。

何がどうなったら、夜中に忍び込んで会いに来るなんて話になるんだろう?

「フィオレはこの者を知っているのか?」

お父様が目線で示す先には廊下や階段と同じ石造りの小部屋が有って、鉄格子の向こう側で椅子に縛られた 白髪(はくはつ) の少女が強張った表情で座っている。

白髪は白髪だけど、加齢による 白髪(しらが) って感じじゃなくて、健康的な艶やかさがある 白髪(はくはつ) なんだよね。

眉毛に掛かる長さで切り揃えられた前髪の隙間から、ノーアのガラス瓶にヤラレたのであろうおでこが覘いている。

打撃痕の肌が赤くなっているのはコブが出来た痕かも知れないけど、傷は残らなそうな様子とガラス片による切り傷も見受けられないことにホッとする。

この子の容姿で特徴的なのは、漂白したように真っ白な髪だけでなく、血管が透けて見えるような病的なまでに白い肌と、灯明の明かりが眼底に反射して赤く光って見える瞳孔だ。

どこで手に入れたのか、夜中に見たときと同じ領主館のお仕着せによく似たメイド服を着ていて、足首にゴッツい金属製の輪っかのようなものを付けられている。

気絶している姿を見たときには、あの輪っかは無かったな。

石壁に鎖で繋がったあの輪っかは牢屋に入れられるときに付けられたもので、逃亡を防止するための拘束具なのだろう。

やっぱりこの子に見覚えは無いな。

エクラーダ人でも無いと確信する。

「・・・知りません。特徴的な容姿なので、一度でも会っていれば忘れないと思います」

「特徴的? エクラーダ人ではないのか?」

お父様の再確認に首を振る。

「・・・違うと思います。恐らくですが」

「どういうことだ?」

”白っぽく見える髪”という、 記号(アイコン) としての大きな方向性は似ているだろう。

でも、よく見てみると、似ているけど違う。

何だろう? 色目?

瞳の違いは確定的だろうけど。

「・・・確認してみて良いですか?」

「構わん」

お父様とお母様の顔を見比べれば、お母様が即答し、お父様が頷いて追認した。

鉄格子ギリギリにまで近付いて、白髪の彼女と目を合わせる。

「・・・私と話したいんだよね?」

「フィオレ様・・・、で、ございますね? やはり、2人でお話しさせていただくわけには参りませんか?」

頑なだな。

私は目の前に居るのに、私と2人きりで話すことに意味がある?

いや。私以外に知られたくない、ってことなんだろうな。

やっぱり、この子自身の秘密というわけでは無さそうだ。

だとすれば、誰かの命令で来て、秘密裏に私と接触する必要があるわけだ。

接触がバレて捕まってるわけだから、もう秘密にならないけどね。

私が話した内容を秘密にするなら成立するかもだけど、それは私の信用が失墜することを意味する。

申し訳ないけど、初対面の人のために私が築いてきた信用を投げ棄てる謂われが無い。

「・・・あんまり意味は無いと思うよ? 私、家族に隠し事はしないし」

「そ、そうでございますか・・・」

おかしな誤解や変な期待を与えないように、2人で話しても家族に話すと遠回しに伝える。

ちゃんと真意は伝わったようで、彼女は肩を落とす。

私が彼女と話したかったのは、秘密とかそんなもののためじゃない。

見覚えが有るもの(・・・・・・・・) の正体を確かめたかったからだ。

「・・・そんなことより、その髪と目。肌もだね。生まれつきかな?」

「はい」

全く関係のないことだからか、訊かれ慣れているからか、彼女は素直に頷いて答えた。

生まれつきねぇ・・・。

それって、もう、アレしか無いでしょ。

「・・・ふーん。アルビノかな?」

「ある? 何でしょうか?」

「・・・ああ。ナンデモナイヨー」

口を突いて出た独り言に反応されて自分の失敗に気付く。

聞き取れなかったんじゃなく知らない単語だったのだろうね。

危ない危ない。

この子以外は、この場には私の中身を知っている人しか居ないから油断してた。

ロクでもない結果しか呼び寄せないだろう話からは、話題を逸らしておかないと。

何て誤魔化すかな。

パッと思い付かないから、分かりきったことでも再確認しておくか。

「・・・あなた、エクラーダ人じゃないよね?」

「はい」

私の髪とは本質が違う純白の髪が揺れる。

彼女は迷わず頷いた。

用件を他の人に聞かれたくないだけで、私に隠し事をする意図は無いんだね。