作品タイトル不明
精霊姫 ㉚
ハッハッハ! どうだ!
目の前でシカ肉の串焼きとスープの調理が始まろうとしているのに、ご飯を人質に取られれば抵抗できまい!
ご飯を食べたくば無駄な抵抗を止めろ!
脅しじゃないぞ!?
「・・・ええー、じゃない!! 分かったら返事!!」
「「「「「は、はいっ!!」」」」」
目に映る範囲の全員が声を揃えたのを確認してヨシと頷く。
このままの勢いで押し込んじゃえ。
「・・・もうすぐ第2陣の人たちも到着し始めるだろうけど徹底するように!! 精霊姫なんて呼んでるのを見つけたら、働いたときのお給金も半分に減らすからね!!」
「あの! 姫―――、フィオレ様! お給金がいただける仕事を与えていただけるのですか!?」
ナイス質問!
踏み留まって言い直したのもポイント高いよ!
お給金―――、労働対価の話か。
前もってお父様に再確認しておいて良かった。
確約を貰っているから自信を持って強気に答えられる。
質問してきた女性に顔を向けてハッキリと言い切る。
「・・・当たり前でしょ! 町へ入る前にも言ったけど、しっかり働いて、しっかり食べて、しっかり寝て、安定した生活を手に入れるんだよ! 働いた分、しっかりとお給金も出すし、体が悪くたって働ける仕事がたくさんあるからね! 強くなれる仕事も有るし、騎士になれる道もある! 男も女も老人も子供も関係ない! あなたたちが頑張る限り、ここには居場所が有るんだよ!」
「女性でも働けるのですか!?」
一人の女性からの質問に答えれば、別の女性からも質問が飛んでくる。
「・・・私も女性だけど働いてるよ! あなたたちも含めて、たくさんの人が増えるんだよ! 食べ物も、衣服も、住居も、色んなものが大量に必要になるからね! どんどん作らなきゃいけないし、女性でも、子供でも、お年寄りでも働ける仕事はたくさん有るよ!」
「女の私でも騎士を目指せますか!?」
おおっ! 騎士志望者が居るじゃん!
「・・・目の前に実例がいるでしょ!」
私の後ろに控えているエターナさんをビシッと指せば、 固尻(かたしり) 系女性騎士はキラキラと謎のエフェクトを身に纏いながらドヤ顔で小鼻を膨らませている。
何だそれ! 私の目の錯覚か!?
ビックリしたよ!
何の魔法か分からないけど、エターナさんも逃れてくる前から騎士だったんだから、魔法を使えることに不思議は無いな。
そう言えば、騎士は身体強化魔法が得意だと思い込んでいて、どんな魔法を使えるか訊いてなかった。
独特な特徴が有るという剣術も私はまだ見せて貰っていないし、見せて貰わなきゃ。
キラキラ固尻系女性騎士に気を取られていた私を、立ち上がった年配男性が現実に引き戻す。
「儂は農家の仕事にしか就いたことが無いんですが、儂でも働けるんでしょうか!」
「・・・農地もどんどん広げるから、農業をしたい人もたくさん必要になるよ! でもね! あなたたちの後にもたくさんの人たちが来るから、何よりも先ず、今はもっと住居を建てなきゃいけない! どんどん建てれば、あなたたちも良い家に住めるようになるよ!」
難民たちがドッと沸く。
農地も家も生活設計の基礎だ。
ウォーレス領内の農地は耕作権を与えて収穫量で徴税するシステムだから、小作人になるのかな。
税率は他領よりも安いらしいけど、農地が広がれば広がるほど小作人も領主も潤う。
豊かな生活は未来の可能性だ。
潤って子供たちに教育を与える余裕が生まれれば、子供たちには新たな可能性が広がる。
子供たちが優秀な若者に育てば、領地の発展も加速する。
未来に明るい希望があれば、人間、頑張れるものだ。
具体的な目標があれば前向きに生きられる。
立ち上がった男性の隣には赤ちゃんを抱いた奥さんらしい女性がいる。
「ほ、本当ですか!?」
「・・・しっかり働けばね! このウォーレス領と隣のピーシス領は、これからどんどん発展するよ! どんどん豊かになって、リテルダニア王国は世界一の王国になる! 勇王国や神教会になんて絶対に負けない国にね! 私たちが世界一にしてみせる! あなたたちも世界一の王国の一員になるんだよ!」
ワアッ!! と大歓声が上がる。
大きな声で騒がれると足が竦むけど踏み留まる。
「俺、領軍に入りたいです!」
「・・・あなたはまだ子供でしょ! 近いうちに騎士養成施設を建てるから少しだけ待ってなさい! 待ってる間は猟師さんを手伝って鍛えておくと良いよ! 猟師さんたちには私が頼んであげるから、3の鐘までに領主館へ来なさい! 治癒魔法術師になりたい人も、養成施設を建てるから待ってなさい!」
甲高い歓声が上がったと思えば、意外と子供もいるんだね。
良いね。騎士様や治癒魔法術師の卵もゲットできそうだ。
「今すぐ領軍に入りたい人は、近いうちに騎士と兵士の募集が掛かるからね! ウォーレス領の領軍では男も女も無いよ! 選抜試験までに鍛えておきたい人も猟師さんを手伝いなさい! 集合は領主館前に3の鐘まで! 私を信じて、やってみなさい!」
「「「「「おおお―――ッ!!」」」」」
先ほどの騎士志望の女性も含めた若い男女から勢いの有る歓声が上がる。
何だ何だ? 騎士志望や兵士志望が結構多いのか?
「よおおおし! 俺はヤルぞ!」
「俺もだ! 働くぞ!」
「私も頑張るわ!」
口々にやる気表明が上がったところへ脂が焼ける良い匂いが漂い始める。
チラリと炊き出しの準備を進めているメイドさんたちを見れば、私の視線に気付いてメイドさんが頷き返してきた。
準備は出来たみたい。
こっちもそろそろ締めなきゃな。