作品タイトル不明
精霊姫 ⑨
必要な作業は「治癒」と「解毒」。
王妃様のときはテレサと二人で治癒と解毒を分担したけど、今はテレサが居ない。
私一人で両方をこなす必要が有る。
いいや。違うよね。段階で分ければ良いんだ。
解毒が先? それとも治癒が先?
男性は回復薬を飲んだばかりだ。
口から引っ張り出そうとすれば、回復薬まで吐き出してしまうかも知れない。
じゃあ、 下(しも) から?
いやいや。どこから出るか、あんまり想像したくない。
ていうか、男性経験ゼロの私では、男性のパンツの中を正確にイメージできないよね。
だったら傷口だ。
男性は体力がない状態だから、まだ傷口は塞がっていないと信じよう。
傷口から引っ張り出すなら解毒が先だ。
治癒してからでは引っ張り出す「穴」が無くなっちゃう。
男性の体内全体に魔力を広げて「悪いもの」を探す。
概念として「悪いもの」を掌握する。
んーむむむむ? 掴んだ・・・と思う。
イケるかな? どう?
グッと引っ張ってみれば、男性に重なっていた「嫌な感じ」がズルッとズレた感触が有った。
イケる!!
「・・・ちょっとだけ苦しいよ」
声を掛けるけど、男性から答えはない。
違うか? 男性の応えが私の意識の外に有るのかも。
少なくとも、男性の心臓が動いていて、命が失われていないことだけは感じ取れる。
なら、ヤルまでだ。
掌握した「嫌な感じ」を手放さないよう、慎重に引っ張る。
ズリズリと引っ張って脇腹の傷口を目指す。
「嫌な感じ」は薄っぺらくて、無理やり引っ張ると千切れてしまいそうだ。
でも、逃がさないよ。
もう少し。あと少し。
ジワジワと広がるサラシの赤黒いシミが、水分を含んでテラテラと光っている。
血ではない。
赤黒いけど透明感がある液体は細胞液かな?
冷凍肉を解凍したときに出る液体に似ていて、かなりの量だ。
王妃様のときには、一口で吐き出せる程度の量だった。
それに対して男性の傷口から滲み出している体に悪そうな色の液体は、コップ一杯を超えているように見える。
こんなものが身体中に広がっていたなんて、辛くなかったわけがない。
「ぐうっ・・・!」
「・・・あと少しだけ頑張りなさい!!」
男性の苦しそうな呻き声が耳に入って発破を掛ける。
もうちょっと。あと、ほんの少しで全部引っ張り出せる。
むむむむむむ・・・。ヨシ、出た!!
「・・・ぶはあっ!!」
ハアハアと何度も大きく息を吐いて酸素を補給し、即座にもう一度集中する。
今度は治癒だ。
膿んだ傷口が乾いて固まって、傷が塞がるイメージを早回しにする。
王妃様のときは映像を巻き戻すイメージだったけど、この男性の場合は傷口の組織が深くまで壊死して膿んでいる。
巻き戻すイメージだと治りきるイメージが出来るか怪しい気がするんだよ。
生傷が絶えなかった前世の私は傷口が膿むことも頻繁に有ったし、外傷なら治っていく光景をイメージする方が容易いからね。
新陳代謝で新たに生まれた体組織が盛り上がり、傷口を埋めて塞ぐイメージの方が合ってるように感じるんだよ。
私の胸の中でモゾモゾと魔力が蠢く。
なに? 手伝ってくれるの? じゃあ、お願いしちゃおっかな。
胸のモゾモゾと心の中で対話して、魔力の活性化を感じ取る。
男性の体内に広げた魔力を高めて強くイメージする。
「・・・早まれ・・・!!」
「―――ぐっ!」
男性の体内で私の魔力が爆発して、男性が呻く。
あれ? 痛みか苦しみかに耐えていた男性の体から、ガクッと力が抜けた?
えっ!? マジ!?