作品タイトル不明
第二次ブートキャンプ ㊵
ルナリアと猟師さんたちの関係も良好なようで良いことだ。
括っているのが前脚と後ろ脚では動きが変わるからなあ。
投げ輪が掛かるまでが不安だな。
一応、注意喚起しておくか。
「・・・みんな、横の動きが有るから噛み付かれないように注意して! 投げ輪と水鉄砲で動きが止まったら攻撃開始!」
「「「「「はっ!!」」」」」
最前列で猟師さんたちが獲物を包囲して、3人が投げ縄を回し始める。
残りの猟師さんたちが水鉄砲を構え、背負ってきた仲間を地面に横たえた新人さんたちが、猟師さんたちの外側から獲物を包囲する。
異変を察知したバンダースナッチがワナから逃れようと後退するけど、前脚を吊り上げられて2足で直立してしまっている体勢では、1歩2歩と後ろへ下がれば張力で前方に引っ張られてヨタヨタと戻される。
バンダースナッチも必死なのだから笑っては可哀想なんだけど、コミカルな踊りに見えて笑ってしまう。
まあ、面白くても容赦なく狩るんだけどね。
確認するようにルナリアが飛ばして来た問う視線に、私も頷いて返す。
キッと目を鋭くしたルナリアが掲げた槍を獲物に向けて振り下ろした。
「掛かれ!!」
「「「「「おう!!」」」」」
勇ましい応えを返すと同時に、コンマ数秒の絶妙にタイミングをずらした投げ縄が飛ぶ。
狩猟のプロだけ有って上手い。
回転しながらフワリと飛んだ3つの輪っかが、直立したバンダースナッチの首を一発で見事に捉えた。
「グギャウッ!?」
3方向から猟師さんたちがロープを引けば、投げ輪が締まってガッチリと獲物の首が固定される。
これで噛み付き攻撃は封じ込めた。
ヨシヨシ。今回は新人さんたちも緊張感を保てているみたいだね。
「・・・水鉄砲、ブッ掛けて!!」
「「「「「行けエエエエっ!!」」」」」
狙い澄ました水鉄砲のピストンが押し込まれ、プシャ―――ッ!! と、透明なタマネギ汁と赤いビネガーが、細い線となってバンダースナッチの顔に集中する
「ギャゴボボボッ!?」
目に、鼻に、口に、耳に、バッシャバッシャと刺激物を注ぎ込まれてバンダースナッチが悶絶している。
もう良いかな。
獲物の反撃を完全に封じ込めたことを見届けて、次の指示を出す。
「・・・順に攻撃!! 遠慮は捨てて、しっかり突きなさい!!」
「「「「「はいっ!!」」」」」
槍を構えた新人さんたちが包囲を狭めて突き掛かる。
今度は腰を入れて突き込んでいるけど、エターナさんが1頭目のトドメで見せた突きに較べて動きが緩慢で、一撃が弱く見えるね。
新人さんたちが手を抜いているとは思わないし、これは遠慮ではなくエターナさんと新人さんたちの技量差かな?
槍を突く技量の方なのか、身体強化魔法の方なのか、それとも両方だろうか。
37人がプスプスと攻撃し終えてもバンダースナッチはまだ生きている。
弱り切ってはいるけど、強いと言われる魔獣だけあって、すごい体力だね!
「・・・エターナさんも早く突いて来ちゃって」
「あ。はい」
槍を手にしたエターナさんが、私の傍を離れて今度は手加減が見える一撃を入れた。
私も忘れないうちに魔力の手を伸ばして獲物の頭をペシッと叩いておく。
急速育成対象のみんなが攻撃を終えたのを見届けて、ルナリアも槍で一突き。
最後にピーシーズとミセラさんたちが一撃を入れて討伐作業は終了だ。
今回のトドメはネイアさんだったか。
魔力の手の訓練で、あれだけ魔力枯渇寸前まで頑張ってヘロヘロだったのに、血を飲んだらかなり復活してるよね。
ネイアさんの復活具合を見るに、やっぱり魔獣の血にはエナジードリンク的な効果が有りそうだ。
魔獣の血だけに、モンスターエナ―――、ゲフンゲフン。
生存本能に導かれて魔獣の血を飲み始めた私は間違って居なかったわけだ。
自分が攻撃を加えた獲物の血しか効果が見られない理屈は謎だけど、攻撃された恨みとか魔獣の呪いとか、オカルト的効果で魔力的な 回路(パス) が構築されるとか、そんなヤツだろうか?
理屈は分からなくても効果が有る以上は躊躇なく利用するんだけれども。
漢方とか生薬系のお薬と同じ扱いで良いだろう。
エターナさんと一緒に満足げなルナリアが、穂先を血で濡らした槍を肩に担いで私の傍に戻ってくる。
「今度は良かったわよね!」
「・・・うん。初日でこれなら、すぐに慣れるんじゃないかな」
一度の失敗で認識の誤りを修正してくる辺り、さすがは戦闘民族というか、新人さんたちも悪くないセンスだと思うよ。