軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

特務魔法術師の弟子 ⑨

ルナリアと2人してバスタブの中に座らされて、もみくちゃにされてメイドさんたちに全身くまなく洗われ・・・いや、徹底的に洗浄された。

されるがままに洗われていただけなのに、私もルナリアも、ぐったりしている。

「・・・愛されてるねえ。ルナリア」

「えっ!? そうなの!?」

バスタブの底からサルベージされて、髪に水気を取るタオルを当てられながら呟くと、マジで!? という顔が返ってきた。

「当然じゃないですか」

「「「そうですよ! 当然です!」」」

「分かっていらっしゃいますね!」

「・・・任せて」

「ええ・・・?」

メイドさんたちとサムズアップを交わす。

腑に落ちない様子で首を傾げているのはルナリアだけだから、問題ないのだろう。

いつもこの調子で手荒く揉みくちゃにされているから、ルナリアはイジメだと思って、負けて堪るかと徹底抗戦を試みては、メイドさんハリケーンに呑み込まれていたらしい。

髪を乾かされた私は手足の爪を切り揃えられ、事細かに全身の寸法を採寸された後、バケツリレー方式でメイドさんの手からメイドさんの手へと渡されて、流れるような手際で鏡の前の椅子へ設置された。

メイドさんの手に有るのは 櫛(くし) とハサミだ。

「髪も整えましょうね」

「・・・バッサリやっちゃってください」

「ダメです! こんなに綺麗な髪なのに!」

「・・・ええ?」

床屋の椅子に座った気分で端的に答えたら拒否された。

獲物の逃亡を許さないシフトで私の周りを取り囲んでのメイドさん会議が始まる。

議題は私の髪型で、私に拒否権は無いらしい。

伸び放題だった銀髪は、後ろは背中の長さで毛先を整えられ、もみあげは背中の半分ぐらいの長さでパッツン。

これは、何かの作業で長い髪が邪魔になる際に、首の後ろで髪を縛るともみあげ部分の髪だけが自由なまま残るように、ということらしい。

もみあげの髪も邪魔になるんじゃ? と意見を述べたら、綺麗な髪を見せつけるのも敵に打ち勝つための技術だと熱弁された。

戦いに髪なんて関係ないんじゃ? と返したら、女の闘い(色恋)の話だった。

6歳児に色恋の駆け引きなんて必要ないだろうに、と思ったけど、貴族社会では5~6歳で殿方に見初められるのなんて日常茶飯事のロリコン万歳だから、闘いはすでに始まっているのだそうだ。

私、浮浪児なんだけど、貴族社会の常識は関係ないんじゃ? との異議は却下された。

色恋なんて完全なる門外漢の私は無条件降伏勧告を受諾するしかなかった。

率直、かつ、真摯な交渉の結果、私の前髪は眉の2ミリメートル下で切り揃えて貰えた。

だって、前髪が半端に長いと目に入るし、眉毛が丸出しになるぐらい前髪が短いのは日本人感覚的に羞恥プレイだよ。

その結果、出来上がったのは、完膚無きまでの姫カットである。

0.5ミリメートル単位でのメイドさん同士の攻防は、筆舌に尽くしがたかった。

恐るべし、プロ意識。

可愛い幼女を玩具にすることに妥協の余地は存在しないそうだ。

はっきりと玩具って言われちゃったよ。

メイドさん同士の意見の差異は、私に振られても答えに困るので切実に勘弁して欲しい。

改装工事が完成した私の容姿を、歪みなく映る高級そうな鏡の前で確認する。

サラサラの銀髪は見事な直毛で、ルナリアのように緩くウェーブが入ったふわふわのボリュームは無い。

ぱっちりとした二重瞼の目は、小川の水に映っていた通りに薄い紫色で、夜明け前の空にように透き通っていて 紫水晶(アメジスト) に似ている。

やっぱり顔の造形も良いね。微妙に垂れ目気味かな?

「ザ・日本人」って容貌だった31歳の私とは雲泥の差だよ。

フレイア様やルナリアみたいな鮮やかな美女ではなく、しっとりとした美人になりそう。

将来が楽しみだ、などと満足していたら、今度はバスローブで梱包されて衣裳部屋らしき広い部屋へと配送された。

お姫様抱っこなどではなく、小脇に抱えられてなので、完全に手荷物扱いだと思う。

私が鏡の前で改造手術を施されている間、一足先に衣裳部屋へと配送されたルナリアは着せ替え人形の刑に処されていたそうで、私と再会できた時には、すでに、ぐんにょりと溶けかけていた。

「すごいわ! 綺麗!」

「・・・そ、そう? 私は落ち着かないけど」

私が着せられているドレスはルナリアの嗜好に合わないとかでお蔵入りしていたもので、明るいブルーの生地に淡い水色のレースで飾った、フリルマシマシで膝丈のゴシック&ロリータ調である。

寒色系が好みだったルナリアのお母様が用意されたものだそうだけれど、暖色系―――、特に明るいめの赤が好みのルナリアは着たがらず、クローゼットの肥やしになっていたそうだ。

もちろん、ルナリアはドレスを着替えても真っ赤っ赤である。

徐に、正面に立つルナリアが私のドレスの裾を両手で掴んで、ガバっと捲り上げた。

突然の奇行に、私も反応できなかった。

満足そうに頷く。

「ヨシ」

「・・・ちょっ!」

ルナリアの手からスカートの裾を奪還した。

今日、初めて会った人たちばかりの場なのに、さすがに私でも恥ずかしいよ。

「・・・い、いきなりスカートを捲るのは、どうかと思う」

「ぱんつを穿いたか確かめたのよ」

それな。

「抜かりなく。お嬢様」

「よくやったわ!」

腰に手を当ててぺったんこの胸を反らし、メイドさんたちへ鷹揚に頷く。

渾身のジト目を食らえ、ルナリア!

「・・・好きで穿いていなかったわけじゃないからね?」

「わかってるわ。フィオレのぱんつを奪ったムーアは、必ず滅ぼすから」

「なんですって!?」

「ほぅ? ムーアですか」

「おのれ、ムーア!!」

いや、そうじゃなくって。

私がツッコミを入れるよりも、メイドさんたちが目を吊り上げるほうが速かった。

「若様たちだけでなく、ぱんつまで汚い手に掛けたか!!」

「ぱんつの仇!!」

「許すまじ!!」

「「「「滅ぼせ!! 滅ぼせ!! 滅ぼせ!!」」」」

「 殺(や) るわよ!」

「「「「おおーっ!!」」」」

ルナリアが掲げた拳に、メイドさんたちも拳を掲げて応える。

極めて物騒な体育会系のノリに付いて行けない。

ていうか、青筋を立てて激怒しているネタが、ぱんつだよ?

「・・・まあ、いいか」

フレイア様とハロルド様が、どうせ滅ぼすんだろうし。