作品タイトル不明
第二次ブートキャンプ ㉙
「・・・合・体!!」
お約束の定着を目指して宣言すると、ミセラさんたちがブフッと吹いた。
合体の概念は有るんだな。
いや。シャキーンと格好良いポーズの方だろうか。
ルナリアのお尻を防護するのに魔力の手を1本使うけど、ルナリアが魔力の手を1本使えるから差し引きゼロだ。
ルナリアの訓練になる分お得なんだから、私に拒否する理由は無いんだよ。
「・・・始めるよ」
「うん!」
ルナリアを背中に背負ってスッと浮き上がった私の体が横移動して、キャットウォークと荷馬車の両方が俯瞰できる位置に留まる。
足元に何もない状態で浮いているように見える状況だけど、平気そうだね。
上空50メートルから生還したルナリアともなれば、高度20メートルには、もう慣れたってことかな?
「「「「「おお~」」」」」
慰霊碑の建設を見ていなかった少年少女は、間近に飛行形態を見るのは初めてだったね。
意識の有る子たちが鈴なりになってキャットウォークから私たちを見上げている。
魔力の手を3本伸ばして、ひっくり返っている子たちを掴み上げる。
「「「「「おおお~!!」」」」」
意識を失って寝かされていた仲間たちが横になったままスッと浮かび上がると、少年少女たちが目を剥いて驚きの声を上げた。
魔力の手(ハンド) パワーです!
バンダースナッチのボスみたいにグシャッと握り潰さないように気を付けないとな。
「・・・ホイッと」
スーッと地上まで降下させて、荷馬車の荷台に魔力酔い患者を並べていく。
むー・・・。
女の子は横置きでも問題なく並べられるけど、背が高い男の子は横置きだと 支(つっか) えちゃうな。
縦置きにする?
いや、でも、横置きでミッチリと並べて行かないと全部積み込めなくなるんじゃないかな。
殺(し) めた後の獲物みたいに積み上げるわけにも行かないし。
横置きで良っか。
背の高い子は荷台の横壁に頭が支えて首が曲がってるけど、脳筋が寝違えたぐらいで死にはしないだろう。
地上を見下ろして私が3人を荷台に並べるのを見ていたルナリアが、キャットウォーク上へ目を向ける。
馴染みの有る魔力動きでルナリアが魔力の手を伸ばしたのが分かる。
「むっ」
「ぐえ」
「むむっ!」
掴んだ男の子が呻いたことで、力加減が強すぎたと気付いたらしいルナリアの口から、難しい問題を出されたときのような声が漏れる。
おや? 今、ルナリアに掴まれて呻き声を上げていた彼はアイシアちゃんのお兄ちゃんだったか。
多少強く掴んでも潰れないんじゃないかな。脳筋だし。
体格が良いし性格的に勢いも有るみたいから、イメージ的に酔わないかと思ってたんだけどな。
きっと、調子に乗ってグビグビと血を飲んじゃったんだろう。
陽キャのパリピなら何人かはやらかすだろうと思っていたから予想の範疇だよ。
肩越しに返り見てみれば、まだ魔力の手に慣れきっていないルナリアの表情は真剣そのものだ。
「・・・急がなくて良いから、落っことさないようにね」
「う、うん!」
緊張気味の返事が返ってくる。
いつまでもルナリアの作業を見ていては作業そのものが終わらないから、私も作業を進めるかな。
まあ、万一、ルナリアがポロリしたときのために備えて魔力の手を1本空けておくんだけど。
人命が掛かってるしポロリされちゃ困るからね。
経験を重ねるのが成長に繋がるのだから、ポロリするリスクを取るのもルナリアのためだ。
ルナリアがポロリしたときは私がカバーする。
作業に使える「手」の本数が1本減る分は、残りの2本をフル回転させれば問題ない。
ルナリアの魔力の手で無事に掴み上げられたアイシアちゃんのお兄ちゃんが、地上へと下ろされていく。
ルナリアに負けないように私も寝ている子たちを掴んで馬車の荷台に並べていく。
「・・・むっ。コレはいけないな」
作業を始めて数分間も経たない内に、仰向けに並べて寝かせると1台の荷馬車に10人も寝かせられないことに気付く。
横向きに並べれば、もっと詰められるかな?
「・・・こう。ギュッと」
整理整頓して隙間なくピッチリと詰めて行けば、20人近く積み込めそうだよね。
本棚に本を並べていくように、2本の魔力の手で体勢を横向きに立てて、寝ている子たちを荷台の奥から詰め直していく。
いつだってリソースは有限なのだ。
効率よく積まないとね。