作品タイトル不明
第二次ブートキャンプ ㉘
まあ、事実、急いで力を付けさせようとすれば、別の部分で問題が起こるんじゃないかと危惧してる部分は有るからね。
そのフラグをへし折っておきたいって考えも有る。
急激に力を付ければ、増長したり反発したり規律を守らなかったりと、みんなの 指揮官(おてほん) に向かない性格の子も出てくるだろう。
現に増員メンバーの一部には、一度やらかしてお爺様たちの評価を下げてしまっている子たちも居るしね。
汚名を返上する機会も与えてあげたいけど、自信を付けさせると同時に「世の中には怖いものがあるのだ」と教え込んで、団結と互助の精神を叩き込んでおきたい。
そうやって頑張らせていけば、そのうち、一足先に実績を積んできたピーシーズに追い付く子も出て来るだろうし、私たちも含めて、時間を掛けて一緒に育っていけるはずだ。
「フィオレ! 出荷、終わったわよ!」
ルナリアの声に目を向ければ、気絶している少年少女たちが転がっているキャットウォーク上の隙間を、やり遂げた感で表情を輝かせているルナリアがヒョイヒョイと縫うように歩いてきた。
両手を挙げてのハイタッチでルナリアをペチンと迎える。ベンベン。
「・・・お疲れさま。ルナリア」
「これ、どうするの?」
お仕事モード継続中のルナリアが、困った顔でキャットウォークの振り返る。
ルナリアが心配しているのは、地上へ運び下ろさなきゃいけない人数の多さかな?
「・・・荷馬車を下に付けてくれるように頼んであるから、荷馬車に積み込むよ」
完全に荷物扱いだけど、私たちだって、いつも荷物扱いで小脇に抱えて持ち運ばれてたからね。
実利と実効性が尊ばれるウォーレス領では、気絶した人間なんて荷物と変わらない扱いだよ。
意識の無い人間がどれほど重たい荷物かは、酔い潰れた同僚を宴会会場から搬出させられた経験があれば、誰でも知っているだろう。
さてと、シカの出荷分を荷馬車に積み込んだなら、荷馬車の入れ替えが行われているはずだ。
身長の低い私たちの鼻の高さほどの転落防止柵の上から、ヨッと背伸びして地上を覘き込めば、獲物を満載した荷馬車が採掘場を出て行き、キャットウォークの真下に荷台が空の荷馬車が停められようとしているところだった。
積み込み作業を始めようかとポーチから魔石を取り出していると、私と同じように背伸びして地上を見下ろしたルナリアが声を上げる。
「あっ。何か出来てるわ!」
ずっと見える場所に居たのに、いま気付いたのか。
私ほどじゃないけど、ルナリアも集中すると周りが見えなくなる傾向は有るからね。
一度寝たら滅多に朝まで起きないし。
まあ、自分の仕事に集中できる性格は良いことだ。
「・・・馬を崖上に運ぶアレの本体だよ」
「ああ。アレかあ」
そうそう。アレだよ。
視線を宙に漂わせて思い出してるけど、ノーアと一緒にお父様の執務室に飾られてるモックアップで遊んでたよね?
「・・・まだ工事中で使えないけどね。ピーシーズが頑張ったんだよ」
「ふーん。みんな魔力の手を使えるようになったの?」
馬用リフトの計画はルナリアも聞いてるからね。
あれが何かが分かれば、すぐにルナリアの興味は馬用リフトからピーシーズへと移っている。
「・・・覚えたばかりだから、まだまだ訓練は必要だけどね」
「そうね! みんなで訓練するわよ!」
「・・・そうだね。そういうわけだから、みんなを地上へ下ろしちゃうよ」
これから荷物扱いで「下ろされる」少年少女へと目を向けると、ルナリアの目もひっくり返っている少年少女たちへと向く。
さあ、積み込み先も待機位置に付いたし、私の仕事を始めるかな。
魔力の「足」を4本、再び地上まで伸ばして自分の体を持ち上げようとしたら、ドーンと背中に抱き付かれた。
「わたしも手伝うわ!」
「・・・お、おう」
また 負(お) んぶしろと?
お手伝い宣言と同時に私の背中に乗っかってきたルナリアは、私をお馬さんゴッコの馬とする刷り込みが起こったんだろうか?
まあ、良いんだけど。
ルナリアのことだから、少しでも私を手伝おうとしてくれているのだろう。
魔力の手を使った訓練でルナリアの技量が上がるのなら、負んぶぐらい屁でもないよ。
両手でグイッと持ち上げたルナリアの腿を腰骨の上に載せて、魔力の手でお尻を包み込んだら、ガシーン! と固定。
竜に跨がる竜騎士ならぬ、私に跨がるフィオレ騎士ルナリアの降臨だ。