軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二次ブートキャンプ ㉗

これって結構な急速育成なんだよね。

ピーシーズを上回るハイペースで血を飲ませれば、こうなるだろうと予想していたんだから。

私の視線に釣られたミセラさんも少年少女たちを見回した。

「大丈夫じゃないですか?」

「・・・そう思うけどね。でも、まだ安全性が確立されたわけじゃないし」

私もそう思ってるけど、「大丈夫じゃね?」というのは予想でしか無い。

主に私の実例から魔力酔いというものは体に悪影響は無さそうだ、ってだけで、無害だと確定したわけじゃないんだよ。

じゃあ、何でこんな無茶をさせたかと言えば、ピーシーズの直属となる分隊長クラスを決めるのに、 篩(ふるい) に掛ける作業を急ぎたかったからだ。

「育成を急ぐ理由は、派遣部隊の期限ですか?」

「・・・うん。早く指揮系統を作らないと部隊行動の訓練が始められないからね」

ズバリと思惑を指摘されて頷く。

王都へ送り出すまで10日間も無いんだし。

ピーシーズが小隊長を務めるからアリアナさんとの連携は心配していないけど、末端までの確たる指揮系統が決まっていれば、経験が足りない新人さんたちを引率するピーシーズの負担が多少は減ると思うんだよ。

「指揮系統ですか。ずいぶんと急がれると思えば、格付けが目的だったのですね」

「・・・格付けというよりも指標かな」

全体の底上げが目的だと思ってたのかな?

底上げする思惑も有るんだけど、同じ班のメンバーが魔力酔いで倒れれば倒れるほど、消化しきれなかったリソースは他の班に流れて、同期の間でも個々の差が付いていくと考えていたんだよね。

これは、ある意味での自然発生的な「選択と集中」にあたる。

剣術主体でも魔法主体でも、体内保有魔力量は継戦能力に比例するからね。

そして、軍隊というものはピラミッド型の組織形態だから、「強い」とか「賢い」とか、明確な 指標(モノサシ) が有る方が指揮系統を機能させやすい。

もちろん、「技術がすごい」とか「無駄がない」とか、指標をひっくり返す手段はいくらでも有るわけだけど。

将来的に部隊の数を増やして各部隊に掛かる負担を減らしていく中で、短期的な急速育成による人選の歪みは修正していけるはずだ。

「指標・・・。競わせて成長させるのですね?」

「・・・え? あー。そこまでは考えていなかったけど、結果的にそうなるかあ」

指摘されて苦笑する。

社員同士で成績を競わせるブラックな営業会社みたいでイメージが良くないけど、有効な手では有るんだよなあ。

そんなつもりは無かったと言い訳しても、結果がそうなっているなら、ちょっと問題だな。

人間性の評価を後回しにした実力本位の人選が短期的に有効ではあっても、仲間内でギスギスして欲しいわけじゃない。

軍隊の強みは数と組織力だからね。

互いに補い合う互助力と言い換えてもいい。

むしろ逆に、仲間内の団結力を深めて欲しいのだから、このままのやり方では良くないね。

「・・・別の急速育成方法を考えるかなあ」

「与えられた時間内に一定以上の成長を促すには有効でしょう。まだ足りないぐらいかと」

「・・・うーん。同時に団結も促すなら、共通の試練でも与えるべき?」

団結力を強めさせる手段として一般的なのは「共通の敵」を外部に作ることだ。

独裁制国家なんかが使う常套手段だけど、実に効率的に不満の目を逸らして組織内の団結を促すことが出来る。

もちろん、大義名分が有っても生じた不満が消えて無くなるわけじゃないから、組織内にも火種を抱えて燻り続けさせることになるんだけどね。

でもそれが、共に苦難を乗り越えた先に栄誉が伴うものだったらどうだろう?

例えば、特殊部隊の教育課程修了訓練だ。

某海兵隊のネイビーシールズや某陸軍のグリーンベレーが有名だけど、某自衛隊の特殊作戦群でも同様の過酷な技能修了訓練は行われている。

王都駐留部隊だって特殊部隊みたいなものだろう。

うん。少し早いけど「有り」な気がしてきたな。

「・・・計画を前倒しして貰うか」

「何を企んでるんですか?」

ウンウンと頷いていたら、珍しくミセラさんからジト目が飛んできた。

「・・・企むとは心外な。領軍全体の実利を兼ねた効果的な訓練を思い付いただけだよ」

「本当ですかぁ~?」

信用ないな、私!

最近、私が何かを思い付くと問題が起こると思われてる気がする。

「・・・ホント、ホント。ワタシ、ウソツカナイヨー」

「嘘くさいですよ?」

直球だな!