軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二次ブートキャンプ ㉖

「・・・エゼリアさんたちに教えるときにミセラさんたちも一緒に―――、って。あれ?」

3人が監督作業から外れてるってことは、実際に作業を続けてるのはルナリアが監督しているグループだけ?

もう一度振り返ってルナリアの方を見れば、作業を続けているのは1グループだけで、他の少年少女は囲いの中を覗き込んでいるだけで作業はしていないようだ。

状況認識に誤りが有るように感じて私の首が傾ぐ。

「・・・うん?」

「出荷作業でしたら、アレが最後ですよ」

私の疑問を読み取ったように、ミセラさんが情報をくれた。

今朝の出荷予定数を、もうクリアしたのか。

「・・・あっ。そういうこと」

へぇ? 頑張ったじゃん。

昨日までの出荷数の実績から考えて、80頭ぐらいになると思っていたから、1人1頭ぐらいの数―――、1班あたり10頭分を目安に血が飲めるザックリ計算をしてたんだけどね。

第2次派遣部隊の分隊長を2人選出できれば良いやと考えていたけど、80頭分ものリソースを使って、ひっくり返らずに半数も残ったとなれば嬉しい誤算だよ。

ともあれ、具体的に誰が何頭分の血を飲めたのか報告を上げさせるべきだな。

思惑通りに行ったのかを把握しておく必要が有るからね。

統計的なデータを残すのも大事な仕事だ。

ふむふむと頷いているとミセラさんが進捗を確認してくる。

「下の作業は順調に進んだようですね?」

「・・・ピーシーズが頑張ったからね」

ミセラさんたちの目がキャットウォークの手摺りを越えて、主な構造体がほぼほぼ完成しつつある馬用リフトの櫓へと向けられている。

みんな頑張ってくれたから、ピーシーズの作業はそろそろ終わるんじゃないかな。

「フィオレ様も頑張ってましたよね?」

「・・・ピーシーズにお手本を見せただけだよ。作業の方も、私が言い出したせいで始まった建設工事だからね」

しっかり見られてたのか。

私の言い分にミセラさんがコテリと首を傾げる。

「フィオレ様だけが責任を負う必要は無いのでは? 現場の要望でも有ったのですから」

「・・・今回は私の責任で良いんだよ。大した負担でも無かったし」

領軍の仕事を奪うな、と。

やんわりとミセラさんが苦言を呈している意味は分かってるよ。

以前、お爺様にも言われたし。

実働部隊の今後を思えば、実績的にも経験値的にも本来は現場に任せるべきだけど、今に限っては本当に色々と立て込んでいる。

「・・・工兵部隊には、土塁の延長工事が終わったら養成施設の建設の方でお世話になりたいのが私の本音なんだよ」

「ああ。あちらの建設計画もありましたね」

ミセラさんたち目が採掘場の外に広がる森の景色へと向く。

私は体制側の立場だからね。

優先順位を付けてリソースの割り振りを考える必要も有るし、現場が失敗を怖れて萎縮したりタイミングを外したりするぐらいなら、私のゴリ押しで障壁を乗り越えて、みんなが前を向ける状況を作り上げた方が良い場合も有る。

ナーガ川の河畔に防塁を築くのだって敵の渡河を防ぐのが目的で、敵が上陸した後に築いても意味がない。

物事には逃してはいけないタイミングが有って、どうにか間に合わせなきゃいけない期限というものが有る。

インフラ整備というものは、そういうものだ。

新兵の育成だって王都派遣という納期が迫っていて、納期に間に合わないと信用を失って構想に大きな変更を求められる事態になる。

「・・・今は育成を急ぐ必要が有るからね。使える機会は何だって使いたい」

「機会ですか?」

「・・・そうだよ。限られた機会を誰の経験を積ませるために使うかも、投資だから」

「人に対する投資ですか。なるほど」

シカの出荷も、森の伐採も、訓練教材のリソースをどこに使うかも投資だからね。

他方、利便性の向上と恩恵の享受が生産性を押し上げて領地が潤えば、最終的に、より領地の防衛が楽になる。

防衛力が引き上がれば、より安全になって、さらに生産力向上に振り分けられるリソースが増える成長サイクルだよ。

恩恵を受けて安定を手にした領民は結束と防衛意識を強くしてくれるだろうし、防衛力の整備にはおカネが掛かる。

おカネを調達しようと思えば、生産性を引き上げておカネを儲ける必要が有る無限サイクルでもある。

それらのサイクルを支える中核が、そこで働く人なのだから、人への投資はケチれない。

どこから手を付けるかの障壁を乗り越えて成長サイクルに無理やり乗っけるためならば、私は多少のゴリ押しも厭わない。

「フィオレ様はお優しいですね」

「・・・そうでも無いよ? みんなに、かなりの無理をさせてるし」

私のゴリ押しに付き合わされて、ひっくり返っている少年少女に目を向ける。