軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二次ブートキャンプ ⑨ アンサンブルキャスト面

「あの。ルナリア様の評価が高まって、何か困ることでも?」

「ルナリアに見合う婿がおらん」

疲れた顔で零すハロルドの姿に、“銘”持ちの公爵家当主となったルナリアへの婚姻申し入れが殺到しているという噂を思い出した。

「ああ。それは困りましたね」

王家に準ずる公爵家に見合うお相手となれば、同格の公爵家か一段落ちる侯爵家か。

家の数に限りが有る上に、年回りの問題と、さらには派閥の問題も有る。

婚姻で他家から婿を取るということは、間諜を招き入れるに等しいのだ。

今後はウォーレス家に政治力と資金力が集中するであろうことを思えば、下手な相手は選べない。

元々、ルナリアは気性が強くて相手を選ぶと思われていたはずだ。

そこへ昇爵したものだから、さらに選択肢が狭まってしまったのだろう。

「テレサの婿にアレースを押し込んでからでも無ければ、迂闊に探すこともできぬ」

「アリストテレジア殿下の王配は、他国から迎えられるのでは?」

アレースとは、ミリアの長子のことだろう。

テレサとは、第三王女殿下の愛称で間違いなかったはずだと、エルザは問う。

ミリアが輿入れしたファーレンガルド家は中立派の侯爵家だ。

王女殿下の婿にアレースを押し込むということは、王女殿下が降嫁されるのではなく、王女殿下が王位に就いて王配を向かえるという意味だとエルザは捉えた。

王配を侯爵家から?

通常、王配は同格か王家に準ずる公爵家から取るものだ。

王家は国内に良い相手がいなければ国外から同格の王族を招き入れる。

その血縁が国際社会で孤立しないための外交となり、自国を守るのだから。エルザが口にした正論に、ハロルドだけでなくセリーナも首を振る。

「小国連合諸国からか? 無理だな」

「それが出来れば早いのですけれどね」

「無理と仰いますと?」

西方諸国の名が出なかったことは、まだ分かるが、小国連合諸国も選択肢に入らないのか。

否定したセリーナ自身も、お母上が小国連合諸国からリヒテルダート公爵家へ輿入れされてきたお方だったはず。

残念なことに、輿入れから20年ほどで故国は勇王国に滅ぼされてしまったが。

セリーナの叔母である、かのカレリーヌ様が、人が変わったように、苛烈な行動を取るようになられたのは、その頃からだったはず。

「ただでさえ小国連合諸国が総崩れで勇王国や神教会の圧力が高まっている今、他国から王族を迎え入れるのは戦乱を呼び込むことに他ならん」

「内乱で国内に揺らぎが生じた以上、他国と結ぶよりも、陛下は国内の結束を優先されるだろう」

「かと言って、テレサ様と家格が釣り合って年回りの合う者となれば選択肢が無い」

ハインズ、ハロルド、マルキオと、順に現在の国際情勢を口にする。

なるほど、と、エルザは頷いた。

エルザがピーシス領に引っ込んでいる間に、セリーナの系譜で有る亡国のときよりも、もう一歩、国際情勢は悪化していたらしい。

そう言えば、先日までの西部国境地域の内乱でも、西方の影がチラ付いていたのだったか。

これは外交の問題ではなく国防の問題なわけだ。

「だから、さらに家格を一段下げられるのですね」

「そういうことだ。侯爵級から王配を選ぶとなると、後ろ盾が重要になる」

「それでアレース様ですか」

王家から見て二段落ちる侯爵家とはいえ、後ろ盾に現当主の正妻の実家であるウォーレス家が付くとなれば、国内にアレースを超える人材はいないだろう。

ミリアに似て利発な子だと聞いていたし、本当ならば、アレースはウォーレス家に欲しかったはずだ。

エルザの推測が正しかったことをハロルドが裏付ける。

「今後のウォーレス領の立ち位置を考えると、ルナリアに見合う者も難しい」

「さらには、フィオレよりも弱くて頭の悪い男は要らんとルナリアが言い出してな」

「あらあら」

フレイアの暴露にエルザも苦笑する。

フレイアは面白そうに茶化すが、笑える状況では無さそうだ。

フィオレだけでなく、ルナリアもフレイアが可愛がっていることは周知の事実だ。

フレイアのことだ。

可愛い娘二人を他家へ嫁に出さずに済むのだから、婿の出来など大した問題ではないと考えていそうだが、そうも行くまい。

新たに拝領したピーシス領も合わせて、30万人を遙かに超える領民を束ねていかなければならない大貴族ともなれば、出来の悪い婿など、これほど始末の悪いものはない。

小鬼(ゴブリン) の巣穴へ生肉を放り込むように有象無象がウォーレス家に 集(たか) り、おかしな庶子でも作って回られようものなら、ウォーレス家が 四散五裂(しさんごれつ) しかねない。

この状況は王女殿下もフィオレも同じで、だからこそ、ハインズはアスクレーの暗殺を怖れて護衛を付けると言ったのか。