軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二次ブートキャンプ ⑧ アンサンブルキャスト面

「フィオレはルナリアとピーシーズに、“現象の仕組み”を教えたのだったわね?」

「ルナリアには、だな。ピーシーズの場合は、説明を省いて“そういうものだと思え”とゴリ押ししたようだ」

眉根を寄せたマルキオが首を捻る。

「ゴリ押しで覚えさせられるものなのか?」

「フィオレが教え方を使い分けているのは相手の性格じゃないか? 脳筋に理屈や仕組みを教えたところで覚えられるとは、私も思わん」

「あの歳で器用なことだ」

フレイアの答えにハインズが首を振る。

脳筋に理屈を説くよりも体で覚えさせた方が早いのは、大いに頷けるところが有る。

教わる側も肌感覚で生きている者たちなので、体感的に教わった方が効率が良いとフィオレは判断したのか。

内心、エルザは唸る。

なかなかに本質を捉えた考え方で、効率的な教育方法だ。

「結局のところ、フィオレは精霊術式を使っているのでは無いのだな?」

「今のところは、だな」

安堵の色を滲ませて言うマルキオに、フレイアは曖昧な答え方をした。

もしや、と考えていたのはエルザも同じだった。

余地を残した答えに眉間を厳しくしたマルキオが身を乗り出す。

「どういうことだ?」

「フィオレが精霊を宿していることは、仮説として十分に有り得る。そのことにアイツが気付いているかは分からんが、遅かれ早かれだろう。アイツのことだから、アイツがそう意図しなくても、いつかは精霊術式に辿り着くんじゃないかと私は期待している」

「むう」

さらに表情を難しくしたマルキオが唸る。

今でなくとも、いつかはフィオレが精霊術式に至るとフレイアは見ているのだ。

精霊術式とは詳細な記録が残っていない遺失技術だ。

大陸一の魔法術師と言われるフレイアでさえ辿り着かなかった失われし技術に、フィオレなら辿り着けると?

「期待、ねえ」

呆れたようにセリーナがフレイアを横目で見る。

フレイアが抱く期待の大きさにエルザは驚きを抱いたが、同じ 台詞(セリフ) を聞いたセリーナは、エルザとは全く違う疑念を抱いたようだ。

純粋にフィオレの身を案じているらしいマルキオは、フレイアに対する疑念どころではないようだ。

「本当にフィオレの身に悪影響は無いのだろうな?」

「そんなものは分からん。だが、エルフ族の例がヒト族にも当て嵌まるのなら、悪影響どころか長生きするんじゃないかと考えられるが?」

マルキオの心配をフレイアはバッサリと斬り捨てる。

孫を案ずる祖父に、その言い方はどうなのかとエルザは密かに溜息を吐いたが、フレイアの言い分は仮説として、いくらかの 理(り) を感じさせるものでは有った。

当然ながら、斬り捨てられた側のマルキオは、セリーナが抱いたであろう疑念と同じものをフレイアにぶつける。

「お前、精霊術式を自分も習得したいから、そう言っているのでは無かろうな?」

「習得したいことは否定しないが、それとこれとは別問題だな」

悪びれるところのないフレイアは、明るい声で笑い飛ばした。

黙って聞き役に徹していたハインズが頭痛を堪えるような渋面で首を振る。

幼少期にフレイアの世話を焼いていたエルザも、申し訳ない気持ちで首を振った。

「まあ良い。ルナリアにもフィオレにも害が無さそうならそれで構わん」

「ただ、またルナリアとフィオレの価値が上がったな」

ハインズと同様に聞き役に徹していたハロルドも、溜息雑じりに、うんざりした表情で首を振った。

「フィオレはアスクレーの護衛を固めれば良いとして、ルナリアが問題だな」

ハロルドの嘆息にハインズも腕組みで唸る。

アスクレー?

ミリアの次男をフィオレの婿に定めたことはエルザも聞き及んでいたが、アスクレーとルナリアが精霊術式の話と何の関係が有るのだろう?

ウォーレス領に住まうことになっていると聞くアスクレーも、フィオレと親密なルナリアも、エルザの職務と無関係では無いはずだ。

留意しておかなければならないことが有るので有れば、エルザも正しく認識しておかなければ対策が打てない。