軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二次ブートキャンプ ④ アンサンブルキャスト面

気付かされた以上、現状の孤児院でも改善しようと思えば部分的には可能では有る。

だが、それはエルザやコーネリアの負担の増大とも言える。

孤児院を養成施設の付属施設として組み込んでしまえば、指導者側の負担は分散されて軽くなる。

必要になるものは、人員と物資を賄えるだけの資金だ。

そして、その資金をフィオレは岩塩や食肉や魔獣素材の産出という手段で賄えてしまっている。

子供たちへの投資は、優秀な人材を得る形で最終的に回収しようというのだ。

「そういうことですか・・・。フィオレ様らしいお考えですね」

「守り甲斐が有るだろう?」

片眉を上げるフレイアの言い草に、フフッと笑みが漏れる。

「こんなお婆ちゃんに採掘場と子供たちの防衛をしろと?」

「ジアンを鍛え上げたお前に出来ないとは思えんが?」

フレイアが言うように、ジアンが子供だった頃に武術や術式の基礎を教え込んだのは、家系の近いエルザでは有った。

自分の訓練の合間に手解きをしただけだが、幼少の頃から非凡な才能を示したジアンは、勝手に学んで、勝手に努力して、勝手に強くなったのだ。

「あの子を基準にするのはどうかと思いますよ?」

「ジアンの半分程度、オーリアぐらいにまで鍛えてくれれば十分に使える」

「あの子も十分、頑張り屋なのですけれどもね」

ジアンと同じように勝手に強くなったフレイアは、エルザの心中を分かっていながら、今度はオーリアを数え上げた。

まったく、もう。

簡単に言ってくれる。

だが、フレイアがエルザに何を求めているかは理解できた。

近く、前公爵夫人となってセリーナの後を引き継ぐフレイアの要請は、ウォーレス領の未来を見据えたもので断れるようなものでは無い。

フレイアがこう言う以上、実質的なウォーレス家当主のハロルドと意志を統一してのことだろう。

セリーナとシェリア、ハインズとマルキオの意向も同一と見て良い。

重責では有るが、未だ旧主とその愛娘から必要とされていることに、喜びを感じている自分をエルザは自覚する。

エルザの覚悟が決まったことを察したフレイアは決定的な問いを投げ掛けた。

「治癒魔法術師養成施設と騎士養成施設、その両方を引き受ける気は有るか?」

「はっ。もしも私が治癒魔法術師になることができましたら、そのときは引き受けさせていただきます」

「では、決まりだな」

フレイアは二つの養成施設の総責任者をエルザに任じると言っている。

20年以上の昔に戻ったエルザの答えにフレイアは頼もしそうに笑う。

エルザたちが治癒術式を習得すると、まるで疑っていない口振りだ。

「フィオレ様を信じていらっしゃるのですね」

「当然だろう。私の娘だぞ?」

自信満々にフフンと胸を張って言うフレイアの仕草は、新たな挑戦で問題を起こしては乗り越えていた子供の頃と全く変わらない。

若い頃はフレイアが起こす数々の問題に体力で対抗していたが、エルザももう孫が成人してもおかしくない歳になっていて、昔ほどの体力が有るとは言い難い。

不安が有るとすれば自身の老いだ。

「私も昔ほど体が動かないのですけれどね」

「心配有るまい。お袋殿も体の切れが少し戻ってきているらしい」

「シェリア様がですか」

どうということも無いと、ヒラヒラと手首を振るフレイアに、エルザは目を丸くする。

姉とも慕ったシェリアはエルザよりも年上なのだ。

迂闊なことを口に出すと説教されるが、シェリアはまだ剣を握っているのだろうか。

大丈夫なのか? という心配が顔に出てしまっているエルザを見たフレイアは笑みを深める。

「お前が復帰したとなれば、ロアーナやリエンナもじっとして居まい」

あの子たちにも話が行っているのか。

ロアーナは息子のマリッドが新領地の代官に就き、娘のエゼリアが結婚することで完全に子供たちが手を離れる。

リエンナも長女のアンリカが結婚するし、次女のアリアナは王都務めで、末子のアイオスは騎士志望だから養成施設に入るだろう。

ただし、ロアーナは子爵夫人でリエンナは男爵夫人だ。

ベッタリと養成施設で勤められない二人の事情を考えれば、エルザにお鉢が回ってくるのも必然か。

「ふふふ。それは騒がしくなりそうですね」

二人ともシェリアの元側近で、エルザから見ても同じ苦労を乗り越えてきた妹分たちだ。

文官寄りで事務処理面でもシェリアを補佐する女性騎士だったエルザと違って、ロアーナもリエンナも純然たる女性騎士だった。