軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

特務魔法術師の弟子 ④

基本的に任務中は携行食や野営食しか食べられないので、スープにゴロゴロと入ったシカ肉に感動する騎士様たちが沢山いて、今朝捕れたシカ2頭の提供は大変に感謝された。

携行食は、「不味い・固い・喉が渇く」の三拍子が高レベルで揃った代物で、野営食は、「味が薄い・具が入ってない・量が少ない」の三拍子が高レベルで揃った代物だそうで、総じて、騎士様たちや兵士さんたちから極めて評判が悪いものらしい。

携行食も野営食も、輸送力という制約下のリソースを使って可能な限り長い日数の作戦行動を支えるのが目的であって、「必要最低限のエネルギー補給が達成できればオッケー」という質実剛健・質素倹約を絵に描いたようなものなのだそうだ。

野営食を調理する輜重部隊の兵士さんたちは前線に立つ戦闘部隊の人たちからの苦情をまともに食らう立場だから、輜重計画に無かったシカ肉の供給は涙が出るほど嬉しかったらしい。

質素な野営食を食べて頑張らないといけない人たちも、おなかに溜まる暖かい野営食を食べられるのが涙が出るほど嬉しかったらしく、めちゃくちゃ感謝されまくった。

やっぱりお肉。お肉はすべてを解決する。

もっと捕って来た方が良い? そう? じゃあ、後でまたワナを仕掛けに行ってくるよ。

忙しくしている調理場を子供がうろちょろしてはお邪魔になりそうだったので遠慮したけど、機会が有ればお肉の解体や調理に私も混ぜて欲しいなあ。

暗殺部隊の残党掃討は終了したらしく、捕虜になった敵の生存者は大人の時間で素直になった様子で、捕虜の供述と発見した遺体数で裏付けは取れているんだって。

フレイア様の手助けでダルマさんにジョブチェンジした指揮官っぽい男の証言で、発掘作業は範囲を広げて行われていて、捜索を完了するには、まだ2~3日は掛かりそうだと。

ルナリアと私を一足先にウォーレス領へ帰そうって話も出たんだけど、ルナリアが全力で拒否した。

ルナリアのお母様も去年亡くなっていて、お父様も叔母様もお兄様もいない家へ先に帰されるのは嫌だと言って譲らなかった。

2年前、1年前と、立て続けに家族を亡くしていたんだね。

そりゃあ、ハロルド様もルナリアにデレデレになるわ。

ルナリアと2人で作戦会議を開催した結果、岩塩鉱床の情報を報告するのを忘れていたことを思い出し、採掘場の情報を報告した対価として私たちの残留許可を捥ぎ取ることに成功して、ルナリアはご機嫌である。

ハロルド様とフレイア様も、ウォーレス領の財政状況を根底から改善させる岩塩鉱床の発見にご機嫌である。

ちゃんと大人の指示に従う。

安全な範囲内から外へは出ない。

危ないことをしない。の3点を厳守して、私が四六時中、一緒に行動する条件で、ルナリアと私は勝利を手にした。

ついでにジャジャーン! と、私の手に握られているのは、領の騎士団の制式品ナイフ!

シカの解体をしていた騎士様たちが握っていた、あの大ぶりなヤツだよ!

刃渡りが30センチメートルもある諸刃で、ナイフと言うよりは山刀に近いのかも。

柄まで入れると長さが50センチメートルほどもあるから私の小さな体には大きすぎて、腰に提げると騎士様が剣を佩いているみたいなサイズ感だよ。

大人の男性が握るのが前提のナイフだから、手が小さな私だと剣みたいに両手で柄を握って丁度良いぐらいの大きさ。

半年間の相棒だった折れた剣と較べると、びっくりするぐらい切れるから、取扱注意だよ。

フィオレは武器を装備した! ルナリアも同じナイフを腰に提げているけどね。

今の崖下の森には百戦錬磨の騎士様と兵士さんたちが集結しているから、限られた範囲内では触角ヘビなんかの害獣の接近を見落とす恐れも少なく、自分の身を守るにも、自分で戦わなくても助けを呼べば誰かが加勢してくれる互助環境が出来上がっている。

よって、私たちの行動は、結構、自由にさせてもらっている。

自由に散策して良いのは、私の旧活動範囲である、小川と採掘場と洞の辺りだね。

殺傷力が低い捕獲ワナについては私の判断で自由裁量の許容範囲内にしてもらえた。

お兄様の馬車が有った場所も行動許可範囲内だけど、遺品ともども木箱に納められたお兄様たちは、すでに帰郷の途についていて、崖下にはウォーレス家の紋章など関係を示すものが回収された後の馬車の残骸しか残されていない。

セイデスさんやマーサさんたちの遺体も崖上部隊によって無事に野生動物に荒らされる前に発見され、迎えに派遣された荷馬車に乗せられて、直接、ウォーレス領への帰途に就いたそうだ。

もしかしたら、ルナリアを守って戦ったセイデスさんたち護衛騎士さんの誰か一人でも生き残っていてくれるかも、なんて、都合のいい淡い希望を抱いてはいたんだけど、奇跡は起きなかったようだ。

崖下には、念のために発掘のお邪魔にならない範囲でお花を供えに行ったぐらいかな。

その行為も、「すでに遺体が回収されて誰も居なくなった現場に供えても意味が有るのか」とルナリアには理解してもらえなかったけど、日本人的な、というか、 心霊(オカ) 現象(ルト) 的なものに対する気分的なものだと説明して、納得してもらった。

こっちの世界には具体的な亡者系の魔物が現実に居るらしいのに、地縛霊の存在は笑い話だと思われたんだよね。

怖がらせるだけで襲って来ない魔物なんて居ないんだってさ。

魔力と言う存在が心霊的なもので現に亡霊系の魔物が存在するなら、お花を供えるのも無意味じゃない気がするんだけれどもね。

崖上の事件現場にもお花を供えに行きたいけど、理解されない心霊現象的理由で献花に行きたいなんて私の我が儘では、みんなが忙しくしている今は連れて行って貰える状況では無いだろう。

いつの日か崖上へ行く機会が訪れたとしても、全ての遺品が回収されて痕跡が無くなってしまった森の中では、さすがの私でも、どこが事件現場だったかを判別することは不可能と言っていいだろう。

だから、崖下の馬車の現場で手を合わせるついでに崖上の現場にも追悼の念を飛ばしておいた。

火山噴火か何かの大規模災害で立入を禁止された封鎖区域の外から手を合わせているニュース映像を見たことが有るから、きっと遠隔鎮魂もルール的に有りなのだと自分の気持ちを納得させた。