作品タイトル不明
城壁移設 ⑲
「やっぱり普通に土を生成しているのでは無いですね」
「・・・複製してるんだよ」
「土を複製ですか」
私に土魔法のコツを教えてくれたのはノイエラさんだからね。
最初期に「地面に魔力を浸透させる」というコツをノイエラさんが教えてくれたからこそ、魔力の手が生まれてアクティブソナーが生まれたとも言える。
恩返しの意味でも、ノイエラさんに私が持つ情報をフィードバックしたい。
「・・・普通に土魔法を使うときに魔力を地面に浸透させるよね? 土を掌握するときに出来るだけ詳細に把握して、同じものが二つ有るって想像してみて」
「同じものが二つ・・・」
ノイエラさんが意識を集中した様子でスッと目を伏せた瞬間、積み上げ終わっていたモコモコの一部がモコッと動いた。
早っ! もうやって退けちゃった!?
さすが、魔法が得意って言うだけ有るよ。
土のスペシャリストの呼び声は伊達じゃなかった!
「これは・・・。なるほど。魔力消費が思ったよりも軽いですね」
あ。魔力消費量を測るために魔石も使わなかったんだね。
驚いた表情も束の間、納得顔でノイエラさんは頷いている。
驚いた表情をしていたのはルナリアも同じだ。
「すごいわね! ノイエラ!」
「ルナリア様も使っていらっしゃったじゃないですか」
ルナリアからの賞賛にも、ノイエラさんは何のことも無いように平然と返している。
謙遜じゃなく、本気でそう思ってそうだよね。
ノイエラさんの態度にルナリアが首を傾げる。
「わたしは出来るようになるまで少し時間が掛かったわよ?」
「そこは、ほら。土術式は私の得意分野ですから」
何をルナリアから褒められているのかに気付いたノイエラさんがクスッと笑う。
珍しく、ちょっとだけ得意気っぽいね。
ノイエラさんのお手本はお母様だからなあ。
要求水準が高くて、ずっと、それが当たり前で過ごしてきたから、ノイエラさんの基準もちょっとだけズレているんだろう。
「それでも、すごいわよ!」
「お褒めいただいて、ありがとうございます」
再びのルナリアの賞賛に、今度はノイエラさんも嬉しそうに笑っている。
ちょっとぐらいは恩返しになったかな?
「・・・さてと。土を均しに行ってくるよ」
「均し作業ぐらい、後でこちらでやりますよ?」
「・・・良いから良いから。ノイエラさんたちは建設作業に集中してくれて良いよ」
建設作業の方は、作業手順や完成品の構造を知らない私じゃ手出しできないからね。
それ以外の部分でのお手伝いしか出来ないんだよ。
力任せで許される大雑把な仕事以外は、素人の私が手を出すとみんなの足を引っ張りかねない。
ニーナさんという妹を持つお姉ちゃんスキルが高いノイエラさんは、私の考えを察してくれたようで、優しく目を細めてフワッと笑った。
「そうですか。では、お言葉に甘えさせていただきますね」
「・・・うん。じゃあ、また後で」
小さく手を振って背中を向けた私の背中で、後ろを振り返ったルナリアが拳を空へ突き上げる。
「みんな、さっさと終わらせるわよー!」
「「「「「おおお―――ッ!!」」」」」
私もチラッと振り返ると、ヤル気マンマンの魔法術師さんたちと一緒に笑顔のノイエラさんも拳を突き上げていた。
ヨシヨシ。私も最後まで気を抜かずに終わらせるぞ。
元あった城壁の位置の角っこ跡から、平たく広げた「足」で、のっしのっしとモコモコを踏み潰していく。
ここまでやれと言われていたわけじゃないけど私の意志でやっておく。
放って置いても土の自重で土壌に含まれていた空気が抜ければ沈んでいくと思うんだけど、雨が少ない王国の気候では、崖の崩落跡と同じで土が沈んで落ち着くまでの時間が掛けるはずなんだよ。
作物が良く育つ土壌を作るのは大変らしいからね。
私に農業の経験は無いけど、その程度の汎用知識はネット上のどこででも目にした。
農家さんたちが耕作に適した土に耕した後で、土が足りなくて新たな土を継ぎ足すようなことになれば、農家さんたちの努力が無駄になってしまう。
そんな二度手間で農家さんたちを疲弊させたって、労力的にも心理的にもマイナスしか生まない。
何せ、耕して欲しい土地は私がどんどん魔石をブチ込んでスライム畑化していくんだから、二度手間なんて要らない。
して欲しい仕事は山積みで有り余ってるんだから、無駄な労力は割きたくない。
働いて貰うのだから、働ける仕事を作って働ける下地を整えるのは私の仕事で良いだろう。
細かな部分は実際に働く人たちに整えて貰うけどね。
そうやって自分の力で頑張れば、新しく領民になった人たちもウォーレス領や新領地に執着と愛着を持って、土地に根を張った領民として居着いてくれるだろう。
領民の安定はウォーレス領の安定で、ウォーレス領の安定は王国の安定でも有る。