作品タイトル不明
城壁移設 ⑮
思い付いてしまった以上、やってみないという選択肢は無い。
眼下に有る穴ぼこの底へ魔力の手を伸ばして魔力を浸透させる。
地面の土を認識して全く同じものをイメージの中で複製してみる。
イメージの中で範囲指定して、右クリックからのペースト。
大事なのは、掌握した土を明確に認識すること。
それが二つ有ると信じる。
魔法が発動した瞬間、地面の土が大きくモコッと盛り上がった。
背中のルナリアが身を乗り出したのが分かる。
「・・・おおっ」
「なになに!? 今、何したの!?」
空中から土を生み出してパラパラと穴ぼこへ落としていくイメージを、ルナリアはしていたんだろうね。
私もそうするつもりだったし。
「・・・土を複製してみた」
「ふくせい? 絵や本を複製したりする複製?」
「・・・そそ。やれないかなー、って、やってみたら出来ちゃったよ」
今、そんなに魔力は使ってなかったよね?
体感が間違っていないかを確かめるために、また、イメージと使用感を忘れないように、ルナリアに答えながら何度もコピペを繰り返す。
イケる! イケるぞ! これ、便利じゃん!
多少は魔力を消費するけど、漠然と「土を生み出す」よりも魔力消費量はぜんぜん軽い。
明らかに楽ができてコスパもタイパも良いんだから、ゆとりもZ世代も大歓喜だよ。
「どうすれば良いの!? わたしもする!」
「・・・分かってる分かってる。どうどう」
ギュッと私の首を締め付けているルナリアの両腕をタップしながら、地面の魔力の手を引っこ抜く。
ついでに新しい方の魔石をルナリアの手に握らせる。
古い方の魔石は魔力の残量が心許ないだろうから、腰のポーチからまた新たに魔石を取り出しておく。
「・・・魔力の手を地面に突っ込んで、水を染み込ませるように浸透させてみて」
「うん。ちょっと待ってね」
ほんの僅かな間、魔石に意識を集中したルナリアが地面へと視線を移す。
馴染みの有る魔力が動いたのを感じたから、魔力の手を地上へ伸ばしているのだろう。
「浸透? 水を染み込ませるように・・・」
素直なルナリアは目を閉じて集中し始める。
これは、そんなに難しい作業じゃないからね。
すぐに出来るはず。
「・・・出来た?」
「たぶん?」
確認してみれば、自信無さそうにしながらもルナリアは頷く。
「・・・自分の魔力の中に地面の土を感じ取れる?」
「土・・・。分かるわ」
魔力の“質”を判別できるルナリアなら、そりゃあ分かるよね。
自分の魔力の中に有る異物だもの。
土自体が魔力を持っていなくても、自分の魔力じゃないものの存在の有無ぐらいは意識すれば分かるものだ。
さて、問題はここからだ。
魔石の魔力を使えるルナリアなら出来ると確信は持ってるけど、上手く理解してくれるかどうか。
「・・・その土はルナリアの土だよ。ルナリアの思い通り、好きなように動かせる」
「私の土・・・。うん。大丈夫だと思う」
魔石の魔力で別の魔力を感知する作業の、終端側の魔石の魔力を土に置き換えただけなんだけど、それそのものが魔力であるものと無機物の違いは有るからね。
どう違うのかといえば、他者の魔力は自分の魔力に反発するけど無機物は反発しないから、目隠しで手探りするような作業では判別しにくいんだよ。
逆に言えば、目の前に見えているものの掌握から始めれば、ルナリアも覚えやすいんじゃないかなって。
「・・・土を思った形に変えられる?」
「あっ。出来たわ!」
ルナリアの意志に反応したらしい土の一部がニュッと地表に立ち上がる。
ふむ? これでルナリアは独自の慰霊碑を作れそうだな。
いや。そんなにたくさんの慰霊碑は要らないけどね。
ルナリアの意志で、細長くて触手の先っぽみたいな架空生物的なものが地面でウニョウニョと体をくねらせる。
同様の短い触手が本体の側面に何本か追加されて、いよいよ茶色いニョロニョロみたいに踊っている。
フィンランドの架空生物なんて知らないはずなのに、何でニョロニョロ?
おっと。これ以上、ルナリアが大人の事情的な危険地帯に留まらないように、さっさと次のフェーズへ移ってしまおうか。
「・・・で、出来るだけハッキリと土を感じ取れたら、全く同じものが二つ有るとイメージするんだよ」
「全く同じものが二つ。全く同じものが二つ・・・。うーん?」
やっぱりコピーのイメージは難しいか。
全く同じものが複製? 分裂増殖? するイメージって、どう教えれば良いんだろう?
ドッペルゲンガー? いいや、違うな。
うーん? ああ、そうだ。アレならどうだ。
「・・・前にさ。火は二つ出るんだ~って、やったの覚えてる?」
「テレサが一緒だったときね?」
「・・・そうそう。掌握した土を認識しながら、あれと同じようにやってみて」
たぶん、素直なルナリアなら、「火が二つ」ってイメージしろと言われたら、全く同じ火が二つ並んでるイメージをしたと思うんだよ。
コピーとはぜんぜん違うものだけど、結果的に同じゴールへ到達するんじゃないかな。