作品タイトル不明
城壁移設 ⑭
「・・・終わったあああああああああっ!」
「お疲れさま!」
二人の体の固定と「足」を残して魔力の手を消し、両手を空へ突き上げると、ルナリアが首っ玉にギュッと抱き付いてきた。
無事に仕事をやり終えた安心感がすごい。
私の背中に貼り付いているルナリア印の貼るカイロがポカポカして、こっちの安心感もすごい。
予想通り、リニア魔法の魔力消費は大したこと無かったし、あとは穴ぼこの残りを埋めるだけの土と、魔法術師さんたちと約束した継ぎ足し分の城壁を作るための土を魔力で生成するだけだ。
少なくとも、ここから先は、失敗したら何かが壊れてしまうような事態にはならない。
城壁に踏ん付けられて潰れた農地も最小限で済んだはずだ。
「・・・助かったよ。ルナリア」
「わたしは見てただけだけだけどね!」
肩越しにお礼を言うと苦笑交じりにルナリアが返してくる。
「・・・そんなこと無いよ。把握も魔力制御も結構ギリギリだったから、合図を確かめてくれただけでも凄く助かった」
「そう。なら、良かったわ!」
安堵の息を吐いたルナリアが私の首をギュッと抱きしめ直してくる。
分かってくれて良かったよ。
ルナリアが居るだけで頑張ろうって思えるからね。
背中から首に回されたルナリアの腕をポンと叩く。
「・・・じゃ。次、行こっか」
「ええっ!? 次!?」
何で驚くの?
何のために私が宙に浮いたままだと思っていたのか。
逃がさないよ?
「・・・後始末とお手伝いだよ」
「あ、後始末って?」
散らかしたら片付けるんだよ?
そんなに警戒しなくてもいいじゃん。
ルナリアのお尻の下に有る腰のポーチから新しい魔石を手に取る。
「・・・元の城壁が有った場所に大穴が開いてると思うから。魔石の魔力を使える私が穴を埋めてあげないと、領軍の魔法術師さんたちじゃ負担が大きすぎるんだよ」
「それもそうね。わたしもするわ!」
うんうん。責任感が強いルナリアなら、そう言ってくれると信じてたよ。
「・・・そ。ありがと。んじゃ、行くよー」
「えやあああああああああああああっ!!」
えい! なのか、やあ! なのか、気合い一杯の雄叫びを上げるルナリアを背負ったまま城壁を跨ぎ、城壁跡地の大穴を目指して4本の「足」で這っていく。
タタリ神か黒光りするアレのようにシャカシャカと「足」を動かせば、500メートルなんて畑の作物を踏まないように避けながらでも一瞬だったよ。
まだまだ余裕は有ったけど、時速50~60キロメートルは出てたんじゃないかな。
予想していた通り、城壁跡には、左右それぞれに長さ2キロメートル、奥行き15メートル、深さ3メートルほどの穴ぼこが延々と空いている。
まるでお壕か塹壕に見える穴ぼこが城壁の外に有ったなら、地下水脈と接続して防衛設備に流用できただろうけど、城壁内だと転落事故を起こしかねない障害物でしかない。
こんなものは危なっかしいから、誰かが落っこちてケガをする前に埋めてしまうに限るな。
「・・・始めるよ」
「う、うん・・・」
ルナリアの返事を耳に聞きながら穴ぼこを跨いだ上空へと移動する。
地上から10メートル付近から直下に有る穴ぼこの底を見下ろすと、私の肩越しにルナリアも穴ぼこの底を覗き込んでいる。
上空と言っても元の地表からは5メートルしか高さが無いから、上空50メートル帰りの女、ルナリアに動じた様子はない。
この様子だと、毎日、上空100メートルまで連れて行って慣れさせれば、50メートルの高さも平気になるんじゃないだろうか。
上空から穴ぼこを跨いで何をするのか?
魔法で生み出した土を穴の中へ落とし込みながら移動するんだよ。
「・・・あ」
頭の中に土をイメージして魔力を籠めようとしかけて、はたと思い付いた。
無から有を生み出す魔法は魔力消費が重くてキツいよね。
でも、実物の土をコピペした場合、どうなるんだろう?
やってみたこと無かったよね。