作品タイトル不明
城壁移設 ⑬
「「「「「うおおおおおおおおおおっ!」」」」」
私の背中でルナリアは兵士さんたちに手を振り返している。
ドレスじゃなくて良かった!
股下にある城壁の歩廊で監視員をしていた兵士さんたちの上空を跨いだのだから、スカートだったらぱんつが丸見えになっていたところだ。
見えたところで腿の半ばまで裾のあるドロワーズだし私は気にしないんだけど、ぱんつを見せると間違いなくルナリアに「はしたない」と叱られる。
城壁を越えたところで改めてゴール地点の兵士さんたちの位置を確かめる。
「・・・ふむ?」
あと、ちょっとか。
幸いなことに横ズレはほとんど無かったみたいだけど、ゴール地点まで残り十数メートルぐらい有りそうだ。
下側の超伝導電磁石役を務めさせていたアクティブソナーの魔力の手に意識を集中する。
おお。居る居る。
ゴール地点の目印役を務めてくれていた兵士さんたちは、高さ20メートルの城壁が津波みたいな勢いで迫ってきているのに踏み留まっていてくれたようだ。
「・・・ルナリア。角っこの兵士さんの合図を見てくれる?」
「分かったわ!」
「・・・じゃあ、右側から」
目視はルナリアに任せて、私は魔力反応による位置情報把握に努める。
両端の角っこに据えていた2本の「手」にも意識を割いてゴールを目指す。
城壁上の兵士さんの位置とゴール地点の兵士さんの位置が重複すればゴールだ。
右の「手」を引き寄せてジリジリと城壁を動かしていく。
「そこ! 合図よ!」
「・・・オッケー。じゃあ、今度は左側ね」
「了解よ!」
左側の角っこは動かさないように、右側の角っこも左側と同じように引き寄せる。
動かしすぎないようにジリジリと移動させていく。
「合図よ!」
「・・・うっし!」
これで位置は決まった。
ゆっくりと下ろしていくと、地表に支えて城壁の下降が止まる。
完全に着地した城壁はリニア魔法を解除しても動かない。
あとは高さと水平だな。
「・・・沈めるよー」
「うん!」
ルナリアの返事を耳にしながらアクティブソナーを地下へと向ける。
20メートルも潜った辺りに岩盤が有るね。
左右へと岩盤を探っていくと、いくらかの高低差は有っても岩盤は続いているようだ。
これなら地盤沈下は起こさないかな?
起こさないと思おう。
城壁が転ばないように支えたまま、城壁直下の地面をギュッと固める。
圧縮されて土壌が体積を減らしたことで、城壁がズズズと背を低くする。
体感的に2メートルほど沈んだはずだから、まだ3メートルほど位置が高い。
密度を高めた地面を柔らかいイメージにすると、膨大な自重でズブズブと城壁が沈み始めた。
城壁の大質量に上から圧力が掛かって、横にムニッと押し出された土が周囲の地面を下から押し上げ始める。
「・・・あ。これ、拙いかも」
「どうしたの?」
私の呟きにルナリアが反応する。
そりゃ分かんないか。
地表の高さで横から見ていれば、畑が下からモコッと押し上げられたことに気付くだろうけど、私たちは上から見下ろしているから目視では判別し辛いからね。
「・・・土が余りそうなんだよ」
「余るの?」
「・・・まあ、城壁の体積分かな」
そりゃそうだよね。
元の城壁の位置には、長さ2キロメートル、奥行き15メートル、深さ5メートルの 壕(ほり) みたいな大穴が開いているわけで、本来なら、新しい位置で城壁が5メートルも沈み込む体積分の土が余るのだから。
仕方ない。もう一度アクティブソナーを水平方向へと向け直して、横幅で左右2キロメートル、奥行き500メートル、深さ5メートルの広範囲で地面に魔力を浸透させて掌握する。
城壁を沈めて余る分の土を大穴へ押し出そう。
城壁が一気に沈みすぎないように、出来るだけ水平を維持するように、地盤の硬さを調整する。
一方の出口に仮想の壁を立てて塞いでしまえば、圧力は残ったもう片方の出口へと逃げるものだ。
城壁の外側、壁面に沿って、地下深くまで仮想の壁でフタをする。
城壁が沈むにつれ、城壁の内側の地面が向こうへと押し出されていく。
圧力の逃げ道が元の城壁位置の大穴しか無ければ、必然的に大穴が真っ先に埋まるって寸法だよ。
背中でルナリアが忙しなく動いているのを感じるけど、私は城壁の掌握維持に意識を集中し続ける。
「合図よ!」
「・・・反対側も見て」
右側の方をポンと叩かれたけど、左右両方を見て欲しいから要求すると、左肩もポンと叩かれた。
「大丈夫! 合図してるわ!」
「・・・了解。ありがと」
地盤と城壁の底部を接続して地盤の硬さを元に戻す。
念のため、左右の角っこを持った魔力の手に力を入れて揺すってみるけどガタつきも無いようだ。
ここで城壁を固めていた魔力を徐々に絞って、最終的に掌握を手放した。
ヨシ。壊れない。