軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

亡国の騎士 ⑬

「むむっ・・・」

難しい顔で自分とは“質”の違う魔力の反応を探し始めたルナリアの眉間のシワに、伸ばしてやりたくてウズウズしていると、アイシアちゃんとネイアさんが戻ってきた。

「報告!」

私たちの手前で手綱を引かれて急減速したアイシアちゃんたちの馬が、足踏みしつつ停止する。

やり遂げた感のあるキリッとした表情のアイシアちゃんと、苦笑を浮かべているネイアさんの様子に、お母様の助言通りにしておいて良かったと胸を撫で下ろす。

「・・・はい。どうぞ」

「集まっているのは領民たちで、慰霊碑が珍しくて見に集まっていたようです!」

報告内容はイディアさんの予想通りだね。

報告をアイシアちゃんに任せるのかと思っていたら、ネイアさんが補足する。

「ただ、かなり群衆の数が多いので、露払いで私たちが前に出ます。念のため他のみんなは護りを固めてください」

アイシアちゃんとネイアさんが先頭に出て、ピーシーズとミセラさんたちがルナリアと私の周りを固め、お母様とノーアの周りをエゼリアさんたちが固める感じかな。

エゼリアさんたちも、チラッとアイコンタクトを交わしただけで頷き合っている。

まあ、アイシアちゃんとネイアさんが最前列に来るだけで、いつもの警戒シフトだ。

「・・・分かった。―――、お母様、それで良い?」

「良かろう」

お母様がコクリと頷いて了承が出た。

いざとなったらお婆様たちの言いつけを破る気マンマンだけど。

襲撃者を魔力の手で張り倒すぐらいは大した魔力消費じゃないし、言いつけを守るために誰かを危険に晒すぐらいなら、私は潔く叱られる道を選ぶよ。

だからと言って、私が全部片付けてしまっては、ヤル気を出しているピーシーズのためにならないんだよねえ。

匙加減が難しいなあ、などと考えながらルナリアに視線で合図する。

「・・・移動しながら配置を変えようか」

「じゃあ、出発!」

「「「「「はっ!!」」」」」

アイシアちゃんとネイアさんが馬の首を巡らせて、そのまま馬列の先頭に立つ。

ルナリアと私の両脇にピーシーズとミセラさんたちが付いて、私たちの後ろにディディエさんにダーナさんが続く。

お母様の前にイディアさんとディーナさんが立ち、お母様の両脇にエゼリアさんとアンリカさんが付いて、トリアさんたちがお母様の後ろを固める。

襲撃が有った場合にも攻撃対象外になるだろう猟師さんたちの荷馬車は馬列の最後尾だ。

しばらく直線道路を進んで行くと街道との交差点が見えてきて、報告通り―――、というか、報告から想像していた以上の人集りが直線道路にまで溢れ出ている様子が分かる。

人々の視線が一様に斜め上を向いている様子から、慰霊碑を見に集まった見物客であることが察せられる。

「・・・何か、すごいことになってるような?」

「これ、レティアの住民だけじゃ無いわよね・・・」

「・・・たぶんね」

そんなことを言っている間にもポックリポックリと馬列は進み、馬列の接近に気付いた領民たちが大きな歓声を上げ始めた。

歓声に気付いた見物客がさらに直線道路へ溢れ出してきて、あっという間に人一人が通り抜ける隙間も無い人垣に変貌する。

「あなたたち! 道を空け―――」

「「「「「うおおおおおおおおおおおっ!!」」」」」

「ルナリア様バンザ―――イッ!!」

「フィオレ様バンザ―――イッ!!」

「フレイア様バンザ―――イッ!!」

道を空けさせようとしたアイシアちゃんたちの声が、雄叫びに掻き消されてしまった。

テンションが上がりまくっているのであろう領民たちが叫びまくっている合間に、私たちの名前を叫んでいる声が聞こえてきて、敵意や害意が無さそうなのは分かるけど対応に困る。

いつもなら「手を振ってやれ」ぐらいは言ってくるルナリアやミセラさんたちも、さすがにこれはヤバいと思ったのか何も言ってこない。

これ以上刺激するとヤバそうなのは私も分かるから愛想を振るのも躊躇ってしまう。

かと言って、このままじゃあ道を通れなくて領主館へ戻れないし、怒鳴りつけるのもなあ。

同じように考えたのか、アイシアちゃんとネイアさんも困り果てた顔で振り向いてくる。

種を撒いたのは私だけど、私がどうにかしろと?

「・・・うーん。この」

“蒼焔”を落とすかあ?

でも、ウォーレス領の領民の場合、あんまり切り札を多用すると耐性が付いて鎮静効果が無くなりそうなんだよなあ。

しぶといことで有名な黒光りするカサカサする虫だって殺虫剤を撒き過ぎると耐性が付くって聞くし、そのぐらいウォーレス領の領民は逞しいと思うんだよ。

どうしたものかと迷っていたら、ものすごく通る男声が領民たちを一喝した。