軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

亡国の騎士 ⑤

「ねえ、フィオレ。本当にバンダースナッチ?」

一緒に階段を下りていると難しい顔をしたルナリアが顔を寄せてくる。

声を潜めて内緒話が出来るようになったなんて、ルナリアの成長を感じちゃうなあ。

「・・・たぶんね。お母様が探知してくれたけど、お母様が“そこそこ強い”反応があるって」

「お母様が言うなら強そうね・・・」

「・・・そうだね。って、―――、あっ!」

ルナリアの眉間に皺が寄っている。

あー、ダメダメ。

ガシッとルナリアの首に腕を回して眉間に手を伸ばす。

「な、何なに!?」

「・・・良いから良いから」

「んにゅー!!」

2本の指先でムニーっと眉間を伸ばしてやる。

ルナリアの可愛い顔に縦ジワなんて付いたら、みんな泣くよ?

突然、グイグイと眉間のシワを広げられまくったルナリアが涙目になっているけど、初めての年末にこんな縦ジワの存在は私が許さない。

絶対に、だ。

ヨシ。眉間の大掃除は完了した。

縦ジワ討伐のアフターケアで頭をヨシヨシしておく。

ついでに荒ぶらないように眉間もヨシヨシ。

「・・・でもね。ワナに掛かってるなら一昨日と同じだよ。安全に狩れる」

「そ、そうよね!」

パッと表情を明るくしたルナリアと一緒に地上へ下りると、水鉄砲から、シュコー、シュコー、と空気が漏れる音を鳴らせながら不敵に笑っている猟師さんたちが待ち受けていた。

この猟師さんたちがモヒカンヘアーにトゲトゲ肩パッドだったなら、ナイフか手斧の刃をペロペロと舐めている絵面になっただろう。

手にしているのが水鉄砲で本当に良かった。

後はモヒカン禁止令とトゲトゲ禁止令をお父様から出して貰えばウォーレス領に世紀末は来ないはず。

「おーい。崖上に上がるぞー」

「「あっ。はーい」」

モヒトゲの片鱗を見せた猟師さんたちと対峙していた私たちがお母様の呼ぶ声に返事を返すと、ノーアを軽々と左手1本で抱き上げているお母様は、私たちが気付いたことを確かめて崖上へと上がる階段へと向かう。

じゃあ私たちも、と、お母様たちに続こうとしたら、そうは問屋が卸してくれなかった。

咄嗟にルナリアを背中に隠すと、ピーシーズがルナリアを後ろに引き下げて回収する。

ルナリアが私から離れるのと入れ替わりにスススとマーシュさんが私の斜め後ろに付く。

ほんの一瞬でフォーメーションが変わったところへ猟師さんたちが押し寄せた。

「フィオレ様! バンダースナッチが掛かったとか!?」

「うおおお! 順番が回ってこなかった俺のミズデッポウが、ついに日の目を!」

あ、圧がすごい!

目をキラキラさせて迫ってくる興奮状態の猟師さんたちを両手で押し留める。

レティアに来て随分と慣れたけど、体の大きなオジサンたちに取り囲まれると、さすがに怖い。

「・・・か、可能性! まだ可能性だから落ち着いて!」

「落ち着いてください。ブン殴りますよ?」

「「「「「へ、へ~い」」」」」

おおっ! マーシュさんの説得で猟師さんたちが沈静化した!

事前の根回しで先乗りする役回りが多いマーシュさんは交渉能力が高いんだな。

うんうん。すごく助かるよ。

「・・・ありがと。マーシュさん」

「勿体ないお言葉です」

振り返ってお礼を言うと、いつも通りの穏やかな笑みでマーシュさんが答えてくれた。

さてと、理性を取り戻したオジサンたちを伴って、さっさとお母様たちを追わなきゃ。

「・・・今から崖上に向かうけど、まだワナに掛かってるかどうかは未確定だから気を引き締めてね。それと、もしも掛かっているのがバンダースナッチだった場合、今後もバンダースナッチが掛かり続ける可能性が高くなるから、そのつもりで認識を改めて欲しい」

「「「「「おお~」」」」」

新たな脅威の出現で危険が増えるから気を引き締めろ、って言ってるんだけど、このオジサンたち、何で喜んでるの?

フリスビーを前にした犬みたいな顔で「待て」をしているオジサンたちの姿に困惑する。