軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

西方よりも ㉕

集会所の解散を見届けた私もお母様たちの下へと戻る。

領主館勤めの一般メイドさんたちはサッサとテーブルセットを馬車に積んで撤収していて、私たちも自分の馬に跨がって領主館へと帰り着く。

メイドさんたちに寄って集って浴室に拉致されたルナリアと私とノーアは、丸洗いされて着替えた後、食堂へと向かった。

仮称ルナリアミサイルの原因究明で家族会議に変わると予想してた晩餐の話題で、お父様が早速ブチ上げたのは、この話題。

「ううむ。ナーガ川上流の調査か」

「搦手になり得る渡河地点は潰しておくに限るが、本当に大丈夫なのか?」

「以前の調査のときとは状況が違う」

渋る、というよりも、人員損耗の懸念が先に立ってしまうらしいお爺様たちに対して、お父様が果敢に斬り込む。

急ぐ案件が多くて後回しになっていただけで、対処の必要性は本当に認識してたんだね。

私も全力でお父様を支援しなきゃ。

「潜んでいる魔獣の位置を把握できる、だったか」

「実際にバンダースナッチの襲撃を事前に把握していましたよ」

マルキオお爺様の事実確認にシェリアお婆様が応じる。

シェリアお婆様と一緒に現場を目撃したセリーナお婆様は、事実認定を前提として私に話を振ってくれる。

「フィオレ。あれは、どの程度の範囲を把握できるのかしら」

「・・・強い魔獣でしたら1キロメテル以上の距離でも探知できます。触角ヘビのような隠密性の高い魔獣でも、300メテル程度の範囲内でしたら見落とすことは無いかと」

お婆様たちと一緒に現場を目撃したお母様は、再現性を元に技術的な確立度を問うてくる方針のようだ。

「どうやるんだった?」

「・・・魔力を広く広げて、自分の魔力とは質の違う魔力を感じ取るんだよ」

「魔力を広げて、質の違う魔力か。―――、ああ。確かに分かるな」

誰もが認める魔法術式の第一人者であるお母様が再現して見せたことで、確立された技術で有ると同時に汎用性が証明された。

絶大な信用力を持つお母様の認証で、再度の技術的検証過程がスキップされる。

「ほう。随分と応用が利きそうだな」

「ルナリアと一緒にフィオレが飛んだだろう? アレも、その技術の応用らしい」

信憑性から価値評価へと思考が切り替わったマルキオお爺様に、お父様の追撃が入る。

「どう、応用するのだ?」

私に目を向けたマルキオお爺様の興味は、すでに技術の概要へと移行しているようだ。

お爺様もまた魔法術式に精通した技術者なのだから、学術研究院の所長さんと同じように概念から誤解を招かないようにした方が理解を得られやすいと判断する。

ここで懸念の芽を払拭してしまった方が良いな。

「・・・根本の理屈を分かっていただく必要が有るのですが、魔石の魔力を使うときには、自分の魔力の質を魔石の魔力の質に似せるんです。質を似せるためには魔力の質の違いを感じ取れなくてはいけません」

「質の違いを感じ取る・・・。それが魔獣の探知だな?」

さすが、お爺様。理解が早い。

10の内、2~3ほどしか話していないのに、完結してしまった。

魔石使用法の説明を前にもしたことが有ったけど、子供の言うことだと軽視せずに、ちゃんと受け止めて理解してくれていた証拠だ。

技術の本質を理解してくれているのなら、後は早い。

「・・・はい。質を似せて魔石の魔力を使えるようになれば、魔石を通して別の魔石の魔力を感じ取ることも出来るようになります。例えば、こう、右手の魔石の魔力で左手の魔石の魔力の質を感じ取れるわけです」

「右手の魔石で左手の魔石を、か?」

フィジカル特化のハインズお爺様は理解し辛かったかな。

もう少し噛み砕くか。

「・・・それって、右手と左手の、この空間に魔力を伸ばしてるんですよ。魔力は離れたところへ伸ばせるんです」

「魔力の放出であろう? 普通のことでは無いのか?」

うんうん。私がルナリアから教わったときにも、第1段階が魔力の認識で、第2段階が魔力の放出だった。

魔法技術の基礎知識がそれで、その理解で間違っていないし、そこで止まってしまっていたのが、今までの魔法技術だっただけなんだよ。

ハインズお爺様は、まだ頭の上にクエスチョンマークを浮かべているけど、お婆様たちの理解は一歩先へと進んだようだ。