作品タイトル不明
西方よりも ㉔
マンガやゲームでよくある「テッテレ~! ファイヤーボール~!」みたいな攻撃なんて良いカモじゃないかな。
目の前に防御魔法を置かれていることに気付かず魔法を発動した時点で、誤爆した自分の魔法でこんがり焼き上がると思う。
魔力の手が1キロメートル先まで届くようになった今の私だからこそ、「イケるんじゃね?」と気付けた。
コレ、ピーシーズにも情報共有しておかないと。
私の防御魔法を貫通してくる攻撃なら、もっと簡単だ。
魔力の手で私自身を運んで攻撃を躱してしまえば良い。
ソーラレイやレーザーキャノンや光子力ビームみたいな光学的攻撃は・・・未知数だな。
メガ粒子砲や波動砲も透過性の素粒子だろうから危ういかも。
それを言ったら放射線兵器も防御できない可能性が有るのか。
神教会が地球から核兵器を開発できる物理学者を拉致してきたら拙いことになるなあ。
自分が歩く核兵器になるのは嫌だと考えたことは有ったけど、神教会が核保有に至る可能性を真剣に検討したことは無かったように思う。
そのときは、魔力の手で神教会の本拠地まで高高度を飛んで行って、先制攻撃で”蒼焔”の絨毯爆撃かな。
王国が核兵器の炎で焼かれる前に、戦略爆撃で神教会を狂信者ごと更地に変えてやる。
ヒャッハ―――ッ!!
トゲトゲを生やした肩パッドと手斧も用意しておくか。
核の炎にも負けないと言えばモヒカンだよね。
神教会の奴ら種籾を持っていないかな?
持っていたら、当然、ヒャッハーしてくるし、稲作ができれば食料事情が大きく変わる。
稲作と小麦じゃあ収穫量が20倍ぐらい違うって言うし、稲は連作障害が起こらないって聞くから、ぜひとも欲しい。
輪作する必要がないなんて、そりゃあモヒカンもヒャッハーするわけだよ。
お母様に侵略戦争はダメって言われてるけど、高高度から汚物を消毒して更地に戻して来るだけだから侵略じゃないものね。
予防的な敵策源地先制攻撃は専守防衛の範囲内だって日本でも定義してたし、私はそのついでに落ちてた種籾を拾ってくるだけだ。
とまれ、光学的攻撃対策だな。
防御魔法の向こう側を視認できるってことは光が防御を透過するってことだし、私自身が光学的攻撃手段を持っていないから防御実験もできない。
光を反射するように鏡面加工したメタリックな防御術式とか 素案(アイデア) は思い付くけど、想定上というか、空想上の攻撃に対する防衛手段は、今のところ考えるだけ無駄かな。
気を取り直して目の前のものから片付けて行くか。
一段落ついたと見て取ったミセラさんが突入して来た。
「皆様。そろそろ領主館に戻られた方がよろしいかと」
「そうだな。日が暮れてしまいそうだ」
ミセラさんの献言に頷いたお父様が、地上50メートルからの景色の素晴らしさを説くルナリアを撫で回しているお爺様たちのところへと向かい、お母様の目が私を見下ろす。
「お前も解散の指示を出してこい」
「・・・はーい」
お母様はお父様の後に付いていったから、私は屯してワイワイやっている猟師さんたちのところへ向かう。
ルナリアの傍はピーシーズが固めているから、私の傍にはミセラさんたちが付いて来ている。
トコトコとオジサンたちの集会所に近付いて行って、軽く片手を挙げると仲間意識丸出しで暖かく迎え入れられた。
「フィオレ様! またデカいもん作りましたなあ!」
「・・・これだけ大きければ、どこからでも帰る場所を見つけられるよね?」
表裏の無い笑顔を向けてきてくれる猟師さんたちと一緒になって、HAHAHA! と笑う。
結構、猟師さんたちとの、このノリ、好きだなあ。
「そりゃあそうだ!」
「こりゃあ良いですね!」
「ありがてえな!」
採掘場で慰霊碑の意味を共有している猟師さんたちは、騎士様たちや兵士さんたちほどでは無くとも、危険な魔獣と向き合う命懸けの職業だからこそ、死者の魂が帰る場所への道しるべが持つ安心感に共感してくれるのだろう。
その安心感こそが鎮魂で、精霊信仰の根幹に有るものなのではないかな。
まあ、もっとも、私は猟師さんたちも、そう簡単に死なせるつもりは無いんだけどね。
「・・・もう日が暮れるから、今日は終わりにしなさい、だって」
「おお。もう、こんな時間か」
「早く帰らねえと母ちゃんに叱られちまう」
「明日も早いからな」
んだば帰るべ、んだなあ、んだんだ、と、帰り支度が整った人から片手を挙げて三々五々に散っていく。
この方言は意訳で、方言を使っていたわけじゃないよ。
猟師さんたちの長閑で和やかな空気感を表してみた。