軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

西方よりも ⑲

邪魔にならないように供物台を手前に退けて、慰霊碑本体の向きを変えることにする。

魔力の手を浸透させて供物台の生え際をカット。

リニア魔法を発動させて手前へ退けると、みんながパタパタと小走りで離れて行った。

慰霊碑の生え際もカット。

みんなの方へ振り向く。

「・・・向きを見てくれるー!?」

「「「「「はーい!!」」」」」

ミセラさんが高度チェックをしてくれていた辺りまで下がったみんなから、大きな声で返事が返ってくる。

ヨシ。リニア魔法を発動してスタンバイ。

魔力の手で1段目を両側から挟み込んで、問題なく動くことを確認する。

「・・・コイツ、動くぞ!?」

ツッコんでくれる人が周りに居ないから、みんなを振り返る。

右? 予想通り審査員入りしたルナリアも含めた6人が両腕を高く上げて、海流に戦ぐ昆布みたいに全身を大きく使ったボディーランゲージで同じ方向を示している。

私から見て右だから、みんなは左を指しているわけか。

みんなが指す方向へと慰霊碑の向きを変える。

「そうじゃなーい!!」

「行き過ぎでーす!!」

「ちょっと戻してくださーい!!」

大きく動かしすぎたか。

ほんのちょっとだけのつもりで慰霊碑を回すと、また声が飛んでくる。

「ちょっと違―う!!」

「戻しすぎでーす!!」

「少しだけ!! ほんの少しだけで良いですー!!」

思ったより難しいな。

みんなは遠くから見ていて、私は至近距離で見ているから、私がほんの少しのつもりでも、結構、大きく動いているのかも。

動いたか動いていないか分からないぐらい、僅かに向きを変えてみる。

おや? 声が聞こえないな。

みんなを返り見ると、ルナリアも混じってみんなで頭を寄せ合っている。

うーむ。これって、審議中かな?

「待て」を食らった犬のように30秒間ほどステイ状態で待っていると、全員がこちらを向いて、頭上に両腕で大きく丸を作った。

どうやら、合議の結果、審査員たちの合格が出たらしい。

「・・・ホイ。了解っと」

リニア魔法を終わらせて、地下の岩盤まで伸びた基礎と再びドッキングさせる。

これで、ちょっとやそっとの地震が来ても倒壊するまい。

慰霊碑本体との平行を保った位置に供物台も戻す。

みんなを返り見ると、こっちは微調整するまでもなく合格が返ってきた。

供物台も基礎と繋いで一体化させる。

「・・・ふう。作業完了」

汚したのは魔力の手で私自身の手は汚していないけど、ペシペシと手のひらを叩き合わせて完結する。

気分だよ。気分。

ミッションコンプリートだ。

さーて。戦勝報告へ行くかな。

お母様たちを返り見れば、みんなテーブルから立っていて、高空戦から無事に生還したルナリアを撫で繰り回している後ろで、領主館のメイドさんたちがテーブルセットを撤収している。

注目が集まってるっぽいから手を振ってみたらドッと湧いて、なんか、ものすごい声援が返ってきた。

まあ、これもミッションコンプリートだろう。

てくてくとお母様たちの下へ戻ると、お爺様たちとお婆様たちに取り囲まれた。

おお? 何だ、この、井戸の底から地上を見上げるような閉塞感。

向かい合って話すことは有っても、こうやって全周包囲で取り囲まれることなんて無いから、ちょっと、たじろぐよ。

お爺様たちなんて山みたいにデッカいから、もの凄い圧迫感がある。

ルナリアと同じように、代わる代わるに撫で繰り回されているだけだし怖くは無いんだけどね。

「貴女、城壁の移動作業にも参加しなさいな」

「あの大きさの建造物を難なく動かせるなら、問題ないでしょう」

「・・・やった! ありがとうございます!」

それって、専門の土魔法術師さんに混じっても遜色無いってことだよね?

思わず両の拳をグッと握ってしまう。

セリーナお婆様とシェリアお婆様のお墨付きを貰えたことが、めっちゃ嬉しい。

「見事なものよ。これほどの規模のものは王城以来だろう」

「うむ。単一の創造物としては大陸最大やも知れぬ」

マルキオお爺様が目を細めて、ハインズお爺様の大きな手が私の頭をガシガシと撫でる。

何度も国外へ出た経験があるお爺様たちの評価を貰えたのなら、西方諸国にも負けていないってことだろう。

神教会の度肝を抜けるレベルなら、流入してくる難民を黙らせるだけのインパクトは与えられると確信が持てる。