作品タイトル不明
西方よりも ⑥
「・・・いずも型護衛艦の満載排水量が2万6000トンぐらいだったっけな」
「いず・・・、何?」
おや。2万6000トンには反応しないんだね。
「トン」という重量単位は、こっちの世界でも使われているけど、大きさがイメージ出来なくてピンと来なかったかな?
「・・・そんな船が有ったんだよ」
「へー」
ルナリアから反応の薄い返事が返ってくる。
そう言えば、リテルダニア王国には海が無いし、ナーガ川という大河が町の近くを流れているけど、敵国との国境になっていて私たち子供は川に近付く機会が無いのと、凶暴な水棲型の魔獣の棲息地になっているせいで船も使われていないんだよね。
ルナリアは大きな船の現物を見たことが無いからピンと来ないのかも。
いずも型護衛艦っていうのは海上自衛隊が誇る最大級艦船で、戦後初の軽空母と言われているアレのことだ。
いずも型の246メートルという全長は、かの戦艦大和の全長263メートルよりも少し小さいだけ、と言えば、どのぐらい巨大な艦船か分かろうというものだ。
某国の主力原子力空母のニミッツ級332メートルに較べれば、ぜんぜん小さいけどね。
なんで私がそんなことを知っているのか?
特徴的な護衛艦の新情報が出回るたびに、ネット上でバトルが頻発したから記憶に残ってるんだよ。
狩猟で生きていた私はミリタリー系の話題と親和性が高かったから、仕方ないのでござるよ。デュフフ。
拙者が軍事オタクだったのではなく、同じスレッドに入り浸っている人たちが詳しかったから純真な拙者も覚えてしまっただけで、今となっては、もっと軍事系のウンチクを聞いておけば良かったかと懐かしく思い出す程度だよ。
「・・・重いなあ」
つい、愚痴っぽい何かが口をついて出る。
はてさて、2万6000トンを支えられそうな岩盤は有るだろうか?
実際には2万4000トンちょいだけど、もう、想定2万6000トンで良いだろう。
もっと細く、軽く作れば、地盤も耐えられるのだろうけど、鉛筆みたいにシュッとした細身の石塔といえば、某神教会絡みのオベリスクになってしまう。
細っこいのは地震の横揺れに弱そうだし、何より、神教会に親近感を持たれても困るから却下だ。
神教会に擦り寄ってこられるぐらいなら、地下数百メートルまででも基礎を伸ばしてやる。
伸ばすといえば、今、私が伸ばしている魔力の手は4本。
シュルシュルと伸ばした魔力の手が四方の地中を走り、土を通り抜け、埋まった岩を通り抜け、薄い帯水層を通り抜け、密度が高そうな岩盤を探し続けている。
「・・・むっ。これは・・・」
魔力の通りが悪い地層が有る?
土よりも密度が高いということだろうか。
だとしたら、岩盤かな?
これって、そこそこ大きな帯水層のすぐ下だよね。
地下水を探すときと同じような魔力のざわめきが胸の中で起こっていることからも、探し慣れてきた感のある水の存在を感じる。
理屈で考えても、水を通しにくい岩盤の上に水が貯まって帯水層を形成するのは理に適ってるし。
問題は、この岩盤がどのくらいの厚みが有るのか、かな。
薄っぺらかったり範囲が狭かったりすれば直立する軽空母には勝てまい。
もっと深くまで、もっと大きな岩盤を探さないといけなくなる。
大きかったら良いな。
ペタペタと質感の境目を辿って岩盤の大きさを調べてみる。
「・・・うーん? ずっと続いてる?」
「何が?」
「・・・地盤」
いや、岩盤と伝えた方が良かったかな?
聞き慣れない単語だったのかルナリアが首を傾げる。
「じばん、って何?」
「・・・固い地面?」
ほ~ん? と、ルナリアが納得した。
体感的に固い岩盤の深さは地下40~50メートルってところだろうか?
建設予定地を中心に300メートルぐらいの範囲を探ってみたけど、まだまだ広範囲に続いていそう。
養成施設もこの岩盤の上に建てることになりそうだなあ。
もうちょっと調べておくか。
伐採予定地方面へと探索を進めてみると、体感1キロメートルを越えても、まだ続いている。
採掘場まで続いていそうだけど、キリが無いから打ち切るか。
魔力の手を一旦消して、もう一度地中へ差し込み直す。
やっぱり50メートルも下がらないうちに質感の違う地層に辿り着く。
魔力の通りが悪い岩盤に魔力を浸透させて、さらに深く差し込んでいく。
岩盤の厚みは・・・100メートルを超えてもまだ続いてそうだ。
「・・・ヨシ。イケそう」
これだけ大きければ軽空母を乗せても沈没したり転覆したりしないだろう。
海上自衛隊、破れたりィ!
まあ、勝ったのは岩盤で、私が勝ったわけじゃないんだけどね。