軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

西方よりも ⑤

身長が1メートルちょっとしか無い私たちからすれば、全高5メートルでも巨大だったからね。

昨日の慰霊碑の寸法は明言しなかったけど、ルナリアなら大体の高さは目測できていたはず。

10倍と聞いて計算できないわけでは無いけど想像し辛いからこその質問かな。

「・・・50メテルだよ」

「50!? わたし、どのぐらいの高さのところに書けばの!?」

気付いちゃったかあ。

昨日は地上から5分の3の高さで碑文を書いて貰ったからね。

「・・・30メテル」

「ええっ!?」

愕然としたルナリアがバッと私を見る。

高度7メートルの紐無しバンジーで硬直するルナリアだからね。

落差20メートルの崖上でも硬直してたし、地上30メートルの空中散歩ともなれば恐怖を上書きされることは請け合いだ。

10階建てのビルの屋上で縁のギリギリに立つと考えれば、吸い込まれそうになる高さの怖さは理解できるだろう。

玉はなくても玉ヒュンを味わえる高さだよ。

おっと。悪ふざけが過ぎたか。

顔色を悪くしたルナリアをヨシヨシする。

「・・・ウソ、ウソ。冗談だよ。1段目の、4メテルぐらいの高さが良いかな」

「はー、良かったー。4メテルって、昨日の高さとそんなに変わらないわよね?」

胸を撫で下ろしたルナリアが確認を入れてくる。

私としても無意味にルナリアをお空へ打ち上げるつもりは無い。

意味が有ったら打ち上げるかも知れないけど、今回の場合は理に適っていないからね。

「・・・昨日より1メテル高いだけだよ。高い場所に小さな文字を書いても、何の石碑だか誰にも読み取れないんだし」

「そっか。それもそうよね! じゃあ、早くやっちゃおう!」

身の安全を保証されたルナリアが元気を取り戻してポワポワし始める。

ええい。チョロかわいいルナリアめ。

左手でヨシヨシしつつ、右手で腰のポーチを探って、あんまり出番のないイノシシの魔石を取り出す。

土魔法を使うのだから、効率を考えれば土属性の魔石を使った方が良いに決まってる。

比較実験をしたわけじゃないけど、魔法道具は使われている魔法の属性と魔石の属性が違うと性能が落ちると言うのだから、理屈は同じはずだ。

「・・・オッケー。始めよう」

魔石を通した魔力の手をズボッと地面に差し入れる。

深く深く魔力の手を差し入れていく。

何をしているのかと言えば、巨大慰霊碑の超重量に耐えられそうな地盤を探すんだよ。

今回は規模が大きくてクッソ重くなるから、基礎工事をしっかりとしておかないと慰霊碑が倒壊する危険性がある。

日本でも悪名高きバブル時代の住宅需要最盛期に社会問題化した、地盤沈下を起こしてしまうだろうからだ。

基本的に建物というものは床を水平にして建てられる。

それを使う人間が、立つにも座るにも寝るにも、水平な床が最も自然で負担が少ないからだ。

斜めに傾いた建物では、中の人だけでなく建物そのものにも偏ったストレスが掛かる。

建物は重い。

雨風で飛ばされたりしないように重く固い建材を使用するのだから、当然、建材の集合体で有る建物の自重は重くなる。

その自重が偏って掛かれば負担の大きい一部の建材が早く消耗して破損する。

物でも人間でも不自然なストレスが掛かれば寿命が短くなるものだ。

そこで地面の強度が重要になってくる。

地面というものは、存外、柔らかい。

一般的に堆積物で有る地面というものは均一なものでは無く、固いところも有れば柔らかいところも有る。

建物の重量に押し潰された部分の地面が沈み込めば、その上に建つ建物は傾いて寿命が短くなるのだ。

ゆえに、重たい建物を建てるときにはクッソ固い地盤まで柱を打ち込んで、建物が水平を保てるように重量を下支えしてやる必要が有る。

今、私が建てようとしている慰霊碑の体積を、手のひらに指先でチョイチョイと書いて暗算してみる。

1段目が縦横25メートルの高さ7メートルで、えーっと、4373立方メートルか。

2段目は縦横19メートル高さ3メートルで1083立方メートル。

3段目は縦横13メートルの高さ40メートルで6760立方メートルだ。

トータル1万2216立方メートルかな。

確か、墓石に使われる花崗岩が30立方センチメートルで70キログラムの重量だと、某墓石屋さんのブログに書いてあったと思う。

その記事の情報が正しければ、1立方メートルの花崗岩で2トン近い重量が有ることになる。

1万2216立方メートルの花崗岩の塊で換算すれば、2万4432トンだよ。

要するに、めっちゃ重い。