作品タイトル不明
下準備 ⑬
かつて淡路島に有った今は亡き世界平和大観音像とタメを張る、地上100メートルを目指してみても良かったけど、万が一にも、そんなものが街道側へ倒れてきたら、街道に被害が出てしまう。
たまたま運悪く通行人が居たりすれば、被害者はペシャンコどころか、まともな遺骨も残らないだろう。
そんなものの傍を毎日通って採掘場へ通うのかと思えば、背筋がぞわぞわしてくるから自主規制した。
地上50メートルなんて目測で測れるの? という部分については、あんまり心配していない。
1段目、2段目の高さはバランスを見て適当に調整するけど、高さ50メートルは台座の一辺25メートルの2倍だから、大雑把に目分量で建てても大きな誤差にはならないだろうと楽観視している。
まあ、もう一手、打っておくかな。
みんなが棒を捻込んでいる間に、5本目の棒を手に正面の一辺から街道に向けて、歩幅50センチメートルで100歩を数えて歩く。
50メートルを計り終えて建設予定地を振り返ると、メイド服の5人が追い付いてきていた。
「フィオレ様。作業完了しました」
「・・・お疲れさま。一回、戻って、お茶にでもしようか」
そう言いつつ、魔力を通して柔らかくした地面に5本目の棒をブッスリと突き立てる。
建設予定地と5本目の棒を見比べたミセラさんが首を傾げる。
「この棒は、何に使われるのですか?」
「・・・高さを見て欲しいんだよ」
「高さを?」
全員が揃って首を傾げる。
「・・・建設予定地からこの棒までで50メテルなんだよ。この位置に立って建設予定地に向いて、この角度。真横と真上のちょうど真ん中の角度で腕を伸ばすと、揚げた腕の延長線が50メテルの高さになるんだよ」
「石碑の高さが50メテルに達したかを確認すればいいのですか?」
さすが、ミセラさん。理解が早くて助かるよ。
「・・・その通り。私が石碑を上へ伸ばしているときに、誰か一人がこの場所で高さを見ていて、50メテルに達したら笛を吹いて知らせて欲しい。石碑の至近距離にいる私には高さが分からないと思うから」
「ふむふむ。笛が必要なのですね? 承知しました」
ミセラさんが納得している間、レヴィアさんたちは右手を45度に掲げて地上50メートルの高さを目測している。
横一列に並んで右手を掲げている姿は、ハイール―――、ゲフンゲフン。
そう言えば、公的な場に出る機会が増えてくるだろうからって言われて、新しい軍服を仕立ててるんだよね。
体の成長に合わせて何度も仕立て直すと言われてデザイン案の要望を聞かれたから、どうせ何度も仕立てるなら色んなデザインを試せるよねって、ルナリアと遊びながら何枚もイメージ画を描いたんだった。
その中に悪ノリでハイールな国の軍服イメージも描いた記憶が有るから、引き連れているメイドさんたちにハイールされてしまうと、さらにハイールな感じになってしまいそうだ。
私がセンシティブなハイールの修正を求められそうでヒヤヒヤしている間にも、レヴィアさんたちは、未だ見ぬ巨大モニュメントに思いを馳せていた。
「あんな高さの石碑ですか」
「とんでもなく大きいですね」
そうだねえ。大きいねえ。
「・・・あんまり大きすぎても、倒れてきたら危ないからね」
「もっと大きく出来そうですね?」
ミセラさん。言外に、もっと高くしろと要求しないでくれるかな?
「・・・出来るとは思うけど、しないよ?」
「高さの限界に挑戦は」
いやいや。聞いてる? しないってば。
直接的に要求しないでくれるかな。
どこかのテレビショッピングか安売りスーパーの売り文句みたいになってるよ?
「自己満足にしか、なりそうに無いし、安全性を犠牲にしてまで挑むものじゃないよ」
「それもそうですね。失礼しました」
遊んでるんだろうけど、ミセラさんの冗談は半ば本気っぽくて判断に困る。
「・・・帰ろっか」
「そうですね」
撤収指示に従ってミセラさんがピィ―――ッと口笛を吹くと、高度に馴致されたウォーレス領産の軍馬たちは、草を食むのを止めてポクポクと蹄の音を鳴らして戻ってくる。
群れの生き物だけあって、1頭が戻ってくると他の5頭も一緒に戻ってくるんだよ。
賢いよね。この子たち。
繋がれていなくても逃げたり迷子になったりせずに、飼い主で有る私たちの近くから離れずに放牧されていたんだから。
ヨシヨシと首を撫でてから、よっこらせと鞍によじ登る。