軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

バンダースナッチという魔獣 ㊺

「・・・ジアンさん! 魔力の手で! ルナリアも! 接近しなくて良い!」

「はっ! お任せを!」

「分かったわ!」

防御術式を振り回すだけでも当たれば攻撃になるからね。

距離を取って接近を拒絶できるだけでも迎撃はしやすくなる。

「・・・ええっ!?」

10メートルほどまで接近したボスを魔力の手で張り倒そうとしたら、真横に進路を変えて困惑させられる。

もしかして避けられた!?

あの巨体で、なんて機動力!!

「「「「「あっ!!」」」」」

ノーアを抱いたお母様たちの前にはエゼリアさんたちが武器を構えて壁を作っていたけど、その外側を回り込まれる。

ブロックも回避された!?

「ガアッ!!」

背後まで回り込んだ上で再びの急接近!

一番後ろに居たセリーナ様も剣を抜いているけど意表を突かれている!

いけない! エゼリアさんたちが位置取りを変えるよりも、ボスのトリッキーな動きの方が速い!

「セリーナ!!」

「チィッ!!」

背後へ回り込まれたことで最前列になってしまったセリーナ様の前へ、お婆様が体を割り込ませる。

左胸にノーアを抱いたお母様は、セリーナ様とお婆様の後ろになってしまったので右手の剣を振れない。

大きく跳んだボスがお婆様たちに踊り掛かる! させるかっ!!

「・・・お母様! お婆様! じっとして!!」

「「「―――ッ!!」」」

地面に突っ込んだ魔力の手が土を固め、エレベーターのようにズボッと持ち上がる。

お母様たちがバランスを崩して片膝を突き、お母様たちを乗せた地面が太い柱状に5メートルの高さまで急生長すた。

「ギャウッ!?」

目の前の獲物が一瞬で姿を消して硬い土壁に変わり、鼻先から壁に激突したボスが悲鳴を上げる。

背筋が凍りそうになったけど、何とか接近阻止に成功した!

「あら。土魔法って、こんな使い方もできるのね」

さすが、元公爵令嬢で公爵家前夫人。

度胸の据わり方が半端ない。

5メートルの上空から地上で鼻先を押さえて悶えている巨大な魔獣を冷たい目で見下ろして、セリーナお婆様が平然とした顔で言い放つ。

「間一髪でしたね」

隣で尻餅をついた伯爵家元夫人のシェリアお婆様は、肩の力を抜いて安堵の息を吐いている。

咄嗟のことだったけど、石碑を建てて回った経験が活きて良かったよ。

「お袋殿。ノーアを頼む」

シェリアお婆様にノーアを押し付けて立ち上がったお母様が、エゼリアさんたちが居る側へと愛剣を片手にヒョイと飛び降りてくる。

全身に纏っている空気の剣呑さから、お母様もキレていることが察せられる。

「グルルルル・・・!」

「・・・・・」

柱の裏側へと回り込むと、私の接近に気付いたボスが身を捩って体を起こす。

なぁに、ガン付けてんだよ、この駄犬がぁ。

私は怒ってるんだよ。

怒りにこめかみが引き攣っているのを自覚しながら睨み返す。

「・・・お前ぇ。お母様たちを狙ったなぁ?」

怒りに任せて、出せる限りの魔力の手をシュルシュルと伸ばしてボス犬を捕まえる。

魔力の動きを感じ取ったのか、大きく跳び下がって、また逃げようとしたけど今度は逃がさない。

1本目2本目は空振りしたけど、3本目4本目5本目6本目と、魔力の手が空中でガッチリと四肢を掴み取った。

「・・・逃がすわけないだろ、このケモノがぁ」

私を狙うなら兎も角、お母様たちを狙った時点で狩猟でも何でもなくなった。

ブチ殺す。ただ、それだけだ。

フレンズなんて居ない。

殺すか殺されるかなら、慈悲なんて1ミリも存在しない。

「ギャワワッ!?」

ボス犬の四肢を魔力の手で握り潰し、1本目と2本目で頭を掴んで握り潰す。

「グブッ」と、くぐもった断末魔と、パキャッと骨の砕ける軽い音が耳に届いて、そこで、ハッと我に返った。

「・・・しまった! やっちゃった!」

やらかしたショックで愕然とする。

みんなでシェアするつもりだったのに、私一人で殺しちゃった。