軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新たな芽吹き ㉓

「・・・うっそぉ」

「今、何かされましたか?」

マジで!?

私もビックリしたけど、ジアンさんも驚いたように目を丸くしている。

この人、勘、というか、見えてないのに、本能的に避けたの!?

それとも、魔力の動きを感じ取ったのだろうか。

向き合った私たちがお互いに目を丸くしている様子に、観客たちが首を傾げている。

ダメだコレ。

魔力の手も、考えても居なかった弱点が発覚した。

もう、大人しくジアンさんの攻撃を待って、カウンターで引っ叩くぐらいしか手が思い浮かばない。

いくら勘が良くても、剣を握る手を捕まえてしまえば、躱しきれないはず。

魔力による“ トラバサミ罠(タイガートラップ) ”をイメージする。

猛獣の顎のようにギザギザの牙が並んだワナを風バリアーの表面に地雷のように設置して、トリガーを木剣が叩けば顎が閉じて食らいつく。

私の頭の中に有るイメージ上のワナだから、重なっていようが横向きだろうがペタペタと大量に貼り付けられる。

風バリアーの内側と外側と、私の頭上に魔力の手を置く。

内側の手は、ギュッと固めて防御状態に。

外側の手は、いつでも固められるようスタンバイ状態に。

その上で、引っ叩くための手を振りかぶった状態で頭上にスタンバイ。

逃げてもジアンさんの方が速いだろうし、待ちの一手しか無い。

魔力の手の気配を察知したことでジアンさんも警戒した様子で、左手の木剣を軽く前へ出して半身に構え、真剣な表情でジリジリと距離を詰めてくる。

一撃離脱で攻められたら捕まえきれなくなる可能性が高いよね。

何度も失敗したら、そのうち完全に読まれるようになるのかも。

これでダメなら、後は“蒼焔”の広範囲高威力攻撃で観客ごと薙ぎ倒すしか打つ手が無くなる。

負けたくないな。

ルナリアを守り通すと決めたのに、こんなところで負けたくない。

“蒼焔”の汎用性が低くて周囲に与える被害が大きくても、負けるよりはマシだ。

これを破られたときには私も覚悟を決めて、形振り構わず勝ちに行く。

汚かろうがオーバーキルだろうが、絶対に負けない。負けられない。

私の本気を感じ取ったのか、目を鋭くしたジアンさんが、さらに慎重に隙を伺ってくる。

「「・・・・・」」

捉えられる?

いや。自信が無いな。

ゴクリと息を呑む。

攻撃してくるジアンさんの動きを目で捉えられないのに、こっちから攻撃しても当たることは無いだろう。

得体の知れない攻撃手段を持っている相手に木剣で挑むなら、私だったら一撃離脱で攻め込む場所を探すもの。

だったら、いっそのこと、私の周り全体に魔力の手を広げておいて、防御に木剣が当たった瞬間に固めるしか無いと考えてのスタンバイ状態だけど、やれるかな?

勝負は一瞬。

木剣ごと腕を捕まえて、捉えた瞬間、引っ叩く。

遠赤外線で炙られるような時間に息が詰まる。

瞬きした瞬間、コンマ・ゼロ数秒だと思う。

「―――、!!」

ジアンさんの姿が掻き消えて、反射的に魔力の手を固める。

私の背後で何かを掴んだ感覚が有って、その場所を、もう一つの魔力の手で横薙ぎに払った。

「・・・空振り・・・!?」

捉えられなかった!?

振り抜いた魔力の手に何の感触も得られなかったことで、慌てて振り返ったら、私の真後ろ、風バリアーのギリギリ外側で木剣が浮いたまま魔力の手に捕まっていて、5メートルほど下がった場所でジアンさんが奪われた木剣を見つめて目を瞠っていた。

やっぱり、避けられちゃったかあ。

手負いの野生動物でも、ここまで勘は良くないだろう。

木剣は捕まえることが出来たけど、危険を察知したジアンさんには緊急離脱されたっぽい?

あっさりと木剣から手を離して後退したんだろうね。

「これは、一体?」

「・・・私の奥の手だよ」

正確には魔力の手だけどね。

何も支えるものの無い空中に木剣が浮いたシュールな光景に、目を剥いていたジアンさんがパチパチと瞬く。

理解したかな?

魔力の手は、物を持つことが出来る。

スルスルと伸ばして、木剣をジアンさんの手に返す。

「・・・ね、ジアンさん。これ、習得してみない?」

「―――、!!」

私が投げ掛けた言葉に、木剣を受け取ったジアンさんが驚いた顔をする。

この人は強い。

敵を含めて、たぶん、私が今まで手合わせした人の中で、ダントツに強い。

お母様たちの強さって、この人の“域”なのだろう。

しかも、この人はハンデを背負った状態で、コレだ。

この人が万全だったら、今の私では、きっと手も足も出ない。

この人が復活すれば、とんでもなく強い騎士が復活することになるんだろう。

こんな人を腐らせておくなんて、勿体無さ過ぎる。