軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新たな芽吹き ⑰

日本で原始人をしていた頃に向けられていた視線は、異物に対する嘲笑や嫌悪感が主だったけど、今、私たちに向けられている視線からは、心配や期待感を主に感じる。

そして、その中に紛れて“悪意”が存在する。

ぐるりと周囲を見回してから、納得したようにルナリアが頷く。

「わかったわ」

納得してくれて良かったよ。

この舐め回すような感じの背筋にゾゾゾと来るような嫌な視線って、嘲りのようなものと欲のようなもの?

イジメっ子が標的を見定めるような視線、かな。

前世でも施設へ収監された後にお馴染みだった奴だ。

あの頃も返り討ちにしていたけど、この手の視線って不快なんだよね。

それとなく「悪意」の元へ視線を走らせてみると、ルナリアたちの予想通り、大人は居ないな。

どれも顔つきは欧米基準の中学生か高校生ぐらいの少年少女に見える。

平均的な日本人よりも発育が良いから、欧米系の子供は大人っぽく見えるんだよね。

王国って金髪碧眼が多いから、金髪で目付きが悪いとヤンキーっぽいよね。

あれって、領軍へ入れる年齢に達していない成人前なんだろうなあ。

ピーシーズと同年代ってことだ。

ピーシス領は脳筋を量産する脳筋の製造元なんだから、腕っ節自慢の跳ねっ返りが居ないわけが無いと思っていたし、居て当たり前。

むしろ、いきなりお母様が連れて来た私のことを、快く思っていない大人が混じって居ないことが意外だと感じる。

訓練場の入口でマーシュさんが足を止め、ルナリアも足を止めるものだと思っていたら、スタスタと進んで行くので、仕方ないな、と思いながらもルナリアと並んで私も歩く。

ピーシス家本邸が備えている乗馬訓練用の馬場を兼ねているらしい訓練場は、木柵で囲われたサッカーフィールド1面分ほどの広さだ。

踏みしめられて固くフラットな地面の真ん中まで歩み出たところで、注目の中、ルナリアがクルリと振り向いた。

「立ち会いを望む者は前へ出なさい!」

ルナリアの高く通る声が訓練場に響き、領民の間から響めきが上がる。

いつの間にか、お母様たちも訓練場へ出て来ているけど、端っこで面白そうに表情を緩めていて、完全に観客として楽しむつもりのようだ。

生意気そうな少年たちが木剣を肩に担いで歩み出してくる。

人数は6、―――7人か。

まだ成長期の真っただ中なんだろうけど、すでに筋肉ムキムキで、顎先に薄く無精ヒゲを蓄えているけど、あれでも成人前。

日本人は若く見えると欧米人が言うのも良く分かる。

侮りを含んだ悪意のある目で睨め回す顔つきが気に入らないな。

反感を感じさせる目で見ている少女たちは、数人ごとに固まって傍観の姿勢を崩していないから、まだ様子見かな?

リーダー格っぽい少年が顎先を上げて口元を歪める。

「ルナリアお嬢様が、お相手をしてくれるんですかぁ?」

「ギャハハ!」

「おいおい。苛めてやるなよ」

横目で見ていたら、ルナリアの頭上に「♯」マークが貼り付いたのを幻視した。

周りの少年たちが囃し立てて、ゲラゲラと笑う。

へぇ? 承認欲求かな?

いや。これは自己顕示欲だな。征服本能と言い換えても良い。

いくらルナリアが幼いとは言え、封建社会で主家の現当主に舐めた口を利くとか頭の出来を疑うし、バカさ加減が笑えるけど、ちょっとムカついちゃったなあ。

私の気持ちに呼応するように胸の中で魔力がざわめく。

「・・・私を倒せたらね」

「あ?」

舐められた怒りに震えているルナリアが口を開く前に割り込んで答えてやったら、一斉に私を睨み付けてきた。

でも、敵兵や盗賊から本物の殺意を向けられてきた私にすれば、この程度の敵意は、そよ風みたいなもの。

「何だぁ? このガキ」

ガキは、お互い様だよね。

あなたたちは成人前になっても精神的に成長しないクソガキで、私たちは成長期を迎える前の、正真正銘のガキだけど。

少年たちだけでなく、屯している少女たちにも視線を飛ばす。

「・・・あなたたち程度じゃ物足りないから、全員で掛かってきてくれないかな? 何度も仕切り直すのは面倒だし」

「なに? あの子」

私に向けられる反感―――、悪意が強まったのを感じる。

挑発が足りない?

出ておいでよ。

それぞれのグループに目を留めてやると、目元を強くしてゾロゾロと歩み出て来る。

さっさと歩けよ。イラッと来るなあ。

「お前、オレらを舐めてんの?」

「・・・口の利き方も知らないクソガキなんて、舐める価値も無いよ。ね? ガキ」

筋肉に栄養を吸われて知能が発達していないガキなんて、馴致されていない動物みたいなものだ。

お返しに嘲る目で見てやったら、だらけて肩に担いでいた木剣の柄を握り直して少年たちは肩から下ろした。

「チッ」

「這いつくばらせてやる」

「・・・真面目にやらないと、死ぬよ?」

怒りを顕わにする少年少女たちに冷めた目を向ける。

見所が無いなら野放しにしておく方が危険だろう。

調教を受け付けない荒馬なんて害獣と変わらない。

本当に殺すことまではしなくても、このまま不安定分子になるなら戦えない体にするぐらいは許容範囲かもしれない。

コイツらは私やルナリアを暴力で従えようとしている。

お馬鹿な少年たちは兎も角、この少女たちは、なんで側近候補の選抜から漏れたのかと不思議に思っていたけど、これはダメだ。

大人たちによる選抜の時点で、まだ自分の力で他者の干渉を撥ね除けられないルナリアの傍に、こんな子たちを置けないという判断が有ったのだろう。