軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新たな芽吹き ③

傍系諸家の“現当主の人”たちとは、今までにも50人以上は顔を合わせている。

逆算的に読み取れば、奥様方や、その子供たちには、側聞だけで納得していない人たちが居る可能性が高い。

なるほど、なるほど。

私の予想よりも盛り上がっていたわけだ。

だったら私が「するべきこと」は決まってる。

元々、そのつもりだったけど、ショートカットできそうだ。

「・・・じゃあ、魔石を多めに持っていこうかな」

「動じないんですね」

「・・・その方が早いし」

アリアナさんのときと同じだ。

脳筋な人たちとは肉体言語で話した方が早い。

レヴィアさんが驚いたように目を丸くするけど、その目は笑っている。

私の言葉の意味を正確に理解してくれているようで、レヴィアさんも話が早くて助かる。

「人を集めさせておきますか?」

「・・・増員するピーシーズの選考が優先だけど、ついでに、”誰が相手でも立ち会いに応じる”って広めておいてくれると手間が省けるかな」

私のお願いに目を丸くしていたレヴィアさんが、ふっと微笑む。

「承知しました」

返事をしたのはレヴィアさんだけど、いつの間にかミセラさんの姿が見えなくなっていたので、恐らく、マーシュさんへの連絡をしに行ったのだろう。

うんうん。ミセラさんも話が早くて良いね。

ロス家の情報伝達方法が気になるけど、企業秘密的なものも有るのだろうから、ピーシス家の私が突っ込んで聞くのは良くないだろう。

私は別に、ロス家との関係は悪くしたいわけじゃないし、どうせ、ネタをバラした方法は別の手段に切り替えるのだろうしね。

騙すとかそんな話ではなく、万一の情報漏洩を考えて、私なら、そうする。

私の興味でロス家の手札を減らす意味なんて無い。

お茶を飲みながら黙って聞いていたルナリアから、呆れたような目を向けられる。

「また、やるの?」

「・・・うん。手っ取り早いからね」

今回は、どんな手で行くかなあ。

風ジェットバリアーは前に使ったし、同じ魔法だと芸がない?

防御術式は魔力の手でも事足りるだろうけど、目に見えないからインパクトが無いよね。

誰の目にも分かりやすく“見せる”のなら、視覚的なインパクトが欲しいなあ。

かと言って、身内を傷付ける意味は無いし、どうしよっかな。

ビジュアルで攻めるなら“火”魔法?

“蒼焔”が派手だけど、周辺の建物にまで影響が出るのはNGだな。

空気が乾燥した冬場の焚き火は、延焼の危険性が伴う。

防御しつつ“核”をポロリしない制御ができるかも怪しいのも、TPO的によろしくない。

じゃあ、“土”魔法?

威力には気を付けるつもりだし、落ち着いてやれば力加減で失敗することは無いと思うけど、どうしても、ポドック領での大穴を連想してしまう。

他人の領地なら兎も角、自分の領地で土地に悪い影響を残したくないから、“土”もNGか。

“水”魔法は?

地下水の見つけ方を経験した辺りから、水の存在を知覚しやすくなってる気がするんだよね。

お風呂で洗浄されているときに、排水口に流れ落ちていく水の場所が何となく分かる程度には、分かってしまう。

風ジェットカッターの元になったジェットカッターの再現も出来なくは無いと思うけど、危険すぎる?

“闇”魔法は使い方が分からないし、“光”魔法は攻守に使えない。

こうして考えると、私って引き出しが少ないな。

自分の発想力の貧困さは自覚が有るつもりだったけど、思っていた以上に選択肢が少ない。

マンガとかアニメとか、もっと見ておけば、イメージの幅が違ったんだろうか?

消去法でも“風”魔法が無難になっちゃうかあ。

「終わりましたよ。ルナリア様」

「ありがと! さあ、訓練に行くわよ!」

寝癖をねじ伏せて、ルナリアの髪を首の後ろで一纏めに縛り終えたレヴィアさんが、身支度の完了を告げて、ティーカップに残ったお茶をグイッと飲み干したルナリアが勢いよく腰を上げる。

「・・・ああ、うん」

「にゃ」

考えが纏まる前にルナリアの身支度が終わってしまったか。

思考から引き戻された私と、暖かいお茶でホッコリしていたノーアも席を立つ。

失敗を恐れてビビりすぎかなあ・・・。

技術の発展に失敗は付き物だけど、その失敗で信用を失っては元も子もない。

どこまでやるかが悩ましい。

仕方ない。道中で考えるか、その場のノリで当たるかだな。

「・・・みんな、ありがとう」

「いいえ」

「「勿体ないお言葉です!」」

労いにニコリと笑って返してくれたのはレヴィアさんで、感激したように返してくれたのはディディエさんとダーナさんだ。

ちょっと心配になってくる。

ヤル気があるのは良いことだけど、あんまり入れ込み過ぎると疲れるんじゃないかな。

肩の力を抜けって、おいおい言い聞かせて行くかなあ。

颯爽と扉へと向かうルナリアを追って、ノーアの手を引く私も扉へと向かう。

「「おはようございます」」

「おはよう!」

「・・・おはよう。お待たせ」

「にゃ」

廊下へ出たところで私たちの起床を待っていてくれたのは、運動用の衣服姿のアイシアちゃんとオーリアちゃんの二人だ。

運動用と言っても、体操着やジャージみたいな機能性に特化したようなものではなく、単に汚れても良い質素な衣服ってだけなんだけどね。

アイシアちゃんたちのように騎士様たちや兵士さんたちはラフな服装での運動が許されているのに、なぜかルナリアや私はダメらしくて、私たちは今日も乗馬服なのが解せぬ。

まあ、セリーナ様とお婆様からの命令でのことらしいから、余計な抵抗はしないけど。

今朝、迎えに来てくれたのは、この二人だけど、担当はローテーションになっていて日によって違う。

レヴィアさんを先頭に訓練場へ向かって廊下を歩きはじめると、伺うような視線と一緒に質問が飛んでくる。

「寝過ごしましたか?」

「・・・ううん。今朝はルナリアの寝癖が凄くて」

「そうでしたか」

体調を心配したのか、首を傾げるアイシアちゃんに答えると、オーリアちゃんと揃って安心したようにクスリと笑って納得してくれた。

ルナリアの寝癖は、いつものことだし。

「仕方ないわよ! 眠っている間のことなんて知らないもの!」

「・・・しっかりと睡眠を取る方が大事だから、良いんだよー」

「そうよね!」

不可抗力だと心外そうに言うけど、ヨシヨシしてあげると、ルナリアはコロリと表情を緩めてぽわぽわな笑顔になるからね。

ピーシーズとの、この辺りの遣り取りも、よく有る日常だ。