軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

拡大家族会議 ⑮ ※アンサンブルキャスト面

「どう変わると見る?」

「アマリリア様が回復に向かい、フィオレがカレリーヌ様を抑え込んで引き寄せた。私にも、ミリアにも出来なかったことだぞ」

ハインズの問いに、ハロルドよりも先にフレイアが口を開き、ハロルドが補足する。

「治癒魔法術師とスライム畑の計画で、“融和派”の取り込みの目も出て来つつある」

「帰路には“中立派”も引き寄せて見せたぞ」

ニヤリと笑うフレイアに、ハインズとマルキオが唸った。

「クロムハウトとドーンだったか。たかが盗賊討伐ひとつで一目置かせるとはな」

「“中立派”なればこそ、“利”があれば靡くか・・・」

媚びることのないウォーレスの男たちだからこそ、考えさせられるものが有るのだろう。

「ポドックも、だな。野営地の原野にフィオレが大穴を空けたときは、どうしたものかと思ったが」

「フィオレがか? 何をやっとるんだ・・・」

楽しそうに言うフレイアにマルキオが渋面を作る。

王都への道中に通過することがある中部地域の”中立派”領地と”保守派”領地だから、ハインズもマルキオもそれぞれの領主をよく知っている。

「3000頭の馬が水を飲みやすいようにと、地下水を汲み揚げようとしたらしくてな。街道沿いに新しい水場が出来て、ポドックは怒るどころか喜んでいた」

「大穴というのは?」

何のことは無いように言うフレイアに、上手く想像できなかったらしいハインズが怪訝な目を向けた。

「うちの領主館をスッポリと沈められるほどの大きさの縦穴だ」

「それはもう、大穴と言うよりも大地の陥没だな」

フレイアの言う「うち」というのは、ここレティアの領主館のことだ。

ハインズが呆れた声で言う通り、砦一つが水没するような大穴は、もう大穴ではないのではないだろうか。

大穴の報告を聞いたときの心境を思い出したのか、ハロルドが諦めの溜息を吐いた。

とはいえ、フレイアと同じく色々と規格外なフィオレの傍に、フレイアが付いていたのだ。

ポドックが問題視したなら、その場で埋め戻して見せたことだろう。

規格外に慣れて感覚が麻痺してきているようにも思うが、いちいち、そんなことぐらいで目くじらを立てたところでキリが無いと考えたのは、マルキオも同じだったらしい。

「フィオレの体に負担は無かったのか?」

「体に調子の悪いところは無いそうだし、問題は無かろうよ。“力加減を間違えて”大穴を空けるほどだ。ただ、ちょっと考えられん幅で威力が上がっているのは確かだな」

大穴を空けたこと自体は、もう、どうでも良いことなのだろう。

フレイアもマルキオも、ついでに言えばシェリアも、魔法術師というものは、術式の威力は大きければ大きいほど良いと考えるものだと、そんな魔法術師たちとの付き合いが長いハロルドもハインズもよく知っている。

記憶を探るようにマルキオは星空を見上げる。

「聞いたことの無い症状だな。思い付くことは有るか?」

「いいや、無い。あいつ自身が良く分かっていないようなんだが、王城の宝物庫に入った辺りから、何かの拍子に魔力が活性化するようになっているらしい」

首を振るフレイアに、マルキオが首を傾げる。

「宝物庫に何か有ったか?」

「いや。特に危険なものは無かったはずだが」

マルキオに目を向けられて、ハインズが首を振る。

まず最初に懸念するのは魔法道具や”呪物”による悪影響だ。

西方諸国から持ち込まれた呪詛系の魔法道具だけでなく、世の中には、人に害をなす、自然発生的に生まれた「呪物」と呼ばれる呪われた物品が存在する。

マルキオにも危険なものが宝物庫に納められていたような記憶は無いし、ハロルドも首を振っている。

「そう言えば、フィオレが、宝物庫で隠し扉を見つけたと言っていたな」

「宝物庫にか? 聞いたことが無いな」

記憶を探るフレイアの言葉に、ハインズも首を捻る。

先王陛下の時代から何度も宝物庫へ立ち入ったことがあるハインズも知らないものらしい。

「お袋殿にも聞いてみるべきか?」

「レティアの町よりも遙かに古い城だ。我らも知らぬものが有っても不思議は無かろうよ」

「それもそうだな。殿下が興味を持った様子だと言っていたから、自分で陛下に聞くだろう」

首を傾げるフレイアに、ハインズが首を振ってみせれば、フレイアはアッサリと思考を投げ棄てた。

王家に関わる公務から退いたフレイアが王城の施設を知ったところで、何の意味も無い。

「陛下には?」

「ヘイナーに手紙で報せておいた」

フレイアは既に手回ししてあるようだ。

マルキオにとっても、王城の施設よりも孫娘の方が関心事だ。

「それで、何かの拍子、というのは?」

「分からん。魔力に対する感覚が敏感になっているのだろうことは推測できたが、経過を見なければ何とも言えん」

マルキオの心配に娘は軽い調子で肩を竦めて見せた。

フレイアの答えに、再びマルキオが夜空へと視線を彷徨わせる。

「魔力に対して敏感に、か・・・。昔、お前も似たようなことが無かったか?」

「そうだったか? 覚えていないが」

本当に、記憶に無いのか、今度はフレイアが首を傾げた。

領地から離れて家を空けることが多かったマルキオよりも、妻のシェリアの方が詳しかろう。

魔法術式の研究家でもあるシェリアなら、記憶に残っているかも知れない。

「シェリアとは話したか?」

「その件はまだだな。フィオレの体に不調が見受けられないので有れば、優先度が低い」

マルキオの問いにフレイアは首を振るが、「優先度が低い」などと言っている時点で興味は引かれているのだろう。

フレイアの返事にマルキオも小さく笑っている。

「確かにな。儂も気を付けて様子を見ておくこととしよう」

「ともあれ、領主のポドックが喜んでいるのだから、大穴のことで揉め事にはなるまい」

子供に関する父娘の語らいが一段落付いたと見て取って、ハロルドは大穴の話を締めに掛かる。

この場にシェリアが加われば、半日経っても議論は終わらない。

どのみち、数日内にどこかで議論を始めるのだろうし、今、寒空の下で行う必要など無いのだ。