軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ファーストインパクト ⑩

「皆、静まれ!!」

辺りの空気がビリビリと震えるようなマリッドさんの声に、人々がピタリと静まった。

さてさて、引き立て役の守備兵諸君。

釣りエサを美味しく仕立ててね?

ステージ上に跪かされている守備兵たちを見下ろして―――、ほとんど同じぐらいの目線の高さだけど見下ろして、出来るだけ厳かな声で問う。

「・・・何か申し開きは有りますか?」

「俺たちは、そこに居るセーガン・コーニーがコーニッツ子爵を承継したと聞かされて、関所で10倍の通行税を徴収しろと命じられました!」

もっとだ! 行け! 他の人たちも続け!

目力で促すと私の意志が伝わったのか、守備兵たちが口々に言い募り始める。

「まさか偽称だったとは、知らなかったんです!」

「命令に逆らえば、俺たちは領軍を解雇されます!」

うむうむ。良い感じだよ。

茶番だけど、最後までちゃんと付き合ってね?

「・・・あなたたち。悔いていますか?」

「「「「「はいっ!」」」」」

私はお遊戯会レベルの寸劇だと思っているけど、自分たちと家族の命が掛かっている守備兵たちは、さぞや必死なことだろう。

そんな茶番を見守っている領民たちの顔に同情的な表情が混じり始めている。

「・・・そうですか。次からは、おかしな命令を受けた場合は情報を確かめてから従いなさい。ただ、罪は罪です。罰として、あなたたちには苦役を課します。追って沙汰が有るまで家で謹慎していなさい」

「「「「「はいっ! ありがとうございます!」」」」」

苦役を課すって言ってるのに、そこまで喜ぶのか。

タダでスライム畑を開墾して貰おうと思ってるだけだから、命に関わる罰には、しないけどね。

今の言い方だと解雇もしないって受け取るだろうし。

まあ、小物を苛めるよりも、カレリーヌ様も苦しめられた「身中の虫」を駆除する方が先だから。

場の空気が決定的になろうとした矢先に、焦りを覚えたらしい「魚」の皆さんが食い付いた。

「待ってくれ! こんな平民の言い逃れを信じるのか!?」

「そうだ! セーガンの言い分も聞くべきでは無いのか!」

「平民の罪人を許して騎士を貶めるのか!」

来た来た。

人垣を押し退けて、贅肉を弾ませた男たちがステージ前まで押し出してくる。

さっきお母様を取り囲んでいた連中だ。

ステージ上を見上げている男たちからは見えていないのだろうけど、ピーシス隊の騎士様たちが包囲を始めている動きがステージ上からは良く見える。

ステージ上から首を傾げて男たちを見下ろす。

「・・・あなたたちは?」

「コーニッツ子爵家傍系のコリン男爵だ!」

はい、アウト。

ずっと私たちの話を聞いていたはずなのに、このバカな人たちは、一体、何を聞いていたのか。

「・・・あなたたちもですか?」

「そうだ! ここに居る他の者たちは、皆、コーニッツ家傍系の男爵家と騎士爵家当主だ!」

言質を取って釣果を拡大するために、わざわざ訊いてあげた。

私を子供だと舐めたのか居丈高に言い放ち、人の話を聞いていないオジサンたちは偉そうに頷いている。

ホント、馬鹿なのかな?

ここまで勘違いした人たちを残しておいたら、問題を起こすに決まっている。

大体、釣れたと思うので、そろそろ締めに掛かろうか。

「・・・ああ。ただの平民ですね。領主で有る貴族家当主に対して口の利き方を気を付けた方が良いのでは無いですか?」

「へ、平民だと!?」

お母様にも、さっき言われてたよね?

ちょっとは頭を使って言われたことの意味を考えれば良かったのに、家族まで道連れになっちゃったね。

「・・・あなたたちは平民ですよ? 領地貴族家傍系の下位貴族家は、領地の統治上、領地貴族家の推挙を国王陛下が承認なさったもので、推挙人である領地貴族家が叛逆罪で廃爵されたのに、主家を諫めなかった被推挙人の下位貴族家が、そのままの爵位で居られるわけが無いでしょう。当然、あなたたちも失爵しています」

「失爵・・・だと・・・?」

「ばかな・・・」

何で、そこで驚くんだろう?

「・・・誤解があったようなので、今までの私に対しての暴言は聞かなかったことにしてあげますが、次はありませんよ? また、今まで前領主からあなたたちに委任されていた統治権限は、前領主が捕縛された時点で全て消滅しました。私は平民であるあなたたちに委任しません。今年の収穫物から徴税したものは、全て領地へ返納しなさい。今後、私の領民から税を徴収しようとした場合、重罰を課します」

わざとらしく困った顔で首を振って見せた後、宣告する。

「そ、そんな! それは困る!」

「お、横暴だ!」

何が横暴なんだか。

口々に言い募る姿に大きく溜息を吐いてみせ、元男爵たちを指して宣告する。

「・・・口の利き方に気を付けるように、と、言ったばかりなのですが・・・。あと、お忘れのようですけど、私に対しての暴言を一度は許しましたが、爵位の偽称は別です」

「―――、はっ! しまっ・・・!」

自分が意気揚々と地雷原でスキップしていたことに気付いた元爵位持ちの皆さんが、サッと顔色を変えた。

「・・・この重罪人たちを捕縛してください」

「「「「「はっ」」」」」

ピーシス隊の騎士様たちが喜々として襲い掛かり、元男爵をはじめとした男たちを路面に押し倒して取り押さえる。

「これは罠だ!」

「卑怯だぞ!」

同じ釣るなら釣果は最大限にしないとね。

投げ付けられる非難と悪態を聞き流しつつ、マリッドさんに訊いてみる。

「・・・領主に対する不敬罪だと、刑罰はどの程度ですか?」

「領主の権限の内ですので、本人は死罪でも」

家族までは処理できない、と。

厳しい表情を作って答えるマリッドさんの目は笑っている。

「・・・そうですか。爵位を偽称した方々がどうなるかは言うまでも有りませんが、不敬罪の方々は、死罪と財産没収と、どちらが良いですか? 選ばせてあげます」

「横暴だ!」

「そ、そうだ!」

ジワジワと煽れば煽るほど、爵位偽称まで明言しなかった連中も次々に掛かってくれる。

横暴も何も、封建制度では領主が法律みたいなものなんだから、子供だと舐めて油断する方が悪い。

「・・・はい。捕縛」

「「「「「はっ!」」」」」

長年のストレスを発散できるピーシス隊の騎士様たちは、飛び掛かりながら笑みを隠せていない。

「うわ、止めろ!」

「何をする!」

全部は釣れなかったかな?

終始、黙っていた人も何人か残ってるし。

ミセラさんたちなら釣果を判別できるだろうか。

「・・・うーん。どの程度、釣れましたか?」

「傍系は、ほぼ全員ですねー」

そっか。ほぼ目的は達成できたのか。