軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

王城・地下探検! ⑥

「・・・西方から王国まで来てたのかあ。会ってみたかったかも」

「そうですわね。王国へ、いらしたのは、100年ほど昔だと聞いていますけれど」

「・・・召喚された20年後ぐらいに王国へ来たの?」

へえ? 何歳で召喚被害者になったのか知らないけど、いくつもの軍事知識を伝えたと聞いたはずだから、ちゃんとした軍人教育を受けた後に召喚されたんだよね?

軍人さんって、体力勝負だろうから、まだ若かったはず。

大卒ぐらいのイメージだとすれば、その20年後だと40歳代の半ばぐらいの頃かな?

「“魔の森”へ腕試しに来られたそうですわ。その後、二度と西方諸国へ帰らなかったそうですから、“腕試し”という理由が、どこまで本当だったのかは分かりませんわね」

「・・・神教会と縁を切るための方便だったと?」

歴史上、日本は支配地域で同化政策を採ることが有っても、奴隷制度を敷いたことが一度も無かったからね。

日本人の感覚なら、神教会の在り方を嫌った可能性は高いと思う。

30年ぐらいに一度の召喚で得た人材を、神教会が簡単に手放すとは思えない。

神教会じゃなくても囲い込もうとするだろうし、束縛を嫌った可能性も有るんじゃないかな。

120年後の現代日本人と、どの程度、感性が近いかは分からないけど、身勝手に拉致しておいて、手駒として戦えなんて戦争を押し付けられたら、私なら隙を見て逃げるだろうし。

テレサが小さく肩を竦める。

「さあ、どうなのでしょうね? 一応、本当に黒龍山脈の麓までは行かれたそうですけれど、“この方は”黒龍山まで辿り着けなかったそうですわ」

「・・・黒龍山脈! それって凄いんじゃ!?」

ドラゴンまで目と鼻の先じゃん!

この人に、俄然、興味が湧いてきたよ!

「史料にある記述では、歴代の勇者で“二番目に強い”方だったとか」

「・・・二番目?」

それは新情報だな。

いや。ついさっき、”この方は”って言ってたっけ。

人差し指を立てて知識を諳んじるテレサは、ちょっと得意げ。

こういうテレサは初めてかも。

「歴代で最も強かった勇者は500年ほど昔に召喚された方だったそうで、その方も、この方も、召喚される前から兵士だったそうです」

「・・・召喚されたときから強かったのかな」

兵士ってことは、元々、基礎体力がしっかりしてたとか、戦闘経験が有ったから、とか?

ウォーレス領の例で考えれば、覚悟の違い、なんて部分は有りそうかも。

「きっと、そうなのでしょうね。対魔族大戦で連合軍を率い、黒龍山脈を越えて魔族領域まで攻め込んだ、唯一の勇者ですから」

「・・・ふああ。強い人だったんだねえ」

唯一の、か。勇者だからって、みんながみんな、強いわけじゃないんだな。

対魔族大戦といえば、レティア卿が従軍した大戦争だったよね。

同じ戦争に従軍していたのなら、レティア卿とも面識が有ったのかな?

「嘘か本当か、黒龍山にまで到達して、黒龍王に会ったと伝説が残っている方ですから」

「・・・黒龍王・・・? えっ!? ドラゴンに会ったの!?」

マジで!? 私の人生目標の先駆者じゃん!

お母様が言ってた、人類棲息圏から一番近い場所に居るドラゴンのことだよね!?

「真偽は分かりませんよ? 私に分かるのは、“そう伝わっている”ということだけです」

「・・・へええ。凄い人が居たんだなあ」

日本の天皇家の始祖たる神武天皇も真偽不明だと言われて、一部の学者さんの間では神話扱いなんだっけ。

その勇者さんも偉業すぎて神話扱いされてるのかも。

「そう言えば、冒険者ギルドには、その勇者が残された記録を元に作られた、魔獣の棲息分布の資料が有ったはずです」

「・・・そうなの? 見てみたいなあ」

物証が有るってことは、最強勇者の実在は確認されているんだな。

ウォーレス家が受け継いでいるレティア卿の地図みたいに、冒険者ギルドも同じ時代の史料を残してるのか。

「今は、まだ難しいでしょうけれど、叔父様がギルドを掌握すれば、見せていただけるかも知れませんね」

「・・・おおっ、そっか。じゃあ、騎士団長閣下が有利になるように、私も協力しなきゃ」

それは、ぜひとも冒険者ギルドを手中に収めて貰わないと!

「エゼリアさんが叔父様と婚姻を結ばれるのなら、協力する必要が有りますね」

「・・・そうだった! エゼリアさんのためなら、全力で協力するよ!」

ウォーレス領から、どんな支援が出来るか考えないとね!

「きっと、叔父様も喜びますわ」

「・・・よぉし。頑張るぞー」

コロコロと笑っているテレサに乗せられてる気もするけど、私の目的とも一致するんだから問題ナシ。

私は私に出来ることをするだけだ。

騎士団長閣下に、しっかり者のエゼリアさんかあ。

私も冒険者にされそうな気もするけど、情報を貰えるなら、それはそれで有りかな。

テレサの手の上で転がされている私を現実に引き戻したのは、切羽詰まった感じのルナリアが私を呼ぶ声だった。

「フィオレー! ちょっと来てー!」

「・・・およ?」

テレサと2人で顔を見合わせる。

ルナリアにはお母様が付いて監督しているはずだけど、どうしたんだろう?

「行きましょうか」

「・・・うん」

テレサに促されて書架の間から顔を出す。

「・・・どうしたの?」

「手伝って!」

閲覧台の向こう側に並んでいる背丈の低い棚の、さらに向こう側から、ぴょこっと涙目のルナリアが顔を出した。

「・・・手伝うって、何を?」

「レティア様の剣が分からないの!」

ドワーフ族が打った剣、ってやつのことだよね?

ルナリアは、結局、探してるのか。

お母様が付いているんだから、お母様に訊けばいいじゃん。

お母様は現物を見たことが有ると思うんだよね。

そこに有ると分かっていて、よく分からない謎が有るものに、お母様が興味を示さないわけがない。

のんびりと閲覧台に背中を預けているお母様を見ると、いたずらっぽくニヤッと笑う。

「・・・うん?」

「当ててみろ、と言ったんだ」

ああ。そういうことか。

お母様のことだから、どれだけ「剣」というものを理解しているか試したとか、そんな感じなのだろう。

「・・・でも、私、剣なんて分からないよ?」

「いくつかの候補に絞れるだけで良いから!」

即答で、再びルナリアが棚の向こう側から、ぴょこっと顔を出す。

言うだけ言ったら、シュッとルナリアの顔が棚の向こう側へと引っ込んだ。

何だっけ? こんな野生動物がいた気がする。

プレーリードッグだっけ?