作品タイトル不明
王城・地下探検! ①
王命でテレサの護衛騎士に据えられたアリアナさんを、私が回収するわけには行かなくなったので、アリアナさんはマーミナさんとマーリカさんの二人に担がれて、先導メイドさんの先導で回収されて行った。
行き先は、騎士団の医務室? らしくて、王宮付の治癒魔法術師さんの職場だそうだ。
本当なら治癒魔法で治してあげたかったんだけど、騎士団の衆人環視の中で治癒魔法を見せない方が良いかと思ったんだよね。
同じ理由でテレサもお母様に止められたみたい。
マーミナさんに回復薬を渡して有るから、アリアナさんの意識が戻れば、容赦なく口に小瓶を突っ込まれて回復することだろう。
どれだけ怒っていても、実姉のアンリカさんが後遺症が残るような傷を実妹に負わせるとは思わないし、お母様が全幅の信頼を置いているアンリカさんの技量を私も信じている。
クラリカさんとメイリスさんの二人は、騎士団へ「ご迷惑をお掛けしました」と謝罪に行く名目で、顔を売ると同時に、情報収集に向かった。
これは、これで、私たちが王都に居て人手に余裕が有る内に進めて置きたい作業だから、テレサの承諾を得て私がお願いした。
その結果、テレサの護衛騎士がテレサの傍に一人も居なくなってしまったので、引き続き、テレサは私たちと行動を共にしている。
私たちと一緒に居れば、ピーシーズの残りの5人も一緒だし、何より、お母様たちが居る。
私たちにとって、お母様たちの傍が最も安全な場所なのだから、当然の措置だよね。
なお、任務に就いたばかりの5人がテレサの傍を離れている状況は、ピーシス騎士団に一波乱が起こることを想定済みだったお母様が、王様から叱責を受けないように根回し済みらしい。
そうして、ハロルド様とお母様と一緒に昼食を摂りに5階層へ向かった私たちは、昼食後にテレサの案内で王家の宝物庫へと向かうことになった。
王都で片付けなければならない案件は着々と片付いて行っているので、一緒に居られる時間も残り僅かだと認識しているテレサが、案内役を買って出てくれた。
ハロルド様はヘイナーさんにアリアナさんたちのことをお願いしに行ってくれるそうで、そそくさと一人で王都邸へと行ってしまった。
「宝物庫」と聞いた途端に王都邸へ行かなければと思い出していたのは、きっと何かの偶然なのだろう。
宝物庫へ行く目的は、王様から下賜を約束されたルナリアの剣を選ぶためだ。
宝物庫を見せて貰っても何が何なのか分からないだろう私たちへの宝物の解説は、王国屈指の知識人で有るお母様が務めてくれることになっている。
1000年以上の歴史が有る王国の宝物庫だよ。
下手な博物館や美術館の展示物を見に行くよりも、遙かに価値が有るんじゃないかな。
私も一緒に見せて貰えることになったから、めっちゃ楽しみ。
私自身には何の責任も無い見学ツアーだからこそ、気兼ねなく楽しめる。
宝物庫で愛用のサーベルを選んだことがあるお母様によると、王家の宝物庫って王様の部屋とかに有るのかと思ったら、「入口は」6階層の王族居住区画に有るけど、宝物庫は王城の地下に有るらしい。
その「入口」も、先導メイドさんに先導されて、結構、歩いたから、どの辺に有るのかサッパリ分からない。
さらには、窓も特徴も休憩場所も無い、ただただグルグルと降りていくだけの螺旋階段だ。
先導メイドさんは入口までしか先導してくれなかったから、特徴の無い入口の扉から先は「私たちだけで行ってこい」、ということらしい。
行くのを嫌がってる、ってわけじゃ無いよね?
私たちとは、お母様とテレサとルナリアと私の4人で、ノーアとピーシーズは先導メイドさんが5階層の待機室へ案内してくれている。
お母様を先頭にした一列縦隊で、魔法道具の明かりで照らされた螺旋階段を降りていく。
「・・・で。この階段、どこまで降りるんだろう?」
目が回ってきた上に、あまりにも景色が単調で辛くなってきた。
口をついて出た疑問に、お母様が肩を竦める。
「さぁな。私は深さを気にしたことが無かったから、知らん。気になるなら、帰りに階段の段数でも数えてみればどうだ?」
「・・・そこまで気になってるわけじゃ無いけど、帰りは上るんだから疲れそうかな」
終点まで行くだけだから道中の距離は気にしたことがなかったと?
眉尻を下げる私にテレサが「フフフ」と暗い笑い声を上げる。
「気付いてしまいましたか」
「脚がパンパンになるぞ」
何のことも無い風に言うお母様にルナリアが目を剥く。
「ええ~! そうなの!?」
「目も回りますし、三度か四度、休憩しないと階段を上りきれませんから」
厳しい現実を白状するテレサは、遠くを見るように目の焦点が合っていない。
すでに、結構、降りているはずだけど、階段はまだまだ続きそうだなあ。
「・・・だと思ったよ」
「なんで、そんなところに!?」
王城の6階層が10階建ての高さが有るとして、宝物庫が地上から同じぐらい深い地下に作られているとすれば、20階建ての階高を階段で上り下りすることになる。
そりゃあ、目も回るだろうし、ドレスを着て3~4回の休憩で上りきれるなら、頑張ったと思うよ。
「宝物庫なんて、頻繁に入る場所では有りませんし?」
「理由は知らんが、そこに宝物が有ると分かっていても、運び出すのが大変だと知っていれば、盗みに入らんのではないか?」
ああ、なるほど?
一定以上の信憑性は有りそうだね。
でも、イマイチ分からないのが、この螺旋階段、反時計回りなんだよね。
普通の螺旋階段は時計回りなんだよ。
現代日本だと螺旋階段はオーダーメイドだから、右巻きも左巻きも関係無かったはずだけど。
螺旋階段が時計回りなのには理由が有って、城塞に籠もる防衛側にとって螺旋階段も防衛設備の一つだから。
昔読んだ本に書いてあって、なるほどなあ、って感心させられた記憶がある。
下層階から攻め上がってくる敵兵に対して、上層階で食い止める守備側が剣を振りやすいようにと考えられている。
大昔から人間は右利きの人が多かったようで、多くは右手に剣を握る。
右手の剣を振ろうと思えば体の右側に空間が必要になる。
螺旋階段というものは、構造上、円の中心に柱が有って、柱から放射線状に踏み段が設置される。
時計回りだと上層階へ上りながら剣を振ろうとすると、柱が邪魔になって剣が振れないのだ。
よって、下層階に向かって剣を振る守備側が優位に戦える。
ところが、この螺旋階段は反時計回りになっている。
これは宝物庫側が守備側だということでは無いのだろうか?
地球の考え方とは違うのかも知れないし、そこは何とも言えないか。
お母様が言うように、盗みに入っても運び出すのが難しい場所に大切なものを保管した説が濃厚なのかな。