軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

それぞれの対決 ③

ロンドベール家って冒険者ギルドに利権を持っていて、魔獣素材の流通で中抜きしてる可能性が有るんだよね?

王家の親戚だからか、王国にとって不利益でさえ無ければ、利権を持っていること自体は罪では無いから見逃されてきた?

”中立派”のボスって話だから、多数の貴族が反発しそうで手を出せなかったのかな?

神教会の教会? が有るのがロンドベール領で、その教会を力尽くで潰せば侵略戦争の名目になりかねないから手出しし辛いっていうのは分からなくも無いけど、目立ってしまった以上、ロンドベール家も動きづらくなっていたはず。

そのロンドベール家が、睨まれているタイミングで“魔の森”に面した“融和派”領地の居座りに協力する?

あれ? 待てよ?

王都へ来る前、レティアの市場でテレサの“記念品”を買った、魔法道具屋のハンスの顔を、不意に思い出した。

推論というか、ちょっと閃いたんだけど、それって、派閥うんぬんの問題では無く、神教会への魔獣素材の流通経路を確保したいんじゃ?

あのハンス。

私がメイドさんに磁石を買いに走って貰った直後にはセリーナ様が接触したようで、脅したのか、それとも抱き込んだのか、セリーナ様の情報源の一部として組み込まれたっぽいんだよね。

ハッキリと聞いたわけじゃないけど、私が興味を示した“雷石”が私の手元に届けられて、私のお小遣いの残金が減っていないことから、ウォーレス家としてハンスに何らかの接触をしたことは簡単に想像が付いた。

たぶん、ダブルスパイだと思うけど、有益な情報が得られるなら、それはそれで構わない。

セリーナ様なら、渡す情報の管理は絶対にする。

西方の間諜として使われているハンスがウォーレス領に入り込んだ目的が、テレサや私の情報を得ることでは無かったと仮定すれば、その目的は、一体、何だったのか。

もしかすると、魔獣素材の産地直送ルートの開拓が出来そうな領地を探りに来ていたのでは?

ハンスがウォーレス領を出た後、”魔の森”に沿って北上していたりすれば、かなり濃厚じゃないかな。

冒険者ギルドを通さずに魔獣素材を流通させるなら、その役割を担うのは商人のはず。

利益に繋がりそうなら商人は相手を問わないだろうし、情報を探りたい側は、目立たない範囲で需要が有る特別な商品なら、仕入れの便宜を図るぐらいするだろう。

ハンスの取り扱っていた商品が低スペックの魔法道具だったのだから、神教会関係との繋がりが有るのは確実なんだし。

これは、大人たちの意見を聞いてみるべきだな。

「・・・お母様」

「何だ?」

膝に座らせたノーアを撫で繰り回しながら、とても真面目な顔でお母様が返事をくれる。

表情と行動のミスマッチさに笑ってしまいそうになるけど、グッと堪える。

「・・・神教会は魔獣素材の買い付けに、何らかの役目を担っていますか?」

「直接は関与していないだろうが、冒険者ギルドが取引している素材の卸し先には、影響力を持っているだろう」

卸し先―――、商人? 商会かな。

「・・・もしも、ですが。エンツェンス家という“融和派”領地が今のまま残って、バルトロイ様の家が“融和派”への監視を緩めれば、ロンドベール家は“魔の森”から西方諸国への、魔獣素材の新しい流通経路が確保できるのでは?」

大人たちの顔を見回しながら、推論をぶつける。

「新しい経路? 王都を経由せず流通させる、という意味か?」

「・・・王都、というよりも、“冒険者ギルドを通さずに”と考えれば、神教会は魔獣素材の流通で、王国の監視の目が厳しくなるのを逃れられるのではないかと思ったのです」

騎士団長閣下の問いに頷くと、大人たちが、揃ってギョッとする。

今は、ウォーレス領からの輸出用魔石は出荷をストップしている。

ミリア叔母様が動いた結果か、ウォーレス領からいくつかの領地を北上した場所にあるファーレンガルド領も、輸出用魔石の出荷をストップしたと聞いている。

周辺の領地からも岩塩の対価として輸出用魔石を受け取っているような話も聞いた気がするから、少なくとも数割程度は西方諸国への輸出量が減っているものと推察できる。

ハンスは、その状況を打開するための情報を集めようと、神教会か、あるいはロンドベール家が送り込んだ間諜である可能性は無いだろうか?

ハンスは西部国境地域の出身で、ロンドベール家と繋がりが有った”融和派”領地の出身だから、ロンドベール家が間接的に動かすことは可能だったはず。

王国が輸出した魔石が最終的に行き着く先は、魔法道具を生産している神教会の支配地域だ。

王国が他国と戦争中で有っても、また、王国が魔法道具の輸入を断ったとしても、塩の輸入を止めない限り、何れかのルートで魔石は輸出されるのだろう。

そして、流通ルートというものは、複数有れば、有利な条件のルートへと比重が移るものだと推測する。

商売として考えれば、安く買えて原価を抑えられるルートを選ぶのは当然だからね。

ただし、背に腹はかえられない。

戦争になって有利な条件のルートが使えなくなったなら、不利な条件のルートでも使わざるを得ない。

でも、それでは美味しくない。

美味しくないなら、美味しいルートを作ろうとするのは当然の反応では無いだろうか。

そうでも無ければ、欲を出して原産地に侵略を仕掛けてきたりしない。

だからこそ、流通阻害で王国を揺さぶろうとしたのだ。

でも、西部国境地域の内戦に、ちょっかいを出したせいで、王国は独自の岩塩鉱山を開拓し、塩の輸入量を減らす結果になってしまった。

取引量の低下。つまりは、代価となる魔石輸出量の減少が起こってしまったのだ。

藪を突っついて自業自得の結果になったからと、大人しく諦める連中だろうか?

私は、そうは思わない。

失敗したばかりで動けず、それでも諦められないとき、かの連中は、どう動くのか。

王家や王宮の意向で影響を受けにくいルート。

いわゆる産地直送ルートの構築だ。

旧ルート関係者を排除して新規開拓したルートなら、利益の中抜きは、新たにルートに組み込んだ産地側からでも消費者側からでも、好きにキックバックやリベートを取れるんじゃないだろうか。

表に出ない利益なら、王家から睨まれている状況でも目立たずに儲けられる。

「今回の内戦で西部地域の“融和派”に組みしたことで、ロンドベールは降爵と冒険者ギルドの利権を失うことを予想していたと?」

「・・・それは分かりません。でも、手を貸した東部地域の“融和派”に“貸し”が有れば、王家から見えない形で賄賂を貰えるでしょう。同様に、神教会側からも流通経路開拓に貢献した見返りで、賄賂が貰えるんじゃないかと」

「冒険者ギルドを通さずとも、領地間の関所を通る時点で王国へ支払う税は発生するぞ? 冒険者ギルドを弾き出した程度では、それほどの利益は出まい」

「・・・流通量を隠せるのなら、どうですか?」

「隠す、というのは?」

「・・・流通経路に有る領地が、流通量を過少申告して王国に支払う税金を減らせば、三者三様に利益が有って、過少報告に対する見返りが税収よりも多ければ流通経路になる領地にも利益が有って、損をするのは税収が減る王国だけになります」

頭痛を覚えたのか、王様がこめかみを揉んでいる。

「・・・元々、違法な商品―――、奴隷売買の経路を持っていたのだから、産地直送経路の構築は不可能では無い気がします」

「そこで、邪魔なバルトロイに暗殺者を差し向けたか」

「ロンドベールが神教会に繋いで暗殺者を手配させたわけだな」

「そういった脱税の手も有るか」

「産地直送ね・・・」

騎士団長閣下とハロルド様、王様とカレリーヌ様で、違う反応が返ってきたね。

論理構築的におかしな部分は無いと思うんだけど、納得が行かなかったかな?

「「「「うぅ~ん・・・」」」」

騎士団長閣下とハロルド様だけでなく、王様とカレリーヌ様まで腕組みで唸っている。

「今まで出てきた推考の中で、最も説得力は有るな」

「ああ。他に推察が思い付かない程度には説得力があるように思う。だが―――」

ハロルド様に応じた騎士団長閣下が、難しい顔で王様に目を向ける。

眉間を険しくしたカレリーヌ様も王様に目を向ける。

「腑には落ちたが、ロンドベールを潰すには弱くないか?」

「ええ。神教会を締め上げて吐かせることが出来ない以上、言い逃れ出来るでしょうね」

お二人の視線が集まった王様は、こめかみを揉み続けながら深い溜息を吐く。

「王国内から神教会を追い出すにも弱いな」

「本当、忌々しいことにね」

カレリーヌ様は、口にした言葉通り、心底、忌々しそうに顔を顰めている。