作品タイトル不明
猫耳ニンジャ爆誕 ⑯
『・・・さ~て、問題。ノーアの“ノ”の字はどれかな?』
『これ』
ノーアが小さな手でマス目をタシッと叩く。
とても可愛い猫パンチだ。
ノーアが包まって寝られるぐらい大きな羊皮紙で作り直した大陸統一文字の五十音表はとても丈夫で、ノーアが乗っかって動き回っても破れない。
動物的本能が強いのか、体全体を使って遊んだ方がノーアの覚えが良い気がしたので、地球で大昔に流行ったツ〇スターゲーム的なイメージで作ってみた。
1メートル定規みたく長いモノサシは手元に無いから、碁盤目状のマス目では無く、花瓶の底を使って丸形のマスを50個以上も描きまくって、ルナリアたちが眠った後の夜中に数時間がかりで作った五十音表だよ。
眠かったし、ノーアのために、めっちゃ頑張った。
ツイス〇ーゲームというのは色違いの”標的”がたくさん描かれたシートの上で指定された色を両手足で押さえて全身運動で遊ぶ玩具だ。
他者に命令して徐々に珍妙な体勢になっていく参加者を集団で嘲って楽しむという、サディスティック精神を養う高尚なゲームだね。
悪意ある解釈なのは気のせいだ。
かつての私は、ぼっちだったが、今の私にはノーアという可愛い妹ができて、妹に教えることに幸せを感じているの居るのだから、心が浄化された私に悪意なんて有るわけが無い。
まあ、今やっている語学勉強は、〇イスターゲームとは全く関係無いルールなんだけど。
『・・・よく出来たね! えらーい!』
『にゃ』
思う存分、ノーアを撫で回して褒めた後、ノーアが開けた口に一口サイズにカットした干し肉を放り込んであげる。
正解したら褒められまくって美味しい干し肉が食べられるので、ノーアの学習意欲と食欲もマシマシ。
ノーアを思う存分、撫で回せて、ノーアも幸せそうに干し肉を食べているので、私も幸せ。
Win-Winってやつだよ。
監督役で立ち会ったお婆様には私がノーアとルナリアを可愛がりたいだけだと見破られたけど、遊んでいるようで問題無く勉強になっていそうだと安心したのか、監督役をピーシーズに任せて領主執務室の手伝いに行ってしまった。
なお、家庭内における政治的な理由により、「お爺様」・「お婆様」・「叔母様」と最優先で身近な人の呼び方をノーアに王国語を覚えさせたので、大人たちのノーアに対する評価は上々である。
疲れて戦場から帰って来たお母様を、ノーアにも「おかえりなさい」ってお出迎えしてあげて欲しいしね。
ハインズ様もセリーナ様も一緒くたに「お爺様」・「お婆様」なのだが、お二人とも拒絶するどころか相好を崩している。
なんだかんだで、ウォーレス家系の人たちは子供に甘いから、ほっこりする。
ハロルド様の呼び方をノーアにどう教え込むかは悩ましいところだけど、取りあえずは、アレイオス叔父様と同じく「叔父様」かな。
さてと、次はウズウズした感じで「待て」をしているルナリアの順番だ。
「・・・ルナリア。ノーアの“の”って言ってみて」
『ノ!』
「・・・よく出来たね! えらーい!」
「う、うん」
私に撫で回されるのは、いつものことだし褒められるのは大好きだけど、干し肉の切れ端を口に放り込まれるのは「餌付け」だと早々に看破したルナリアは、微妙そうな表情で干し肉を受け取る。
この語学勉強のルールは、西方語での会話なら意思疎通が可能なノーアには西方語で問題を出して、ノーアは王国語で答える。
王国語が母国語のルナリアには王国語で問題を出して、ルナリアは西方語で答える。
ルナリアの次は再びノーアの順番。
『じゃあ、ノーアの“ー”の字はどれかな?』
『これ』
『・・・ヨーシヨシヨシ! えらーい!』
『にゃ』
『・・・それじゃあ―――』
「ちょっと待って。私の順番じゃないの?」
「・・・ええ? だって“ー”って、ただの横棒だよ?」
「ぶー」
ノーアは統一文字の勉強だけど、すでに読み書きが出来るルナリアに文字の勉強は必要ない。
“ー”なんて子音を伸ばすだけだから文字単体の発音なんて出来ないしね。
膨れて不満を表明するルナリアを見て、テレサが小さく口角を上げた。
「私は混ぜていただけませんの?」
「・・・テレサは、大体、喋れるよね?」
「「ぶー」」
一緒に膨れてみたかっただけだな。
参戦してくる前にニヤッと笑ってたの、見逃して無いよ。
素の感情を表に出して話せることがテレサは嬉しくて楽しいらしい。
王宮って場所は、どれだけ不自由で息苦しそうなのか。
お母様が王宮を悪し様に言う理由が分かる気がする。
元々、私は「お姫様」なんて肩書きに憧れも羨望もして居なかったけど、不憫だなあ。
せめて、私とルナリアだけは、テレサが素のままで話せる相手で居続けてあげよう。