作品タイトル不明
猫耳ニンジャ爆誕 ⑫
「ルナリア。フィオレ」
「・・・はい」
「えっ? わたしも?」
「ハロルドとフレイアの帰還次第、お前たち二人には、それぞれの家督を継いで貰う。これは、一族の長で有る儂の決断で有り、ウォーレス家、ピーシス家、両家、現・当主の決断で有る。国王陛下の了承も戴いているから、決定事項だ。良いな?」
「・・・承知いたしました」
「え? あ、は、はい」
厳かな声に頭を下げると、ルナリアも私に倣って頭を下げる。
お母様から宣言されていたけど、思っていたよりも早かったな。
こんなに早いタイミングでお母様の跡を継ぐことになるとは思っていなかった。
不安が無いと言えば嘘になるけど、私一人で背負うわけじゃない。
ルナリアが居て、お母様とハロルド様が居て、お爺様とお婆様が居て、ハインズ様とセリーナ様が居て、叔母様たちが居て、ピーシーズのみんなが居て、エゼリアさんたちが居て、ワールターさんが居て、領主館に勤める人たちが居て、町の人たちが居て、私の周りには本当に沢山の人たちが居る。
私たちの事情にノーアを巻き込んでしまうことになるけど、ノーアのことは、私がしっかり守っていこう。
「殿下も、そのおつもりで。家督を継いでしまえば、この二人に、これまでのような自由奔放を許すわけに行かなくなります」
「領主となれば、執務が有りますものね。承知いたしましたわ」
テレサは頷いて微笑むけど、寂しそうな心の裡が隠し切れていない。
そう遠くない未来に離ればなれになるのは確実だけど、私たちは友だちで同志だ。
隣りに座っているテレサの肩に体を寄せて、ぴとりと肩を引っ付けると、テレサは安心したようにニコリと笑う。
居住まいを正して大人たちを見回す。
ちゃんと答えを貰っておかなきゃ。
「・・・それで。お母様は隠居すれば領主の責務から解放されるのですよね?」
「その話だったわね」
「ハロルドの後妻にフレイアを、だったな」
話が一周して元の場所へ戻ってきたけど、経緯と私の決意を理解した上だと反応が違う。
そわそわしているルナリアが確認するように私を覗き込んでくる。
「叔母様が、わたしのお母様になるの?」
「・・・ルナリアは、どう?」
「嬉しいわ! きっとお母様も、お父様のお相手が叔母様なら安心してくださるもの!」
またノーアの体ががビクリと震えたので、立てた指を口に当てる。
「・・・ルナリア?」
「あ。(わたしは大賛成だわ!)」
この遣り取り、もうネタなのか本気なのか分からなくなってきたな。
最も影響を受けるルナリアが味方に付いたのだから、目一杯、外堀を埋めてやろう。
大義名分なら有る。
「・・・ルナリアも賛成だそうです。ただ、私たちは、まだ子供で、家督を継いだからと言って、後10年は子供を産むことが出来ません。ウォーレス家、ピーシス家の両家としても、私たちに万一が有ったときの備えは必要ではありませんか?」
「確かにな。フレイアが子を産んでくれれば安心できる」
「良いのではないかしら。ルナリアにも、まだ母親は必要だわ」
ハインズ様もセリーナ様も、私が意気込むまでも無く乗り気だね?
お婆様も優しい目で微笑んでいる。
私の疑問に応えてお婆様が頷く。
「レオノーラが亡くなった後、何度か、茶飲み話になら上がったことは有ったのですよ」
「当時は、今のような状況は想定しなかったものね」
「・・・状況とは?」
お婆様と笑みを交わしたセリーナ様の目が、私へと帰って来た。
「貴女よ。フィオレ」
「・・・私ですか?」
「当時はフレイアが婿取りの話を悉く蹴り飛ばしていたから、ピーシス家の後嗣は、候補者の目処すら立って居なかったのよ?」
「・・・あ。そっか。そうでした」
為政者としてでは無く、子を思う親の目になったハインズ様も私を見る。
みんな、お母様に幸せになって欲しかったのは同じだったのだ。
守らなくてはならない決まり事と、許される状況、それを乗り越えられるなら、幸せになって欲しいのだ。
「ウォーレス家としては構わん。むしろ、望むところだ。フレイアが産んだ子なら、ウォーレス、ピーシス、どちらの家督を継ぐにも問題は無い。が、ハロルドとフレイアが受け入れるかどうかは分からぬぞ」
「・・・説得します。ずっと頑張ってきたお母様には、ご自身が幸せになっていただきたいのです」
「(わたしも説得するわ!)」
「・・・お願いね。ルナリア」
「フレイア自身の幸せ、か。・・・そうだな」
父親の顔になったお爺様も頷いてくれた。
お爺様が了承したことで、満場一致の認識形成はできた。
セリーナ様が楽しそうに目を細める。
この目は、面白いものを見付けた捕食者の目だ。
この場合の捕食対象―――、玩具は、私か、お母様か。
やっぱり私かな?
「貴女、本当にフレイアが好きなのね」
「・・・はい。大好きです」
「そう。では、私も説得に協力してあげるわ」
「もちろん、私も協力するわよ」
セリーナ様の参戦表明に乗って、静かに成り行きを見守っていてくれたミリア叔母様もイイ笑顔で参戦表明をしてくれる。
ミリア叔母様も本当にお母様のことが大好きなことがよく分かる。
「・・・ありがとうございます。皆様、ご協力のほど、よろしくお願いいたします」
つい、OL時代のお願いの文言みたいになっちゃったけど、心込めて言ったら、こうなった。
家族全員が味方に付いてくれたなら、残るは当事者のご両人を説得するだけだ。
お母様の幸せと掴み取るために、私は全力を尽くすよ!