軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

領有宣言 ⑬

「持てる知恵を巡らせて成果と効率に繋げようとする姿勢は立派ですが、貴女は自分の立場を弁えていますか? 将の判断一つで多くの兵が死ぬのです。将たる者の責任を何と考えているのですか?」

「・・・はい。大変、申し訳なく・・・」

仰る通りです。

小さくなっている私から、お婆様の鋭利な視線が横にスライドする。

「アリアナ。メリーナ。ネイア。貴方たちが付いていながら無茶を許すとは。取り返しの付かない事故にならなかったから良かったものの、側近の役目を理解していますか?」

「「「・・・はい・・・」」」

私と同様に小さくなっているアリアナさんたちも項垂れる。

これは、いけない。みんなを巻き込むのは私の本意では無い。

「・・・お、お婆様。悪いのは私なので、みんなを責めるのは―――」

「黙らっしゃい」

「・・・はい。ごめんなさい」

ピシャリと反論を封じられて、さらに小さくなる。

「まったく・・・。次に同じようなことをしたら、狩猟と採掘事業の一切に関わることを禁じます。良いですね?」

「・・・あうう。・・・はい・・・」

やり込められて溶けそうになっている私をセリーナ様が目線で指す。

「テレサ。ルナリア。貴方たちも心して置くのですよ。人の上に立つ者は慎重さと冷静さを失ってはいけません。夢中になって周りが見えなくなるなど、 以(もっ) ての 外(ほか) です」

「「は、はい」」

夢中になっていた自覚が有るらしい二人も小さくなった。

私をダシにした格好で直接の叱責はしていない形だけど、キッチリと見ていたらしいセリーナ様は釘を刺しに来た。

「この話は、これで終わりです。さあ、早く昼食を摂ってしまいなさい」

「・・・はい」

叱責を受けていた私たちの周りにルナリアたちと他のピーシーズが集まってきて、面倒見の良いオーリアちゃんが昼食が詰まったバスケットを差し出してくれる。

みんなの手には、手に取ったは良いけど食べるに食べられなかったバゲットサンドがある。

「もう。仕方ないわね、フィオレは」

「でも、フィオレらしいですね」

私の隣りに移動してきたルナリアが肩を軽くぶつけてきて、向かい側に腰を下ろしたテレサは上品、かつ、楽しそうに笑っている。

とばっちりを食らったのに、2人とも怒っていなくて良かったよ。

「・・・うう。面目ない。アリアナさんたちも、ごめんなさい」

「いいえ。シェリア様の仰る通りですから」

アリアナさんたちも人目を忍びながら笑っている。

叱られた直後にケラケラ笑っていたら余計に叱られそうだからね。

ネイアさんが向こうを指す。

指した先に横たわっているのは、すべての枝葉を落とされて丸裸にされた、直径が1メートル以上もある丸太材だ。

「それより、あれ、フィオレ様とアリアナでやったんですよね?」

「・・・うん」

「どうやったんです?」

「私たちも木を伐るのに夢中で見てなかったです」

新しいもの好きのクラリカさんとメイリスさんが、ぐいっと首を突っ込んで来た。

彼女らはルナリアと一緒に離れた場所に居たので私が起こした暴発事件を目撃していない。

2人のさらに上から張りのある落ち着いた女声が降ってきた。

「本当にねえ。どうやったのかしら? 食休みが終わったら見せてみなさいな」

「・・・えっ? お婆様・・・、良いの?」

叱責中の厳しい面持ちとは打って変わって興味津々に目を輝かせているお婆様は、悪戯っぽい目で、フフン、と笑う。

「それはそれ、これはこれ。よ」

「・・・あ、はい」

お婆様も本当に魔法が好きなんだなあ。

新しい魔法や魔法の使い方に対する反応がお母様そっくりで、外面に配慮するか気にせず踏み越えるかの違いだけで本質は同じなことが良く分かる。

エゼリアさんたちが「よく一緒にしかられた」と言っていたけど、そりゃあ、家族の本質を見抜いていただろうお母様が実験を止めないわけだ。

お婆様がクスクスと上品に笑う。

「貴女なんて、反省しているのだから可愛いものよ。フレイアなんて反論してきたもの」

「・・・反論?」

「貴女ぐらいの歳の頃には色々と言ってたわよ。失敗無くして進歩は無い、だとか、同じ失敗はしない、だとか、失敗はただの結果で一過程に過ぎない、だとか。フレイアの場合は“紅蓮”の強化にご執心だったから、失敗する度に色々と吹き飛んで大変だったわ」

「・・・お母様・・・」

幼い頃から聡明で口が達者だったお母様は、黙って叱られるどころか、悪びれずに開き直って論破しようとしていたらしい。

対人スキルが低い私には真似の出来ない荒技だね。

普段のお母様を見ているだけに、反論する姿がありありと想像できてしまう。

叱りながらも受け入れてきたお婆様もお婆様で、懐が深いというか、色々と凄いなあ。

このお婆様が在ってこそ、お母様という規格外の傑物が生まれたのだろう。

お婆様もまた、傑物だよ。