軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

領有宣言 ⑧

「姫様、ルナリア様、フィオレ様、獲物の回収が終わりました」

「お疲れさま。アリアナ」

戻って来たアリアナさんを、私たちを代表してテレサが労う。

なぜテレサ? というと、この場に居る中でテレサの身分が一番高く、私たちの傍にはテレサの周りを護衛する王都の騎士団の面々とレーテさんしか大人が居らず、ウォーレス領内の雰囲気では無くなっているからだ。

この雰囲気の中でテレサをテレサ呼びする度胸が有るのは「ご友人」と認識されているルナリアと私の2人ぐらい。

テレサは不満そうだが、こればかりは仕方ない。

公的な指揮系統ではピーシーズは私の指揮下なので、その辺をしっかり弁えているテレサがピーシーズに直接の命令を出すことは無いし、ルナリアが直接の命令を出したときは、ピーシーズの面々から私にチラッと確認の目線が飛んできて、私が承認したアクションを見せないとピーシーズが動かない手順を踏んでいる。

ていうか、封建社会ではこれが普通。

今日の主たる目的は拠点建設予定地の伐採作業開始だから、私たち3人のトドメ作業はお休みして、お婆様たちとピーシーズにお任せするしか無かった。

伐採作業の勝手が分かったらワナ猟と手分けして回せるから、今日は我慢だよ。

「・・・回収後の処置は?」

「シェリア様の指示で猟師の馬車へ積み込みを終え、すでにレティアの食肉加工場へ向かわせました」

「・・・お婆様たちは?」

「今から街道敷設予定地の縄張りの確認に行かれます。騎士団の方が4名ばかり同行していただけるそうです」

テレサを含めた私たちは、採掘場前の伐採を進める予定になっているから、採掘場から動かないと判断してのことかな。

アリアナさんからテレサへと視線を移す。

「・・・テレサ?」

私の視線を受けて、テレサは後ろに控えている護衛の騎士様を返り見る。

この騎士様はベルーサー様の部下で小隊長さんらしい。

「どうなのですか?」

「多くの護衛は不要とのことで、先ほどの報告の通り4騎が護衛に付きました」

「そうですか。これで良いですか?」

騎士様に頷いて承認を示し、私に向き直る。

「・・・ありがとう。助かる」

テレサと私の遣り取りが終わったと判断したルナリアがアリアナさんを見上げる。

「最終的に、どのぐらい獲れたの?」

「バイコーンの牡が2頭、雌が8頭、仔が2頭、レイジングボアの牡が1頭、雌が1頭の計14頭ですね」

「昨日よりも多いわね」

シカが増えるとシカを追ってきた狼が出没するようになるから危険な森の危険が増す、というのが森と対峙して生きてきたウォーレス領の常識なので、ルナリアも深刻顔。

でも、それは「魔獣は脅威」と考える場合の常識で有って、「魔獣は資源」となれば話は変わる。

「・・・お肉が増える分には良いよ」

「そうね。そうだったわね!」

アッサリと笑顔に戻ったルナリアに苦笑を浮かべたアリアナさんが私を見下ろす。

「ただ、馬に負担が掛かるので、明日から馬車は2台に増やすそうです」

「・・・負担?」

「今日は大きなボアが2頭獲れましたから、荷台が山積みになってしまって」

「・・・それは・・・確かに重そう。馬が可哀想かも」

「早く街道を通してあげないとね!」

絵面を想像して、肉の重さを想像して納得した。

お肉って水分の塊だから重いもんね。

獲物を獲るようになってお肉の塊の重さを最近知ったルナリアも納得したようだ。

軍馬がウォーレス領の特産で馬の大切さを知っているだけに力が入るのかな。

テレサがアリアナさんを見上げる。

「罠の設置はどうなっていますか?」

「猟師と騎士団の方々の協力で30ヶ所ばかり仕掛けました」

「ずいぶん増やしたのね」

ルナリアの反応に、アリアナさんが確認するように私を見る。

「多く獲れる分には良いのですよね?」

「・・・どんどん獲って。猟師さんたちも、希望があるなら人数を増やして良い。獲物が“魔獣だけとは限らない”から気にせず仕掛けて良いよ」

「魔獣以外の・・・? それは必要ですね。邪魔させるわけには参りません」

獲物が獲れれば獲れるほど、王都方面の戦場で不自由をしているだろうお母様の助けになる。

戦場という環境を私は自分の目で見たことは無いけど、地球のテレビ映像や新聞記事で報道されていた戦場の光景を基準に考えるなら、戦場なんてものが快適なわけが無い。

食用の獲物じゃなくても、獲れれば獲れるほどレティアの町と採掘場が安全になる。

今、この森に現れる、食用じゃなくて魔物でも無い獲物なんてものは、それは「王国の敵」だ。

見付け次第、駆除する必要が有る。

狩猟用のワナで無力化は出来なくても、そこにワナが存在するだけで侵入の障害にはなるはずだ。

「帰り道にも仕掛けるわ! 良いわね!」

ルナリアの宣言に、ピーシーズがチラリと私の顔を横目で見たので、目線で頷いて返す。

「「「「「はっ」」」」」

返事がワンテンポ遅れた意味にルナリアが気付いた様子は無い。

訓練されると息が合うのか返事も息が合うんだなあ、などと明後日方向の感想を抱いていると、1人だけ小さく手を挙げている。

「・・・どうしたの? オーリアちゃん」

「人間用も仕掛けますか?」

目が真剣。

良いねえ、私の指示が間違ってたよ。

やるなら徹底的に、だ。