軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

盟約 ㊻

「・・・みんながみんな馴染めれば良いのですが、同じ人間同士でも合う合わないは有るものでしょう? 逃げ場がないと思うから深刻になるので有って、逃げ場が有るなら人との付き合いも一時の我慢です。 同(・) じ(・) ウ(・) ォ(・) ー(・) レ(・) ス(・) 領(・) の(・) 中(・) なのですから買い物に町へ出ることだって有るでしょう」

「同じウォーレス領の中」の 件(くだり) で、私の言わんとするところに気付いたお父様とお爺様たちが小さく溜息を吐いたけど、必要な措置なんだよ。

岩塩鉱床を探せと命じてただの農民を森へ突入させてくるバカ貴族が居るぐらいなんだから、エルフ族の集落まで迷い込む農民だって居るかもしてない。

なんて言ったっけ? あの隣のバカ貴族。

フィッツベルン子爵だったけ。

万が一にもエルフ族の集落を見付けたバカ貴族が領有権を主張するようなことが有ったら、エルフ族との信頼関係を破綻させるような愚行を行う恐れすら有ると私は見ている。

だからこそ、領有宣言を一歩も譲るつもりはなくなった。

「町へ買い物に、ですか。生活を変えずとも良いのですな」

感心顔で族長さんが唸る。

だが、ちょっと待って欲しい。

生活にはおカネが必要だってことを忘れないでよね。

「・・・ただ、町へ出た方と森に残られた方の間に多少なりとも貧富の差が生まれる可能性が有ります。ですから、森に残られる方々にも仕事を持っていただきたいのです」

「民の格差ですか。政を行う限りは必ず付いて回る問題ですな」

私の指摘に族長さんが唸る。

そんなに難しい顔をする必要はないよ?

魔法道具作りに参加してくれても良いけど、魔法道具技術の他にもエルフ族は金の卵を産むニワトリを持っている。

今までは自分たちが生きるために必要なものだけ調達していれば良かったのだろうけれど、需要が有るならおカネになるものだって有る。

「・・・集落の近くには塩湖が有ると聞いています。ウォーレス領において採掘された岩塩は領主が価格を決めており、市場に左右されることが有りません。収入源が有り、納品で町との関係を維持させることが出来ます。集落に残る方々で塩の採集をしませんか?」

たった30人なら、相場価格を崩壊させるほどには採取出来ないだろう。

流通量がダブついて値崩れを起こしそうなら、岩塩の輸出量を絞って調整すれば良い。

出荷量が少なくなった分、長く採掘できることになって将来の鉱脈枯渇を先延ばしに出来る。

エルフ族も潤うし、ウォーレス領としてもマイナスはない。

「孤立を避けさせることが出来るのですな」

「そのための街道か。悪くはないな」

族長さんもハインズお爺様も表情を緩めて頷いている。

これは領有宣言に向けて一歩前進かな。

私は塩湖の取り込みを諦めていないからね。

エルフ族の収入源も確保できるし、塩の生産量維持は王国全体の生命線でも有る。

統制が必要なんだから他所の領地に触らせるわけにはいかない。

ところが、マルキオお爺様の難しい表情は晴れない。

「街道を拓く人手はどうする? しばらく簡単には出せぬぞ」

「・・・フィティオスさんとアルケマイオスさんに木を伐る魔法を覚えて貰いましたから、集落の方々に広めて貰えれば自分たちの手で森を拓けますよ?」

フッフッフ。たまたまだけど抜かりはないよ、お爺様。

族長さんの背後がざわつく。

「それで木を伐らせていたのか」

「この状況を事前に読んでおられたとは」

いやいや。エルフ族側から色々と聞こえてくれけど違うからね?

たまたまだよ。たまたま。

2人には木こり修行じゃなく純粋に戦闘技術として教えてたんだけど、修行が出来て実利が伴うなら、もっとお得じゃん。

私たちが残した実績を知るマルキオお爺様の表情が緩む。

「エルフ族自身の手で街道を引いて貰うのだな」

「我らの手で、ですか」

不安を覚えたのか、今度はエルフ族側の表情が難しくなった。

「・・・心配有りませんよ。今日、採掘場から通ってきた直線道路は、ルナリアと王女殿下を中心とした子供たちが拓いたもので、12日間で作ったものですから。そのときに使った魔法が、フィティオスさんたちが訓練している風術式です」

王都の騎士様たちにも手伝って貰ったけど、「中心として」従事したのは私たちだから嘘は吐いていない。

おっと。レーテさんの存在を忘れるところだった。

あのときは、風ジェットカッターを覚えたがった王都勢も美味しく使わせて貰ったからね。

でも、今回は12日間で完成させろと言っているわけじゃないし、手伝えるときにには私も手伝うし、ヘーキヘーキ。

具体的な算段に思考が移ったらしい族長さんの目が私へ向く。

「あの街道の長さはどの程度なのでしょう?」

「・・・ざっくり10キロメテルですね」

だいたいそのぐらいの距離だったはず。

1キロメートル1日計算だけど、あのときの私たちはカリーク公王国の侵攻に追われていたから参考記録だ。

無理をせず、もっと距離を少なく刻んでも良いんだよ。

どのみち、伐りだした木の運搬は私が手伝う必要が有るだろうしね。

「それなら今の我らでも引けるのではないか?」

「伐った木を建材に用いれば、採掘場のような防壁も作れるだろう」

後列の護衛さんたちも安心してくれたみたいだね。

伐り出した木々は建材だけじゃなく薪にも使えるからね。

消耗品の在庫は多い方が良いよ。

何なら、護衛さんたちも風ジェットカッターを覚えて帰れば良い。

戦う手段は多い方が良いんだし、強くなった実感が持てれば心にも余裕が出てくるでしょ。