軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

盟約 ㊳

「ところで、ケイナから精霊術式のコツを教わられたと仰っておられましたな」

「・・・はい。私にもお母様にもルナリア―――、私の姉妹にも精霊が憑いているとケイナちゃんが教えてくださいまして、その後も色々とコツを教わらせていただいています」

お爺様の質問に包み隠さず答える。

結構なお歳、というか超越的なご高齢なのに、お爺様は健脚だね。

歩くペースを合わせるべきかと考えていたのに、歩幅が小さい私の方が合わせて貰っている。

「ほう。ケイナと面識を持たれたのは最近のことだと聞いておりましたが、この短期間で精霊との繋がりを強められたのですか」

「・・・強められているので有れば嬉しいのですが、上手く出来ているのかどうか」

自信はないけど、問われたままに答える。

ノーアと同じぐらいの小さな子供と話すつもりでコミュニケーションを取ってはいるけど、それが正しいことなのかは分からない。

自我が有るなら生き物ってことになるのだと思うけど、精霊に年齢という概念が有るのかも分からない。

幼い感じがするから子供相手と同じ対応をしているだけで、もしかすると、私よりも遙かに年上かも知れないんだから。

「先ほど結界を破ったのは精霊でしょう? 見事なものですよ」

「・・・結界を? この子たち、そんなことをしたのですか?」

結界!? 結界ってあの結界!?

あの、って、どの!? さっきのだよ!

お爺様に答えながら、精霊たちがハウスしてきた自分の平たい胸に手を当てる。

反応しそうになったのをグッと堪えきった。

結界かぁ・・・。

似たような状況が、どこかでなかったっけ?

メッチャ気になる!!

でも、我慢しろ!

気になるけど今はダメだ!

いちいち反応するから、いつも話が脱線するのだろうから、私だって中身は大人なのだし、大人の対応をしなきゃいけない場面なら、ちゃんと対応できるよ。

目を丸くしたお爺様が首を傾げる。

「おや。精霊に指示されたのでは?」

「・・・指示だなんて。私はこの子たちに“違和感の元を探してきて”とお願いしただけなのですが」

私はケイナちゃんから教わったコツの通りに実行しているだけだ。

私の解釈が間違っていたようで、私の答えにお爺様が首を振る。

「ああ、いいえ。“指示”というのは―――、そうですな。“正確に思いを伝えた”と言い換えた方が正しいのでしょうか。精霊との繋がりが深くなければ正確に“思い”が伝わることはないものなのですよ」

おおっ。私のやり方は間違っていなかった!?

お爺様の答えにテンションが上がる!

ケイナ先生の方法論は正しかった!

「・・・ふおおおおっ! そういうものなのですね!」

「嬉しそうですな」

微笑ましそうな目でお爺様に見られたけど、ここは敢えて子供扱いを甘んじて受け入れる!

さっき「私だって大人の対応が出来る」といったな!

あれは嘘だ!

体の年齢に引き摺られているのか、感情の起伏が大きくなると化けの皮が剥がれる自覚は有るからね!

「・・・はい! とても!」

「精霊の存在を感じ取れるヒト族は少ないものなのですが、貴女は才能をお持ちなだけでなく、とても精霊に好かれて居られるようだ」

ほうほう。興味深いね。

精霊が憑く人間が少ないのではなく、感じ取れていないだけってこと?

感じ取れないから自分の想いも精霊に伝わらないってことだよね。

伝わっていないから精霊も応えてくれないのか。

電子機器の接触不良みたいなものかな?

だったら、精霊魔法において最も重要なのは「精霊の存在を感じ取る」って部分になるのだろう。

精霊が憑いているかどうかよりも、そっちが重要なのか。

血を飲んで体内の魔力に刺激を与えて、魔力が活性化している間に色々と反応を試すとか、どう?

苦戦しているお母様やルナリアの手助けをするための取っ掛かりになりそうな情報は、とても助かるよ。

「・・・そうなのでしょうか。だとしたら、すごく嬉しいです」

「ふむ・・・。何をされているのかと見ていたのですが、これは?」

トンネルを空けた巨岩を避けて通るところで、お爺様が不意に足を止めた。

「・・・農業用水路です」

「農業用の? こんな森の中でですか」

トンネルと答えるべきか迷ったけど、お爺様はトンネルだけに興味を抱いたわけではないだろう。

その判断は間違っていなかったようで、お爺様の目はトンネルから先の用水路を辿って上流方面へと向いている。

「・・・試験栽培―――、まだ目立たせたくない農作物を、人目に付かない場所で試しに育ててみようと思いまして。森を拓いて農地に変えていました」

実際にはお婆様たちの指令に従っているだけで、私が森の中でオリーブを育てようと考えたわけじゃないんだけどね。

重要なのは場所の選定理由だと受け取ったから、そう説明した。

「本当に“魔の森”を開拓されておられるのか」

「・・・拙いですか?」

おや? お爺様が驚いているのは場所の問題じゃないっぽい?

まさか、精霊信仰の絡みで“森に手を付けてはいけない”なんて言い伝えが有るとか?

ケイナちゃんたちの集落は、“村の掟”っぽいことに厳格らしいしなぁ。

”精霊様の祟りじゃ~!”とか 非科学的(オカルト) なのは、反論を探したくなるから止めてよ?

カルチャーギャップやローカルルールを心配して訊いてみれば、カルチャーギャップというか、常識の違いでは有るけど、私が心配した方向性とは違ったみたいだ。

「少しばかり驚いただけです。レイクスからの報せで聞いてはいましたが、簡単に拓けぬのが“魔の森”ですから」

以前、お婆様たちに言われたことと同じようなことを、今も言われたっぽいね。

アレだ。岩塩採掘を急ごうとしていたときだよ。

お婆様たちに「“魔の森”の木々は硬いから伐るのも大変」と言われて、風ジェットカッターでスパスパ伐って見せたら、お婆様たちからの報告を受けたハインズお爺様たちにも驚かれたことが有ったっけ。

回転刃という地球の技術が、こっちの世界には概念すらなかったから、お披露目で見せた風ジェットカッターの効果が伝わりきっていなかったんだよ。