軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

盟約 ①

「お帰りなさい!」

「ただいま!」

「・・・ただいま」

領主館の厩舎前で兵士さんたちに出迎えられて馬上から挨拶を返す。

睡眠十分で元気一杯なルナリアは鞍からヒョイと飛び下りてシュタッと着地をキメたけど、私は特注の縄梯子を伝って、いつも通り慎重に鞍から下りる。

夜更かししていたのに、何でルナリアが睡眠十分なのかといえば、4の鐘が鳴る時間まで爆睡していたからだよ。

ミセラさんたちの話では、キャットウォークで仮眠から目を覚ましたのが、日付が変わった頃のことで、食堂でお茶を飲んだのが恐らく2時頃。

3の鐘が鳴る前には兵舎のベッドに入ったから6時間は眠っている。

観察前の仮眠を3時間は取っていたから、睡眠時間はトータル9時間だね。

普段の睡眠時間が8時間だから、普段よりも1時間多く眠っている。

そりゃあ元気なわけだよ。

なお、目を皿のようにしていたアスクレーくんは観察結果を書き留めてから就寝したそうで、寝不足らしくて眠たそうにしていた。

それはそうと、まだまだピーシーズには及ばないけど、日に日にルナリアが身軽になっていく気がする。

ルナリアは普段から力が強くなってきてるしなぁ。

私だけ置いて行かれている気がして悔しいけど、筋力で劣る私に鞍から飛び下りるルナリアのアレは真似できないな。

「・・・ありゃ?」

馬の手綱を兵士さんに手渡して、お父様たちに帰還の挨拶をしに行こうかとルナリアと連れ立って歩き出しかけたら、また食料倉庫の前で人が集まっているのが目に留まった。

あれってオリーブの種を水に浸けておくようにお願いした下働きの人たちだよね?

「私が確認して参ります」

「・・・お願い」

私の視線から何に気を取られたのかを察してくれたレヴィアさんが、ディディエさんたちを引き連れて食料倉庫へと向かう。

3人の背中を見送っていたらルナリアからの催促が飛んで来た。

「行くわよ! フィオレ!」

「・・・あ。うん」

お母様とお婆様たちはエゼリアさんたちと一緒に領主執務室へ向かった後で、テツさんたちも一緒にお母様たちの後を追う。

「ただいま! お父様、お爺様たち!」

「・・・ただいま戻りました」

「うむ! よくぞ戻った!」

「ああ。お帰り」

執務室へ足を踏み入れるやルナリアが元気に挨拶して私とノーアも後に続く。

私たちの挨拶にハインズお爺様が真っ先に答えてくださって、お父様とマルキオお爺様も目元を緩めて迎え入れてくれた。

「報告は私たちでしておきますから、貴女たちは着替えてらっしゃいな」

「分かったわ!」

セリーナお婆様の指示にルナリアが答えている。

着替え? お風呂じゃなく?

「・・・ん? ああ、甲冑かぁ」

ルナリアの表情が期待感でキラッキラになっていることで、何の話かを思い出した。

領主館へ帰り着いたばかりなのに、もう準備出来てるんだ?

いやまあ、下準備だとかの裏方仕事が得意なシェリアお婆様が居るんだから何の不思議も無いんだけど、本当に準備いいな。

お母様も一緒に行くようで手招かれる。

「行くぞ」

「・・・あ。はい」

手招いたが早いか、お母様はもう背中を向けて廊下に続く扉へ向かっている。

「私も行って良いですか?」

「行くわよ! ケイナ!」

甲冑に興味が有るのか、声を上げたケイナちゃんの手をルナリアがガシッと掴まえた。

「ノーアも」

「・・・うんうん。おいで~」

夜中の観察に参加せず朝から出荷作業を手伝って血を飲んでいたノーアの手を取った。

まだノーアは幼児と呼ぶべき年齢だから置いて行かれがちだしね。

コミュニケーション不足にならないように気を付けなきゃ。

マーシュさんとサーシャさんたちに守られて移動した先は、ドレスで着せ替え人形にされるときに連行される衣装部屋だった。

「ふわあああああっ!」

「・・・おお。まさに甲冑じゃん」

私たちの体格に合わせたミニサイズながら、しっかりと兜までワンセットになった全身甲冑が2領、鎧立てに着せた状態で並べられていた。

「むむっ」

目を輝かせていたルナリアが小さな声で唸る。

両方とも同じデザインだけど、片方は 兜(ヘルム) のトサカ―――、”コウム”って呼ぶんだっけ? 尖った飾りの部分や、 肩当て(ポールドロン) の返し部分が真鍮っぽい金色になっている。

特別感を出した意匠に見えるところから、こっちがルナリア用なのだろうと判断できた。

他方、私の方は銀色1色でゴテゴテ感がない。

私はシンプルな方が好みだし良いんじゃないかな。

名目上とはいえ、ルナリアは総大将だし、多少は派手になるのも仕方ないね。

ていうか、私がコレを着るの?

自分が甲冑を着た姿がイメージ出来ないな。