軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

精霊種 ㊽

「それは問題ね」

「何をもって迷宮化が間違いないと判断したのですか?」

シェリアお婆様に根拠を問われて一瞬迷ったけど、お婆様は言い触らしたり悪用を考えたりする人ではないから情報を共有することにする。

「・・・レイクスさんに魔力の動きを視て貰いました。レイクスさんは魔力が視覚的に見える特別な目をお持ちで、レイクスさんは“自然の魔力が周囲から集まってきている”と仰っていました」

「自然の魔力ですか。“迷宮は自然の魔力から生まれる”という説は本当だったのですね」

シェリアお婆様が感嘆の息を吐いて、私も頷き返す。

レイクスさんの“目”には触れないんだね。

「・・・観測結果から判断するなら、学説は証明されたと言って構わないと思います」

「フレイアとも話していたのだけれど、“魔獣は魔力から生まれる“という学説も証明されたと言って良いわね?」

お母様とシェリアお婆様の意見で見解は固まっているのだろうけど、セリーナお婆様は念押しで私の見解も訊きたいって感じかな。

「・・・はい。何が原因で、といえば、“魔力の濃度”なのだろうと推測できるのですが、なぜ、その場所に魔力が集まるのか、干渉できる迷宮と干渉できない迷宮の違いは何なのかを解明しておく必要性を感じました」

相違点が分かれば変化を起こせないか実験することが出来る。

ダンジョンに人為的な変化が起こせるのなら、採掘できなくなる可能性を潰せるかも知れない。

「確かにそうね」

セリーナお婆様が思案顔で同意する。

対策を考えるにも、今の私たちには情報が足りない。

先ずは知ることから始めないと、問題が起こってからも打つ手がないんだよ。

だから、今のうちにロビー活動しておくか。

セリーナお婆様が問題意識を持ってくれたところへ、シェリアお婆様がストップを掛けてくる。

「待ちなさい。採掘場は魔力が濃いのですか?」

「・・・レイクスさんは、“嘆きの祠”ほどではないけれど、かなり濃いと仰っていました。“嘆きの祠”では迷宮が事前の魔力を吸い集めているように見えて、採掘場でも同じ現象が見られると」

例の死霊系ダンジョンと採掘場には、他にも類似点が有る。

魔物、あるいは魔獣が湧き続けることだ。

「迷宮が魔力を吸い集める、ですか」

「・・・先ほど発生した光の粒も、魔力が集まったものだとレイクスさんは仰っていました。ご祈祷のときに現れた光の粒と同じものだろうと推測は出来ますし、空へ舞い上がった光の粒が森の奥へ移動して行ったのも、採掘場に吸い寄せられたのだと考えれば説明は付きます。ただ、推測は推測に過ぎず、精度の高いものでは有りません」

「そうですね」

シェリアお婆様が頷いて同意を示し、確認するような目をセリーナお婆様が向けてくる。

「情報が足りないというのね?」

「・・・はい」

事例が―――、サンプル数が足りないという私の意図を、セリーナお婆様は正確に読み取ってくれていた。

ニワトリが先か卵が先か。

魔力濃度と、ダンジョンの発生と、魔獣の分裂増殖。これらの関係性を明らかに出来れば、新たなダンジョンの発生を予測したり、ダンジョンを潰したりも出来るかも知れない。

無限におカネを生み出してくれているとも言えるダンジョンを潰したりはしないけどね。

メカニズムが何も分かっていないのだから、統計学的な導き出し方をするしかないのだし、サンプル数の積み上げは必須だろう。

「・・・レイクスさんたちもテツさんも解明に協力してくださると仰っています」

「協力を引き出したのね。よくやったわ」

「それは心強いです」

おおっ。褒められた!

でも、褒めて貰ったからといって増長するのは良くない。

褒められた上で羽目を外して叱られるときには判定が厳しくなる傾向が有ることは、経験上、私だって学習している。

謙虚に、慎重にだよ。

「・・・レイクスさんたちも新たな同胞ですから」

「そうね。調査には領地からも支援を出すわ。そう伝えておきなさい」

私の売り込みにセリーナお婆様も協力を申し出てくれた。

「・・・ありがとうございます。私も調査に協力したいと思います」

「貴女、また迷宮へ行くつもりですか?」

おっと。サラッと混ぜ込んだのに、呆れ顔のシェリアお婆様から指摘が入った。

ここを乗り越えておかないと行動に制限が掛かっちゃうな。

「・・・必要が有ってのことです。私たちだけで、あるいはレイクスさんたちだけで調査をするよりも安全かと」

「それはまあ、その通りですけれどね」

シェリアお婆様が納得を示した。

だがしかし、私がダンジョン調査に参加するのはお父様やお爺様たちの説得も必要になるからね。

ここで欲をかいて言質を取りに行くよりも、不安の緩和を狙ってハードルを引き下げた方が得策かな?

テツさんたちに引っ付いて東部方面や北部方面の森へ同行するのも許可を貰いたいし。

大丈夫だよ~、とシェリアお婆様の警戒心を解しに掛かる。

「・・・そうは言っても、テツさんたちは一度王都へ戻って冒険者ギルドからの調査依頼を請けてくるそうですから、今すぐ迷宮へ向かったりはしませんよ?」

「今すぐではなくとも、行くつもりなのね」

無害を装ってニコリと営業用スマイルまで添えたのに、訝しんでいる目のセリーナお婆様からツッコミが入った。

まだだ。まだ終わらんよ。

セリーナお婆様には実利を示した方が許可を得やすいだろう。

プラスマイナスを比較してプラスの比重が大きければ、セリーナお婆様は後押ししてくれる人だし。

戦略性と大義名分が整っていれば、なおヨシ。

ちょっとだけ心配なことも有るしね。