軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

精霊種 ㉛

「んで? さっきの攻撃用の術式を撃つ魔法道具は作る必要あんのか?」

「大有りだぜ? 地球では“銃”って呼ぶんだが、そんな感じの武器が有るんだ」

懐疑的なロブウッドさんにテツさんが反論する。

私は“魔力を籠めるだけで魔法を撃てる魔法の杖”ぐらいの考えだったんだけど、銃に行っちゃうかぁ。

加工精度的に可能なんだろうか?

いや。ロブウッドさんたちが居るんだから、夢物語じゃないのかも。

もしかすると加工機械から作らなきゃいけなくなるんじゃ?

私の懸念を他所にテツさんとロブウッドさんの緩やかな論争は続いている。

「そうなのか? 儂には必要そうに思えんのだが」

「そんなこたぁねえよ。“銃”の最大の強味はな。扱い方を覚えるだけで誰でも強力な兵士になるって部分だ」

国民皆兵制かな?

現状でもウォーレス領は皆兵制だけと。

テツさんが言い放った「強み」にロブウッドさんが訝しげな顔になる。

「誰でもだと?」

「おう。老若男女を問わず、何千人でも何万人でもな。筒先を敵に向けるだけで良いんだ」

テツさんは長いものを持ったジェスチャーで、絶句するロブウッドさんに「筒先」を向けてみせた。

ああ~。その「強み」、ネットの書き込みで私も見たこと有るよ。

2人の様子を眺めていたレイクスさんが頷く。

「ふむ・・・。術式は魔法道具で固定値の威力が出る。魔法道具を起動さえ出来れば、赤ん坊だって兵士になれるって理屈だね」

「そういうこった。―――嬢ちゃんは本気で軍事大国を目指す気か?」

この件についての考えはすでに話したし、今さらな質問だけど、もう覚悟を問うような訊き方じゃなく再確認って感じだね。

何度も確認されることを面倒だなんて思わないよ。

私たちが持つ現代地球の知識は、発展が遅れているこっちの世界にとって即死しかねない劇薬物になるものだって有るだろうし、セーフティ機構として私たちが意志を確かめ合うことは決して無駄にはならない。

なぜなら、私たちが持ち込むものによって多くの人の命が失われることになるのだろうから。

その結果もたらされるものに責任を持って罪を背負う覚悟がないのなら、手を出すべきじゃない。

今後、無責任に持てる知識をバラ撒こうとする人が現れたときには、私の手で口を封じることも考えておかなきゃならない。

そんなことが起こって欲しくはないけど、召喚魔法で拉致被害者を増やそうとする神教会勢力が存在する限り、起こり得る可能性も存在し続ける。

私たちが歪められていない自然な未来を手にするには、召喚魔法の技術を持つ神教会勢力は滅ぼさざるを得ない。

どうせ、捨てろと言っても捨てないだろうしね。

召喚魔法に関する技術ごと無に還すだけだ。

私は大切な人たちを守るためなら喜んで鮮血に両手を染めよう。

だから、覚悟をもって強く頷く。

「・・・強くないと大切な人たちを守れないんだよ。だってね? 隣の国はヒマが有ったら攻めてくるし、勇王国も近隣諸国を攻め落として着々と近付いて来てる。負ける気は無いし、実際、負けないんだけど、躊躇していられる余裕なんてないよ」

「そりゃあそうだな・・・。ヨシ。その魔法道具の件は俺がレイクスたちと相談しておく」

テツさんには未だ迷いが有るみたいだけど、頷いてくれた。

「・・・本当に任せて良いの?」

「嬢ちゃんに責任を背負わせるのは心苦しいが、少なくとも今は一蓮托生だろうが」

真っ直ぐに見返してくるテツさんの目に嘘は無いと思う。

そっか。「迷い」の正体が私にも理解できた。

この人はこっちの世界に残る私の心配をしてくれたのか。

でも、大丈夫だよ。日本に居た頃と違って私は1人じゃない。

支えてくれる人たちが傍に居るから、きっと私は耐えられる。

ここは信じて任せよう。

「・・・私はそういった武器に詳しくないからお願いね。ケイナちゃんたちを守るために」

「おう。分かった」

請け負ってくれたテツさんの返事を受け取って、レイクスさんに視線を向ける。

「・・・あと、自動車と携帯電話が完成したらウォーレス領軍にも大量に売って欲しい。情報伝達と移動速度と兵站輸送で圧倒できれば戦争そのものが優位に立てるからね」

「大量に、ね・・・。詳しく―――、いや。裏側に有る理由を聞いても?」

レイクスさんにニコリと笑い返す。

裏側っていうほど裏側じゃないけど、エルフ族が置かれている政治的な状況も理解しておいて貰った方が良いね。

「・・・携帯電話の存在自体はドネルクさんが知ってしまったわけだし、自動車がはテツさんたち自身が使うでしょ?」

「そうだな」

テツさんもレイクスさんも頷く。

ここまでは良いんだよ。

問題はここからだ。

「・・・王都に出入りして活動する以上、間違いなく目立って王宮にも噂が伝わるし、王様とドネルクさんが出来るだけ王宮を抑えてくれるとは思うけど、王様は政治的な理由で強硬な手段での抑え込みはしないだろうしね。ドネルクさんは騎士団長を務めていた頃よりも、どうしても影響力が下がっちゃってるから」

「それでウォーレス家が防波堤になるんだよな?」

テツさんからの再確認に、不安の種を残さないよう明確に頷く。