軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

精霊種 ⑮

「・・・ロブウッドさん!」

「む? 儂か?」

声を掛けると名前を呼ばれたロブウッドさんが面食らっている。

だが、そんなことはどうでも良い。

「・・・金属製の縄を作れないかな」

「金属で縄だと?」

私の要求にロブウッドさんが目を丸くして、テツさんが納得顔になる。

「ああ。ワイヤーか。魚みてえに釣り上げようってんだな?」

「・・・雷蜻蛉って顎の力が強いみたいでね。具体的には人間の胴をバリッと一噛みで食い千切っちゃうぐらい」

「「「「「ええ・・・」」」」」

こう噛み千切られるんだよ、と示すために、鳩尾の高さに指先で水平に線を引く。

不幸な事故が起こらないように予備知識を与えたのにドン引きされた。

「マジかー。俺でも拙いかもな」

「・・・試さないでね? ケイナちゃんからも言ってあげて」

嫌そうでは有るけど緊張感が見えないテツさんに釘を刺し、ケイナちゃんにも協力を求める。

「ダメですよ?」

「お、おう。分かった」

何だ? コレ。

どっちが大人か分からない感じで「メッ」と釘を刺されれば、やっぱりテツさんは素直に聞き入れた。

そりゃあケイナちゃんは可愛らしいけど、どこかに理不尽な社会格差を感じるよね。

「それで金属製の縄か」

「釣り針も必要なんじゃねえのか?」

ロブウッドさんが唸り、テツさんが想定される不足を指摘してくる。

「・・・必要だね。しょせんは水棲昆虫だし、地上へ釣り上げてしまえば安全性は高くなると思うんだけど、どう思う?」

無重力環境に慣れて筋力が弱ってしまった宇宙飛行士が、地上の1G環境では立ち上がるのにも苦労するのと同じだよ。

海岸に打ち上げられたクジラが自分の体重を支えられずに圧死するのと同じとも言える。

要は筋力の問題だね。

水中では浮力が掛かって体が軽くなるから、水棲生物には発達していない筋肉が有る。

釣り上げて水から出してしまえば、地上生物よりも地上での動きは鈍いはずなんだよ。

地球の常識的科学知識を持つテツさんも私の意図に理解を示して頷いた。

「有りじゃね。釣りなら服を濡らさずに済むし、防具を外す必要もねえだろ」

「・・・魔法が使えない人でも捕まえられるんじゃないかな」

「だな。俺やこいつらみてえに魔法を使えないヤツは助かるぜ」

テツさんと2人で作戦方針の合意を形成していると、不満顔のロブウッドさんが否定を返してくる。

「何を言っとる。魔法術式を使えずに鍛冶屋が出来るか」

「ケイナさんほどではないですが、私も使えます!」

娘のリットちゃんもお父さんに続いて否定する。

「・・・おお。そうなの?」

マジかー。鍛冶仕事と魔法に関連性が有るとは考えていなかったよ。

私の勝手なイメージで先入観を持つのは良くないな。

私の理解度が決して高いものではないと見て取ったらしいロブウッドさんが、補足説明を入れてくれる。

「炉に火を入れる火術式だけじゃなく、土術式は金属や鉱石を扱うのに必須だし、水術式は刃の焼き入れに、風術式は炉の温度を維持するのに必須だからな」

「・・・言われてみれば、確かに必要そう」

納得した!

私が感心していると父娘がドヤ顔で胸を張っている。

対照的に獣人族の3人の表情は芳しくない。

「私はあんまり・・・」

「アチシもあんまりニャ」

「オレもあんまり・・・」

イカウさんとミャウラさんとクァタルさんが、肩身が狭そうに小さく手を挙げる。

だろうね。でも、大丈夫だよ。

「・・・獣人族は放出系が苦手みたいだけど、訓練すれば使えるよ?」

「訓練すれば使えるようになる・・・のですニャ?」

イカウさんは基本的に敬語だし、元騎士のクァタルさんは当然ながら敬語を使える人だけど、ミャウラさんは敬語に慣れていないみたいだね。

気の良さそうなお姉さんなんだけど、途中で敬語に切り替えたのがバレバレだったよ。

好奇心は強そうなのに、あんまり口を開かない理由はコレかな?

本人以外にも同郷の情報源が有るクァタルさんは兎も角、話す機会が少ない残りの2人の人となりが少しだけ窺い知れたことを嬉しく思いつつ、選択肢を示してあげる。

「・・・なるよ。訓練してみる?」

「「「お願いします!」」」

即答で返ってきた3人の前向きな答えに、代表者の確認を取る。

「・・・良いの?」

「俺は構わねえよ。嬢ちゃんが構わねえなら教えてやってくれ」

ヨシ。許可は取ったよ。

魔法教室の開催をいつにするか検討を始めようとしたところへ、黙って聞いていたケイナちゃんが追加注文を入れてきた。