軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

精霊種 ⑭

「地下に川か。デケえトンボが居るなら、ヤゴも居るんじゃねえかってことだよな?」

「・・・それも有るんだけど、どうやらナーガ川―――、隣国との国境になってる大河と、この採掘場の近くに流れている小川が地下で繋がっているっぽくってね。だったら、2つの川の間に有る迷宮とも繋がってるんじゃないかと推測してる」

私の考えを披瀝するとテツさんが答える前にケイナちゃんが首を傾げた。

「やご、とは何ですか?」

「・・・蜻蛉の幼虫だよ。水中に棲んでいて、他の水棲昆虫や小魚を食べて育つの」

「ははぁ。なるほど。ナーガ川ですか」

ヤゴの概略を説明すれば、ケイナちゃんの表情に理解の色が広がって納得顔で頷く。

ケイナちゃんの様子に今度はテツさんが首を傾げる。

「その川がどうかしたのか?」

「フィオレのいう“雷蜻蛉”とは、“ドラゴンフライ”のことですよね? 私たちも実物を見たことは有りませんが、かの魔獣はナーガ川が棲息地だと聞いています」

「ドラゴンフライ? そのまんま英語名だな」

ケイナちゃんの説明に、首を傾げたままのテツさんが私へ視線を向けてくる。

「・・・たぶん、そっち方面から召喚された勇者が過去にいたんじゃないかな」

私の中身の情報をぼかすために情報もほかす形になったけど、テツさんは問題なく察してくれたようでサラッと流した。

「迷宮とナーガ川が繋がっているって根拠は―――、もしかして、こっちの小川にもヤゴが居るのか?」

「・・・居るよ。こっちのは普通に小さいけど。ピリッと感電の痛みを感じたことも何度か有るし、同じ種類のヤゴなのは間違いないと思う」

ヤゴが雷撃を放ったお陰っぽい状況で川魚が捕れたことも有ったし、プチッと殺ったヤゴはカゴ罠で川魚を獲るときの寄せエサの定番だったしね。

ところが今の私の説明では、テツさんは完全には納得がいかなかったらしい。

「ダンジョンに出るヤゴはデケえんだろ? そんなに大きさが変わるもんか?」

「・・・さあ? 迷宮ではヤゴの棲息を確認しに行けなかったから。ただ、ここは“魔の森”だし、何が起こってもおかしくは無いんじゃないかな」

そこは私も疑問に感じている部分だけど、蜻蛉の寿命もヤゴのまま育っていく期間も分からないからね。

「そういうもんか」

「・・・私も“魔の森”はそういうものだと聞いているだけで、実際のところがどうなのかは知らないよ」

新たな発見でもない限り推測を含めて現状のままを受け止めるしかない。というつもりで答えれば、ケイナちゃんが手助けしてくれる。

「そういうものですよ」

「お、おう。そうなんだな」

ケイナちゃんが言えば納得するんかい。

お父様とお母様もそんな感じだし、まあ良いや。

「・・・成虫の体液から砂糖を作れることは確定したけど、ヤゴの体液からも作れるのかはまだ分からないし、そっちも確かめたいんだよね」

迷宮産のヤゴとナーガ川産のヤゴが同じかどうかも確認しておきたい。

両方の死体が手元に有れば、アスクレーくんにお願いしておけば調べてくれるだろうし。

そうすることでアスクレーくんの知見を深める手助けにもなる。

「何でまた、そんなことを調べたいんだ?」

「・・・砂糖生産をウォーレス領で産業化したいからだよ。それに、蜻蛉って最も飛ぶのが上手い昆虫って言われてるんだけど、成虫を捕まえる自信ある?」

「あ~。それもそうだな。数を捕まえるのは難しそうだ」

私の指摘に、今度はテツさんも納得顔になった。

相手は動きが早い上に馬鹿デッカいんだよ。

正直、飛ばれちゃうと私も捕まえられる自信はない。

私とテツさんは合意を得たけど、現物を見たことがなかったというケイナちゃんには伝わらない。

「どういうことですか?」

「・・・ヤゴって水中に棲んでるでしょ? 空を飛んでるのは捕まえられなくても、水中なら捕まえられると思わない?」

手が届かない高さを自由に飛ぶ成虫と、手が届く高さの水中に居る幼虫。

今度は伝わったみたいだけど、ケイナちゃんは首を傾げる。

「そうですね。でも、水中へ捕まえに入るのですか?」

「・・・ヤゴでも雷撃は放ってくるし、水に入るのは拙いかなぁ」

仰る通り。ナーガ川を渡る際に運悪く襲われると馬ごと食われる恐れが有るのが雷蜻蛉という魔獣だ。

「では、水術式でしょうか」

「・・・成虫は、かなり力が強かったよ。水魔法で捕まえられる?」

落ち着いて意識を集中すれば力負けなんてしないだろうけど、魔力の手で押さえ込むのに苦労して“獰猛くん”を召喚する羽目になったぐらいだし。

毎回、あんなのと戦わなきゃいけなくなるなら産業化なんて夢のまた夢だよ。

想像力を働かせているのか、テツさんが思案顔になる。

「ヤゴなんて普通は手掴みかタモ網で獲るもんだが、タモ網に入るサイズじゃねえよな?」

「たもあみ、とは?」

ああ。日本語での名称だしケイナちゃんは知らないか。

「・・・取っ手が付いた小さい袋状の網だよ」

「そういう道具なのですね」

あら。アッサリ。イメージ出来なくて諦めたかな?

現物を作って見せれば分かってくれるだろうから今は良いや。

「俺は平気だろうが、手掴みも拙そうだろ」

「・・・だよね。魔力の手でなら手掴み出来るけど、普通は無理かなぁ」

うーん・・・。水に入らずにヤゴを捕まえる方法?

船を出して網で獲る?

いやいや。川で使うようなボートだと船ごと殺られるらしいんだよね。

そんなことが可能なら川での漁業が発達しているはずだけど、ナーガ川の畔に有るウォーレス領でも川魚なんてなかなか手に入らなくて珍しいんだからお察しだよ。

だったら投網?

手作業でチマチマ編む漁網は値段が高くなるだろうし、投網って目の前の狭い範囲にしか届かないしなぁ・・・。

あっ・・・。閃いた!