軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

精霊種 ⑫

「・・・もしかして、魔石の魔力を使うためですか?」

「そうだよ! 体内に保有している魔素の量は、誰でも多いわけじゃないんだからね! 目の前に大量の魔素が有るなら利用できないかと考えるのが普通だよ!」

「お、おう。そうだろうな?」

エラい剣幕で食って掛かるね。

レイクスさんの勢いにテツさんも仰け反っている。

魔法道具発祥の歴史かぁ。

なぜ生み出されたか、なんて考えたことなかったよ。

体内保有魔力量が少なくて魔法を日常使いできない人たちも、魔法の恩恵を受けられるようにと作られたのが魔法道具ってことだよね。

言ってみれば、針仕事が苦手な人でもミシンの発明で裁縫が出来るようになったようなものか。

「・・・そういうものだったんですね」

「魔石の魔素を、直接、術式に使えるのなら、魔法道具は発達しなかったよ!」

んん? 頭を抱えるレイクスさんの言葉に疑問を覚える。

レイクスさんは魔法道具が生み出された本質の意味が薄れることを嘆いているんだろう。

でも、それは違う。

「・・・そうでしょうか?」

「えっ?」

私が否定を返したことでエキサイトしているレイクスさんが動きを止めた。

「・・・必要な魔法の行使を魔法道具が代わってくれるなら、使用者は別の魔法を使えるんですよ。その事実は魔石の魔力を直接使えるようになっても変わりません。より便利になるだけで、魔法道具が必要性を失うことなんて有り得ませんよね?」

「ふむ・・・。そうだね。確かにその通りだ。取り乱してしまったね」

「・・・ああ、いいえ」

私の指摘に数秒間ほど考え込む様子を見せた後、いきなり落ち着きを取り戻したレイクスさんの豹変っぷりに、ちょっと引いた。

趣味をディスられたオタクみたいな反応だったな。

これは、アレか。

レイクスさんがオタク気質を持っていそうな気配は感じ取っていたのに、私はピンポイントに地雷を踏ん付けたわけか。

魔法道具の存在意義でボルテージを上げたってことは、たぶんレイクスさんは魔法道具オタクなんだな。

「おはようございます!」

「おはよう!」

「・・・おはよう」

馬列の接近で解放された城門を潜ると、守備任務に就いている兵士さんたちに出迎えられる。

兵士さんが轡を取ってくれると私たちは鞍から降りる。

手綱を預けると、馬たちは兵士さんたちに牽かれて行って飼い葉と水槽が置かれた柵に繋がれる。

馬から降りたテツさんたちは場内を興味深そうに見回している。

「ほう。意外に広いんだな」

「・・・鉱山では有るけど、一応、ここも軍事拠点だよ? 輜重部隊や出荷作業の荷馬車もそのまま城壁内へ入るし、それなりの人数が駐屯するからね」

「本当に鉱山であり砦なんだねぇ」

テツさんの感想に説明を加えれば、レイクスさんも感嘆の声を上げる。

驚いてくれたことが嬉しかったのか、気を良くしたらしいルナリアが案内を買って出る。

「さあ、バイコーンを見に行くわよ!」

「良いね! 行こう行こう!」

おおっと。

上機嫌でズンズンと先導するルナリアにレイクスさんと護衛の2人が付いて行くものだから、慌ててピーシーズに声を掛ける。

「・・・ネイアさん! オーリアちゃん! 護衛お願い!」

「「はっ!」」

キャットウォークの階段へ向かうルナリアの姿を指し示せば、部下を引き連れたネイアさんたちが追い掛けて行った。

ふぅ・・・。

採掘場はルナリアにとっても庭みたいなものだけど、ちょっと気を抜きすぎかな。

お母様とお婆様たちは鉱山技師らしき男性に捕まって岩塩鉱脈の方へ向かっている。

別に緊迫感は無さそうだけど、採掘の件で何か報告が有るんだろう。

進捗を訊こうかと猟師さんたちの姿を探せば、いつも通り来ているはずなんだけど誰も見当たらないな。

私もたまたま馬を牽いてきた兵士さんを捕まえる。

「・・・猟師さんたちは?」

「崖上の回収へ向かいました」

ふーん。かなり時間が早いように思うけど、もう崖上へ?

エクラーダ系の子供たちも来ているはずだけど、どうなってるんだろう。

「・・・出荷作業は?」

「上で子供たちがやってますよ」

兵士さんが指し示したのは崖上ではなくキャットウォークの上だね。

指した指先に釣られて見上げれば、子供たちの手でロープで吊られたシカが下ろされてくるところだった。

シカの真下へと視線を下ろせば、アレか。

荷馬車の荷台にも数人の子供たちが乗っていて、下りてくるシカを待ち構えている。

ふむ? 兵士さんへと目を戻す。

「・・・子供たちだけで作業を?」

「もう手慣れたもんですよ」

兵士さんも目を細めてキャットウォークを見上げている。

出荷作業を見慣れている兵士さんが言うなら、危なげなく見えているんだろう。

子供は慣れるのも早いし物覚えが早いからね。

私の目にも、滞る様子もなく子供たちが円滑に作業を進めているように見えている。

ヨシヨシ。あの子たちも頑張ったんだね。