軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

精霊種 ⑪

日本が守る? ハハッ。冗談でしょ。

日本人だって奇異の目でケイナちゃんを見るだろうし、異世界の存在を信じて興味を持てば、きっと日本そのものがケイナちゃんとテツさんたちの平穏を脅かす敵になる。

日本という国がどうのこうのって話じゃなく、異世界という地球の柵に縛られないブルーオーシャンを前にして、国家も学者も企業も個人もそこに夢を見ないわけがないもの。

異世界へ渡る手掛かりがテツさんとケイナちゃんしかいないなら、そっとしておいてくれることはない。

必ず色んな形で多くの人たちに追い回されることになる。

それは神教会に狙われている現状と何も変わらない。

かなりの高確率でヒナちゃんも巻き込まれるだろう。

だから、私はケイナちゃんを行かせるわけにはいかない。

こっちの世界に残るケイナちゃんの心が耐えられるように、ケイナちゃんの手を握ってレイクスさんたちの下に繋ぎ止めなきゃいけない。

そもそも、2つの世界が交わってること自体が異常事態なんだよ。

死んだはずの私なんて、下手すりゃフレーリアの体に憑依している幽霊だからね。

これを異常事態といわずして何というの。

私というイレギュラーの塊みたいな存在の是非は兎も角、ケイナちゃんまでイレギュラーにしちゃいけない。

テツさんだってイレギュラーである現状をよしとせず、元の世界に帰ろうと頑張ってるんだし。

テツさんが娘のヒナちゃんの下へ帰れるようにと全力で助ければ助けるほど、ケイナちゃんに残された時間は短くなるだろう。

それが分かっていてもケイナちゃんはテツさんを助けようとしている。

余計なお世話かも知れないけど、美しい失恋話で終われるように私たちがケイナちゃんを支えてあげないと。

なんて、私が新たなミッションの発生に決意を固めていると、自分の興味しか頭に無い感じでレイクスさんが目をキラキラと輝かせていた。

「魔石の使い方? それってどんなの?」

仕方ないな。ちょっとだけムッとしたけど、自分の妹のこともちゃんと見てあげてよと、ここで私が怒るのも理不尽だろう。

どのみち教えるつもりでは居たからね。

「・・・魔石の魔力をそのまま術式の発動に使うんですよ」

「ええっ!?」

思ってたのと違う! って感じなのか、レイクスさんはずいぶんと大袈裟に驚くんだね。

「・・・昨日も森で、ずっと使ってましたけど、気付いてませんでした?」

そりゃあ最初は魔石を見せないように気を付けていたけど、テツさんがドネルクさんから聞いていた“テツさん”だと気付いた時点から、結構、意識せずに使っていたと思うよ?

こっちも目を丸くしているケイナちゃんが、なぜかレイクスさんに顔を振り向ける。

「そんなことが出来るのですか?」

「え~っと。う~ん?」

妹から直球で質問をぶつけられたレイクスさんが困惑顔で首を傾げている。

唸っているだけで返事に困っている様子だから、レイクスさんに代わって私が答えよう。

「・・・出来るよ? 体内保有魔力の残量を気にせず強力な魔法を使い続けられるから、ケイナちゃんたちも覚えておいた方が良いよ」

「まさか・・・。いや、でも、そんなことが? 信じ難い話だけど、本当に可能なら僕も教えて欲しい」

動揺を抑えようとしているみたいだけど、ぜんぜん抑えられていないレイクスさんは、半信半疑でも教えてくれと頭を下げてくれた。

よかろう! 教えるともさ!

「・・・本当ですよ。ちょっとコツは必要ですけど、ウォーレス領ではすでに20人以上が使えるようになっています」

「ええ・・・?」

信じられない、といった感じにレイクスさんが目を剥く。

誰彼構わず教えるわけには行かないから必要な人たちに限って教えているけど、それでもこの人数だよ。

治癒魔法と違って、今のところ教えると決めた人は100%習得に成功している。

頑固者のアリアナさんでも習得させられたのだから、教え込む自信は有るよ。

黙って聞いていたテツさんが首を傾げる。

「使えちゃ、おかしいのか?」

「おかしいんだよ!」

「・・・ええ・・・?」

レイクスさんが食い気味に、テツさんに主張する。

おかしいも何も実現しちゃってるんだから認めようよ。

実際に見せて体験させれば納得してくれるんじゃないかなー、なんて考えていたら、レイクスさんが看過できないことを口にする。

「よく考えてみてよ! 何のために魔法道具が存在すると思ってるのさ!」

「何のため」かぁ・・・。

魔法道具というものは、刻印術式によって指定された魔法の効果を、魔石の魔力を燃料に発揮するものだよね?

話に聞く限り、魔法道具が発動する魔法の効果はそんなに複雑なものじゃなく、限定された機能しか持たない印象だった。

私が触れさせて貰った魔法道具は、王都の襲撃事件で犯人が使った“使用者の姿を隠す効果”を持ったもので、その機能は極めてシンプルなものだった。

それほど限定された機能しかないなら、ぶっちゃけ自力で魔法を使った方が早いんじゃないかと思ってしまいそうな程度のものだ。

だったら、なぜわざわざそんなものを作るのか?

そりゃあ、もちろん、魔法道具が魔法の行使を代わってくれるなら、その分、使用者のリソースが空くことになる。

手が空けば別の魔法を使えるのだし、十分、有用では有る。

私は魔法道具に求められた本質とは違うところに焦点を当てて見てしまっている?

じゃあ、事の本質―――、魔法道具が必要とされた理由は、何?

もう1度、魔法道具とはどんなものかに思考を戻してみる。

魔石の魔力を燃料に・・・。

魔石? あっ。コレ?