軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

再会 ⑰

怪我かぁ・・・。

家族と離れ離れだったのは療養中だったとか、そんなのかな?

怪我で動けないときに命を賭けて守った祖国が亜人種族排斥に傾いて、故郷を棄てて脱出しなきゃならなくなったなんて、辛かっただろうね。

グルハーさんだっけ?

私は初めて聞いた名前だったけど、お爺様たちは知っている人だったみたいだね。

記憶を探るように顎先を撫でたマルキオお爺様が答えを見付ける。

「グルハー殿か。すると、歩兵部隊だな?」

「はっ」

共通の知人を知る人の出現にクァタルさんがシャキッとする。

盾を使う歩兵部隊っていうと、ローマ帝国のファランクスみたいなのを連想しちゃうな。

密集陣形も負傷率は高かったみたいだし。

「・・・怪我してるの? 治そうか?」

「いいえ。フィオレ様のお手を煩わせるわけには参りません。それに、テツさんに魔獣の血を飲まされている間に痛みがなくなりまして」

お? ヨシヨシ。北門の外で会ったときには私のことを「フレーリア」と呼んでいたけど、今はちゃんと「フィオレ」と呼んでいる。

エバンさんはしっかりとミッションをコンプリートしてくれたみたいだね。

娘のエイラさんは王都へ行っちゃってるし、お詫びとご褒美で差し入れするならお酒かな?

ワインかシードルを兵舎に届けて貰えるように、ミセラさんにお願いしておこう。

マルキオお爺様が目を丸くする。

「ふむ? 血で治ったのか」

「やはり効果が有るのねぇ」

納得したようなセリーナお婆様の隣でハインズお爺様も目を丸くしている。

血の力で怪我が治る?

うーむ。イマイチ納得が行かないな。

血を飲むだけで怪我が治るなら苦労はしないだろう。

これは、どういう?

血を飲むことで体内保有魔力量が増えることと体が強くなることは、体感として判明している。

セリーナお婆様も腰痛が治ったと言って―――、あれ?

腰痛が治る? 腰痛って、どうやって起こるんだっけ?

腹筋や背筋なんかの筋肉の衰えとかそんなのが原因じゃなかったっけ。

ふむ・・・。

筋肉の衰えで腰が痛む症状が起こるのだとすれば、逆に筋肉が強くなれば痛みの症状がなくなるとも考えられない?

つまり、根本原因は治っていないけど筋肉が強くなったことで症状が治まっているだけ、とも考えられるのか。

魔獣を狩る冒険者は命懸けの仕事だもの。

ちゃんと治しておかないと、タイミングの悪いときに症状がぶり返すようなことが有れば命に関わる。

うん。やっぱり治しておこう。

「・・・まあ、念のため、後で治癒魔法を掛けてあげるよ」

「フィオレ様は治癒術式をお使いになれるのですか?」

私の申し出にクァタルさんが目を丸くする。

神教会関係者しか使えないのが治癒魔法というのが通説だからね。

驚くのも仕方ない。そう。今はね。

「・・・頑張って覚えたんだよ。完治させてあげられるかは、やってみないと分からないけどね」

「そうですか・・・。では、お言葉に甘えさせていただきます」

私の返事を噛みしめるように目を瞑ったクァタルさんは、深く頭を下げた。

オルレーシア様やフレーリアの手前、あんまり言いたくはないけど、旧エクラーダ王国は神教会の圧力に屈して自国民を神教会に売り渡した国だ。

クァタルさんが負傷した後も、まともな治療を受けられたか怪しいよね。

神教会が治癒魔法をどう利用しているかなんて簡単に想像が付く。

法外な治療費を要求するだけでなく、神教会に帰依して要求に従わないと治してやらないとか、勢力拡大や政治的な圧力にも利用しているんだろう。

そうでもなければ、狂っているとしか思えない教義が広く浸透するとは考えにくい。

一部の極端な人間は支持したとしても、多くの労働力を失う大量殺戮に複数の国家が加担するだろうか?

人間がそこまで愚かな生き物だと私は思わない。

破壊と殺戮の歴史を積み重ねて文明を発達させた地球人類でさえ、非戦闘員や負傷者に対する非人道的行為を人類の総意として禁止しているぐらいだよ?

いやまあ。大陸中から集めている亜人種族を、神教会が虐殺していると確定したわけじゃないけどね。

何十万、何百万もの亜人種族が神教会へ送られて1人も帰って来ないというのだから、限りなく“黒”に近いだろう。

ほぼ断定して良いぐらいだと思う。

人の命を救い、苦しみを取り除くための医療技術を、布教や政治に利用するなんて人として間違ってる。

今すぐには蛮行を止められはしないけど、打てる手は有る。そのための治癒魔法術師爆増計画だもの。

もっと気軽に治療を受けられるように、こんな現状は絶対に変えてあげるからね。

私が治療の約束を取り付けたところへ、マルキオお爺様がクァタルさんに目を向け直す。

「エクラーダは残念なことだったな」

「力及ばず」

悔しそうにクァタルさんが言葉を絞り出す。

厳しい表情で深い溜息を吐いたハインズお爺様がレイクスさんに目を向けた。

「この領主館の隣に土地を空けさせる。―――ハロルド、出来るな?」

「問題ない。そこを使われるが良い」

話を振られたお父様は当然のように頷き返してレイクスさんに目を向けた。

地上げかな?

ハインズお爺様とお父様の決断にお母様も頷く。

「守りのためだけでなく、近い方が何かと便利が良かろう」

「そこまでして貰って良いのか?」

微妙な表情を浮かべたテツさんが首を傾げる。

あー・・・。「土地を空けさせる」と聞いてテツさんも地上げを連想したのかも。