軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

再会 ⑤

「おお~。良いねえ」

「あんまり乗り出すと落っこちるぞ」

街道へ出て南へ進路を変えると、街道脇の左手に“獰猛くん1号”が見える。

荷馬車の荷台から身を乗り出して上空を見上げているレイクスさんの側から見ると右手だね。

レイクスさんが落っこちないように上着の裾を“1号”をテツさんが掴んでいるけど、当のレイクスさんは子供みたいに目をキラキラさせていて頓着する様子がない。

シャッターを切ることに夢中になって周りが見えなくなっている“撮り鉄”―――、カメラを持たせた鉄道オタクと同じだなぁ。

私が日本で住んでいた地方都市でも、珍しくなった古い車両が走るときには、どうやって運行ダイヤを調べているのか、脚立と三脚とゴツい写真機を持った“撮り鉄”が、他の鉄道利用客や駅員さんに迷惑な顔をされても全く気にすることもなく駅のホームで人垣を作っていた。

「ねえねえ。アレ、どうやって作ったの?」

「・・・“獰猛”―――、ゴーレムですか?」

後方へ過ぎ去りつつ有る“1号”から私にレイクスさんの視線がシフトして来る。

走らせた伝令が戻って来ていなくて、お仲間のドワーフ族たちが捕まったかの情報がまだだったことを私は思いだしていたんだけど、お仲間の情報よりもレイクスさんはゴーレムが気になるらしい。

作り方ねぇ。

作るよりも制御する方が難しいと思うんだけど。

ゴーレムと言われてモニョるというか、私がピンと来ないのには理由が有るんだよね。

地球でもギリシャ神話やユダヤ教の魔術だったか何かの伝承にも“ゴーレム”という存在は登場する。

またギリシャ神話かぁ、と太陽の神へーリオスや昼の女神へーメレーを奉じているらしい神教会との関連を連想して嫌な気分になることも有るんだけど、そもそも、青銅や泥から作られたとされる“ゴーレム”というものは、総じて自律行動するものだと描かれているんだよ。

要はAI搭載自律ドローンや自動お手伝いロボットみたいなものだね。

翻って私の“獰猛くん”はどうか? 魔力の手を通してはいるけど、文字通り “手”動操縦(マニュアル) じゃん。

ドローンやロボットも命令を与えたり制御プログラムを書いたりしなきゃいけないんだけど、操縦が必要な“獰猛くん”とは本質的に違う。

これは、私が“搭乗型の巨大ロボット”をイメージしたせいだよね。

自分の目が届かない場所で働かせたり、自分の“手”が足りていないときに補助させたりするのがゴーレムというもので、搭乗しようがマニュアル操作しようが、自律稼働するかどうかの重要な1点において決定的に違う。

でもまあ、精霊魔法とのバーターで教えると言っちゃったしなぁ。

下手に言い訳をするよりも現物を見せて、レイクスさんに自分で判断して貰った方が良いかな?

「・・・ご自分の“目”で見て貰った方が早いですよね」

「んん? “目”?」

首を傾げるレイクスさんに構わず、魔力の手を追加で4本伸ばして地面に差し込む。

街道に穴ぼこを空けるわけにも行かないし、土を生み出したりと魔力の消費は多いけど、小さなサイズなら魔石を通す必要はないだろう。

地面を掌握すると同時に人型のイメージを固めて新たな土を生み出す。

生み出した土をギュッと固めつつ持ち上げていけば、私の馬と平行した路面からズズズと人型が迫り上がってくる。

頭から肩、両腕と胴と地面から生えてきて、忙しなく動く両足が路面を踏む。

目を真ん丸にして身を乗り出しているレイクスさんの前に現れたのは、馬の背丈と身長が変わらないサイズの土人形だ。

私も慣れたもんだよ。

何度も“獰猛くん”の操縦をしたことで、ほんの2メートルほど離れた程度の距離でなら、馬と並んで歩かせるぐらいは問題なく出来る。

目を皿のようにして凝視しているレイクスさんの前で、土人形がドスドスと重たい足音をさせて歩いている。

人型だけど歩き方に違和感が有るのは、魔力の手を通した手足を外側から無理やり動かしているだけで、胴が不自然に真っ直ぐ前を向いたままだからだろうね。

ジーッと“等身大土人形”を見つめているレイクスさんの頭が徐々に傾いでいく。

「ゴーレム・・・なのかな?」

「・・・ゴーレムですよ? たぶん」

正直、私も「ゴーレム?」とは思ってるけど、「こんなのゴーレムじゃない!」とかゴネられても面倒くさいから、レイクスさんの説得を試みる。

「・・・だって、ゴーレムって人間の代わりに働かせるものでしょ?」

「それは・・・、そうかな」

当然のような顔をして同調圧力を掛ければ、頭の上にクエスチョンマークを浮かべているレイクスさんが自信無さそうに揺らぐ。

「・・・働かせるのがゴーレムじゃないと困る場面って、魔獣の討伐だとか、戦場だとか、人間を働かせるには危険な場合じゃないですか」

「そう・・・、なのかな? んん? そうかも」

私が口にしているのは現代地球のドローン兵器の概念だ。

ドローン兵器だって自律機能を搭載しているものばかりじゃないんだけどね。

私の“獰猛くん”のように、遠隔操作で操縦するタイプのドローン兵器の方が多いんじゃないかな。

大量破壊兵器による相互確証破壊の概念すら凌駕しかねない勢いで現代地球の戦場を席巻している最新トレンドなんだし、人道的観点からも費用対効果の観点からも思想は間違ってはいないはず。

同調圧力だけでは説得できていないレイクスさんの疑念を晴らすために、一瞬、土人形の制御を手放せば、土人形が蹴っ躓いて、ドガァッ! と素っ転ぶ。

すぐに制御を握り直したもののバラバラに壊れた土人形は、一旦、沈み込んだ路面の下から迫り上がり、何事も無かったように再び馬の隣をドスドスと併走し始めた。

私の頭の中では軽快な”カチューシャ”のメロディーが流れていて、頭の中のリズムに歩調を合わせて土人形が大股に歩く。

だって、しょうがないじゃん。

ドローン兵器がバンバン使われて戦争の戦略思想すら塗り替えたとされる戦場の地域イメージが強いんだよ。

畑で兵士が取れるといわれているほど人命を何とも思っていない鬼畜な国だけど、そんな国でもドローン兵器に軸足が移りつつ有るんだよ?

立派な口ヒゲを生やしたオジサンたちがリズムに合わせてコサックダンスを踊り始めた辺りで、中毒性が有るリズムを頭の中から追い出した。

「・・・魔法で攻撃されても武器で攻撃されても、ほら。どれだけゴーレムが損傷したって人間は誰も傷付きません」

「そうだね。確かにその通りだ」

感心した表情でレイクスさんが頷く。

ヨシ。地球人類の最新トレンドは異世界の伝承を乗り越えたよ。