軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

再会 ④

「その耳の白い斑点。本当に豹人族だね。これは珍しい」

「・・・珍しいんですか?」

それは新情報だな。

豹人族に関する情報は少ないから、1つでも多く得られるだけで嬉しい。

「豹人族は他種族との交流が少ない少数種族だったらしいからね。居住地域は近いのに、エルフ族とも交流は少なかったんだよ」

「・・・へぇー」

小さな妹を持つお兄ちゃんらしく、害のない笑みを浮かべたレイクスさんがノーアの頭へ手を伸ばしてきて優しく撫で、ノーアも人見知りを発動せず大人しく撫でられている。

「・・・あ。そうだ。―――、ノーア。こっちはレイクスさんだよ。ご挨拶して?」

「にゃっ」

「うん。よろしくね~」

クール系のジアンさんと違ってユルいけど、レイクスさんもイケメンだからね。

ノーアがまだ幼くて良かった。

これが思春期の女の子だったら、イケメンスマイル1つでコロッと逝かされていた可能性が有ったよね。

ピーシーズやピーシスガードの子たちが 逆上(のぼ) せ上がらないように監視しておかなきゃ。

「・・・ノーア。こっちはテツさんだよ」

「にゃっ」

「よろしくな」

ノーアがシュッと片手を挙げれば、テツさんもニッと笑い返す。

レイクスさんの後ろに控えているターバンの人たちも微笑ましそうに目を細めている。

「この幼さで先ほどの隠形とは、将来が楽しみですね」

「ああ。周囲の気配が多い状況とはいえ、なかなかのものだ」

「・・・おお。そうなんですね」

この人たちは本業なんだよね?

可愛い妹を褒めて貰って私も嬉しくなる。

ノーアに隠形術を教えてくれるって言ってたしね。

テツさんに続いて他のエルフ族のお兄さんたちとも挨拶を交わそうとしたら、私が行動を起こす前に耳元でミセラさんが囁いてきた。

「フィオレ様。そろそろ」

「・・・ああ、うん。分かった」

くっ。時間切れか。

タイミングよく出鼻を挫かれて挨拶はお預けにされた。

まあ良いや。これから交流が始まるんだし、レイクスさんが採掘場へ行く気マンマンなんだから、この人たちとも交流する機会はいくらでも有るだろう。

「・・・じゃあ、行くよ。馬車へ乗って貰えるかな」

「おう。了解」

テツさんたちが荷馬車へ向かって、私たちもノーアの手を引いて自分の馬へと急ぐ。

朝は“獰猛くん1号”の頭に乗って来たけど、私たちの馬はちゃんとピーシーズが牽いてきてくれていた。

兵士さんの手から手綱を受け取って鞍へよじ登る。

「・・・ノーア。おいで」

「にゃっ」

ピョンと跳び上がったノーアは空中で体を捻ってポスッと私の前へ収まった。

この身の軽さよ。

私には絶対に真似できないな。

隣を見ればルナリアも縄梯子型の鐙を伝って鞍へよじ登っている。

うんうん。ルナリアも無理そうで良かった。

馬列の並び順を見れば、お母様とエゼリアさんたちが先頭で、ジアンさんが率いるアスクレーくん部隊が続いて、その後に獲物を積んだ荷馬車とテツさんたちの荷馬車が続く。

ミセラさんたちを引き連れたルナリアと私はテツさんたちの荷馬車に続く形で、荷馬車の荷台に乗っているテツさんたちと話せるぐらいの距離しか空いていない。

そして、ネイアさんとオーリアちゃんの2人が率いるピーシスガードが 殿(しんがり) を務める。

この配置は、エルフ族のみんなに不安を与えないために、私たちを近くに置いたんじゃないかな。

何気に私は殿というものが初めてだと思うんだけど、一応、知識としては殿の役割を知っている。

襲撃や追撃を受けた際に敵を押し留めて本隊を逃がすのが殿の役目だよ。

兵法では” 後備(あとぞな) え”とも呼ぶんだっけ。

古来、戦闘力が有って引き際を知っている武将じゃないと殿は任されない。

私にはアクティブソナーが有るし、魔力の手による防御術式も有るしね。

この場において私に求められている仕事は、索敵と防御、テツさんたちの話し相手の3点だろう。

ピーシス領からウォーレス領の間で敵の襲撃を受けるとは考えにくいけれど、手は抜かないよ。

魔力の手を地面に差し込んでアクティブソナーを発動する。

“危険なモノ”を察知するというテツさんの“危険物センサー”と2段構えなら鉄壁だろう。

「出発!」

前方からお母様の通る声が聞こえて先頭から順に馬列が動き始める。

6の鐘もまだ鳴っていない時間だし、日が暮れる前にはレティアの町へ帰り着けるはずだ。

マリッドさんと領軍のみんなの見送りを受けて領主館を後にする。

最初の大きな角を曲がって見抜き通りに入ると、また路肩に人垣が出来ていた。

何かもう、アイドルというよりも隠れキャラというか、珍獣扱いな気がしてきたね。

ちょくちょく沿道から声が掛かるから、営業用スマイルを顔に貼り付けて手を振り返しておく。

荷馬車の荷台から顔を覗かせているテツさんたちの視線が生暖かい気もする。

恥ずかしいと言えば恥ずかしいんだけど、もう今さらだよ。

テレサというお手本を見ていなかったら、私には領民サービスなんて思い付かなかっただろうね。

こうやって愛想を振りまいておくだけで親近感を持って貰えて統治が楽に行えるなら安いもんだよ。

今はまだ新しい領主への期待感で好意的なのだと考えることも出来るから、領民たちの期待が失望に変わる前に新しい産業を新領地にももたらしたい。

そんなことを考えながら手を振っている内に、壊れたままの城門跡が見えてきた。

城門を出た街道の反対側に正座しているのは、勇ましく両腕を振り上げた”獰猛くん1号”だよ。

改めて遠景で見てみると、西方の聖地に向かって礼拝している何たら教徒みたいだよね。

一応、アレ、”西方の敵を威嚇している”と情報を広めてくれているそうなんだけど。